「ゲームのレビュー点数を理不尽に厳しくするゲーマー心理」を巡って議論白熱。“目が肥えた”結果なのか、好みの問題か

ゲーマーコミュニティにて、ゲームのレビューで点数を付ける際の基準を巡る議論が白熱している。

海外の一部ゲーマーコミュニティにて、ゲームのレビューで点数を付ける際の基準を巡る議論が白熱している。特に「“本当にひどいゲーム”を遊んだことがないゲーマーは、レビューに極端に低い点数付けをしやすいのではないか」といった意見も投じられ、波紋を広げているようだ。

今回の議論の発端とみられるのは、あるXユーザーが投じた「ひどいゲームを遊んだことがない人って見分けがつくよね(you can tell when someone never actually played a bad game before)」という意見だ。この意見には多くの賛同が寄せられており、中でもXユーザーInkfy氏は具体的にレビューの点数付けを例示。「10点満点中6~7点程度のゲームを2~3点扱いする人もいるのは、本当にひどいゲーム遊んだことがないからだ」との持論を述べている。つまり“もっと出来の悪いゲームがある”ことを知らないと、作品に大きな問題がなくとも極端な低評価を付けるようになるという考えだろう。

Inkfy氏は例として、『ポケットモンスター ソード・シールド』のようなゲームと、『The Lord of the Rings: Gollum』の間には違いがあるとしている。このうち『The Lord of the Rings: Gollum』については発売後に多数の不評が寄せられ、開発元であるDaedalic Entertainmentが「がっかりする体験(underwhelming experience)」を提供してしまったとしてユーザーに謝罪することとなった作品だ。その後同スタジオは理由は明かしていないものの、ゲーム開発事業から撤退するに至った(関連記事)。

ちなみにレビュー集積サイトMetacriticにおいては『ポケットモンスター ソードシールド』は、それぞれメタスコアで100点満点中80点と良好。対して『The Lord of the Rings: Gollum』はメタスコア33点となっている。一方でユーザースコアを見ると、『ポケットモンスター ソード・シールド』はそれぞれ10点満点中4.8点、4.7点と、ほかのシリーズ作品と比べてどちらかといえば低い部類だ。『The Lord of the Rings: Gollum』のユーザースコアについてはそれをさらに下回る1.5点となっているものの、メタスコアよりも『ポケットモンスター ソード・シールド』との点数の開きは小さい。レビューを見ると『ポケットモンスター ソード・シールド』にも、0点や1点といった低評価が多く寄せられていることがわかる。上述したInkfy氏の考えも、そうした状況を踏まえているのだろう。

中にはごく短い文面で投じられた“雑な不評レビュー”もあるものの、しっかりと批評したうえで0点や1点といった点数付けがおこなわれている例も見受けられる。『ポケットモンスター』のほかのシリーズ作品を見ても、0点や1点がさらに多く寄せられている作品はあり、どんな人気タイトルであっても最低レベルの評価を下すユーザーの存在は確認できる。点数付けは各人の尺度に基づいてしかるべきものではあるが、そうした作品が、品質面で開発元自らが“出来の悪さ”を認めた『The Lord of the Rings: Gollum』と同列の点数付けをされている点には違和感もある。

『The Lord of the Rings: Gollum』


目が肥えて、辛口化模様

そうした背景に「出来の悪いゲームがプレイされなくなったこと」が関係しているかどうかは定かではないものの、近年ではゲーマーやユーザーレビューが“辛口化”している状況は垣間見える。たとえばカプコンは2023年の統合報告書において、「昨今、グローバルでのゲーム人口の増加により、ユーザーがゲームを評価する目は年々肥えてきています。」との見解を伝えていた。またこのほかにも業界では近年、グラフィックや特定のジャンルなどさまざまな側面で“ユーザーの目が肥えている”との見解が聞かれる。

なお上述のようにゲーム人口自体の増加が“ユーザーの目が肥えている”一因として挙げられる一方で、レビュースコアが存在感を増していることも背景としてあるかもしれない。たとえばゲーム市場調査会社Gamesightは、Steamではユーザーレビューが持ち直したゲームが“売れやすくなる”といった傾向を分析していたこともある(関連記事)。また特に大手メーカーにおいては、Metacriticでのメタスコアで高得点を獲得できるように制作する戦略がとられていることもしばしば伝えられてきた。ユーザーレビュー・批評家レビューに限らず、プレイヤーがレビュースコアを購入の参考に活用しているからこそ、企業側もそうした傾向を戦略に織り込んでいることもうかがえる。

このほか近年では早期アクセス配信での開発をおこなうゲームにおいても、「早期アクセス配信開始時点での品質」が厳しくみられる傾向はあるようだ。たとえば大ヒット工場自動化シム『shapez 2』の開発者は、今日では早期アクセス配信であってもUIやUXの品質が微妙であったり、チュートリアルが不足していたりