Steam戦車アクション×RTS『Sherman Commander』は、恐怖すら抱くほど緊張感のある本格戦術シミュレーターだった。 “敵が見えない”リアルな戦場体験
第二次世界大戦といった戦場を舞台とするゲームが数多く存在する中で、本作はプレイヤーが操作できるのは戦車のみ。そこに味方部隊に指示を出すというRTS要素が加わるとどうなるのか。そうして生まれたのは、かつてないほどリアルな戦場体験であった。

パブリッシャーのDaedalic Entertainmentは、Iron Wolf Studio S.A.が手がける『Sherman Commander』を3月15日より発売中だ。対応プラットフォームはPC(Steam)。ゲーム内は日本語表示に対応している。
『Sherman Commander』は、リアルタイムストラテジー(RTS)要素が融合した戦術戦車シミュレーションゲームだ。舞台となるのは、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線。プレイヤーは、アメリカ軍戦車「M4シャーマン」に指揮官として乗り込み戦場へと降り立つ。本作は戦車を操作して攻撃できるほか、すべての味方部隊に対してリアルタイムに指示できることが特徴。歩兵と連携しながら、熾烈な戦場を掌握していくのだ。
第二次世界大戦といった戦場を舞台とするゲームが数多く存在する中で、本作はプレイヤーが操作できるのは戦車のみ。そこに味方部隊に指示を出すというRTS要素が加わるとどうなるのか。そうして生まれたのは、かつてないほどリアルな戦場体験であった。本稿では恐怖を感じるほどの本作の魅力をお伝えしていく。
※本稿はSteam版レビューブランチのプレイにもとづき執筆。
本格的なRTS操作とリアルすぎる戦車操作
まず特筆したいのは、やはり戦車操作とRTS操作の融合だ。しかも単なる要素の組み合わせではなく、それぞれが本格的な作り込みとなっている。また、戦車の操作には、チュートリアルですら別のゲームに感じられるほど異なる2つの操作体系が用意されている。
戦車の操作とRTSの操作をおこなうため、本作の操作は比較的複雑。RTS操作については、Shiftキーを押すとフィールド上の味方ユニットにアイコンが表示され、それぞれに対して移動や攻撃といった指示していく。さらに、右上のミニマップやマップ画面でも同様の指示を出せるほか、マウスドラッグにより複数選択してまとめて指示することも可能だ。各ユニットは5人前後の兵士で構成されており、5ユニットで1小隊。おおまかな移動指示だけで、兵士たちは動的AIによって近くの遮蔽物に身を隠し、敵を見つければ自動的に攻撃してくれる。忙しさはありつつも、慣れれば直感的に100人近い部隊をコントロールできるようになり、本格的な戦場の指揮官になりきって楽しめる。


一方で、プレイヤーが搭乗する戦車の操作は重厚。初心者やカジュアルプレイヤーにおすすめとされる「アクションモード」では、拡縮可能な三人称視点となり、マウスで砲塔を操作しつつ、WASDキーで車体を動かす。操作だけならシンプルだが、マウスの動きに対して砲塔はゆっくりと追従したり、砲弾の切替にも多少時間がかかるなど、戦車ならではの遅れが再現されている。
さらに本格的なのがミリタリーファンにおすすめとされる「シミュレーションモード」だ。アクションモードでは「戦車」そのものを操作するのに対して、シミュレーションモードでは戦車に乗り込む指揮官としての「人間」を操作する。このモードでは戦車長の一人称視点となり、戦車内ののぞき窓からフィールドを確認するため、視界が非常に狭く状況把握だけでも一苦労。ハッチから外に頭を出せば周囲を見渡せるが、そのまま敵に撃たれればゲームオーバーだ。移動についてもWASDではなく、前進後退や旋回などを操縦手に指示を出して動かしてもらう。同様に砲撃は砲撃手に、砲弾の切替は装填手に指示を出す必要がある。操作難度はかなり高いが、リアルな戦車の操作を体験できるだろう。


本作はミッション開始時に2つの操作モードを選択でき、シチュエーションは同じでも操作の違いによって、まったく異なるゲーム体験となっている。プレイする際には両方の操作モードでチュートリアルを試してほしい。なお筆者はシミュレーションモードでは移動や攻撃すらままならず、慣れないRTS操作も必要であったため、以降はアクションモードでのプレイ体験となる。
敵が“見えない”リアルな戦場
操作を学んだところでさっそくミッションに挑んでいく。ミッション開始時には3段階の難易度選択が可能。そこで筆者は考えた。「最低難易度のアクションモードなら自戦車だけでも勝てるのでは」と。最初のミッションは単騎突撃することを決意。本作の戦車は歩兵に対してはほぼ無敵で、攻撃されたときにShiftキーを押せば、味方アイコンとともに敵アイコンも表示されて位置が分かる。遠くの歩兵に反撃して排除するのは難しくなく、このまま行けると思っていたところ、どこからか対戦車砲が飛んできてあえなく撃破されてしまった。やはり単騎でクリアするのは無理そうだ。
次はしっかりと味方に指示しながら進軍することに。味方全軍を広く展開して前線を上げていく。味方が攻撃を受けた場合も敵の位置は表示されるため、そこに複数部隊を送り込み筆者は後方から少しずつ進む。しばらくするとなんと部隊はほぼ壊滅。本作のフィールドには敵拠点が複数あり、主要拠点を制圧すればクリアなのだが、目標拠点に向かうころには筆者と歩兵1ユニットのみとなっていた。最終的に筆者の戦車1台のみとなって辛うじてクリアできたものの、これは最低難易度の最初のステージの話。ここまでプレイしてようやく、本作は遮蔽物を使いながら歩兵で索敵し、少しずつ前進していくことが重要なゲームだと学ぶこととなった。

本作では、戦車は対戦車兵に弱い、対戦車兵は歩兵に弱い、歩兵は固定機関銃に弱い、機関銃は戦車に弱いといったユニットの相性がある。特に射線が通る場所では、相性の差が顕著に表れる。対戦車兵がいたからと安易に歩兵を送ると、さらに見えない位置にいる機関銃にやられたりするわけだ。逆に歩兵で少しずつ索敵し、対戦車兵さえいないことを確認できれば、それ以外の敵に対しては自身の戦車で攻撃するという選択もとれる。実際、索敵を学んだあとの筆者は状況を見ながら前線で戦うことが多かった。
それでも戦場の緊張感は常に付きまとう。そもそも本作は視界が開けた草原であっても、敵がどこに潜んでいるのか簡単には分からない。索敵や攻撃によって敵アイコンが表示されても、敵の姿が文字通り“見えない”のだ。カメラを最大まで拡大して敵が見えれば幸運な方で、基本的には敵も遮蔽物に隠れている。まして市街地となればなおさらだ。アパートが立ち並ぶ市街地エリアでは、建物の4階に潜む敵から攻撃されることもある。敵の姿が見えないまま砲撃が飛んでくるという、リアルな戦場の恐怖を感じながら進まなくてはいけない。


また市街地エリアには、歩兵や対戦車兵、機関銃や戦車などの兵が混在して配置されていることが多い。見えている範囲の敵を殲滅しても、家の角から出て射線が通った瞬間に撃たれることもあった。索敵したうえで、どこから攻め、どのユニットを動かすのか、自身が動くのかなどを、恐怖を感じつつ悩まなければならない。しかし、その試行錯誤が本作ならではの戦術ゲームとしての面白さを生み出している。

そうして「索敵」と「射線」の重要性を学んだ筆者は難易度を上げつつ、各ミッションで一度はゲームオーバーになりながら2つのキャンペーン計6ミッションをクリアした。最初は自身の戦車しか生き残れなかったのに対し、各ミッションでは部隊の半分ほどが生き残れるようになっていた。ミッション中は手動セーブできるほか、拠点を奪ったタイミングでオートセーブされるため、ゲームオーバーになってもすぐにやり直せる。フィールドは広めに作られているので、失敗を糧に異なる攻め方で目標拠点を制圧したのだ。また、筆者は全部隊が固まって動くことが多かったが、部隊を分散させる戦い方も可能。毎回異なる戦い方を試せる自由度の高さも本作の魅力となっている。
大群に攻められる恐怖
ここまでプレイしている途中で筆者はとあることに気づく。歩兵ユニットに対して建物への移動指示を出すと、動的AIによって建物の最上階まで上がって窓から攻撃してくれるのだ。市街地で待ち伏せされる恐怖を味わっていた筆者としては、逆にこちらが市街地に展開する防衛ミッションがあれば面白いのではと、敵拠点を攻めながら考えていた。するとなんと最後のキャンペーンとなる7ミッション目からは防衛ミッションが用意されていたのだ。プレイヤーの上達に合わせた動線と思われるが、発想を読まれている感覚だった。
防衛ミッションでは、自軍拠点を一定時間守り抜き、その後は拠点を放棄して次の拠点を守るという流れとなる。これまでのミッションは攻める立場で、敵拠点を制圧しながら進行する際には、味方部隊に指示を出しやすいようある程度固まって一方向から進軍することが多かった。しかし、防衛ミッションの敵軍は四方から押し寄せてくるため、それを見越して部隊を配置しなければならない。索敵は不要となるが、戦車や対戦車兵もやってくるため、指揮官である筆者が前線に出ているとすぐにゲームオーバーになってしまった。四方から攻められる恐怖を感じるとともに、分散して同時に攻めるという指揮官の差を見せつけられ、悔しさも覚えてしまう。


防衛ミッションの難易度は高めとなっており、本稿執筆時点で残念ながら筆者はこのミッションをクリアできていない。とはいえ、それまでの進軍ミッションとは異なる戦場体験となっているため、すぐに再チャレンジするつもりだ。歯応えのあるRTSを味わいたい場合におすすめのミッションと言えるだろう。
なお、本作ではミッションごとに3段階の難易度が選べるほか、ミッション中にはクリアに必須ではない拠点もあり、そこを制圧できればクリア後の評価が上がる。もちろん制圧拠点が多くなれば部隊も消耗するため、全拠点の制圧を目指せば難しくなる。さらに先述した通り、2つの操作モードを変えるだけでもゲーム体験は大きく変化する。攻め方も守り方もプレイヤー次第、同じミッションでも繰り返し異なる展開が味わえるやり込みがいのある戦術ゲームとなっている。
本作は、かつてないほど“リアルな戦場”を体験できるゲームである。重厚感のある戦車の操作 、索敵しながら少しずつ進軍する緊張感 、敵が見えない恐怖、攻められる恐怖。もちろん我々は現実の戦争を経験していない。昨今の世界情勢を鑑みると、軽々しく口にすべきではないのかもしれない。それでも本作は戦車操作とRTS要素の融合により、画面越しに戦場の恐怖を感じるほどのリアリティが生まれているのだ。この新たな戦場シミュレーターをぜひ一度体験してほしい。
『Sherman Commander』は、PC(Steam)向けに3月15日より配信中だ。
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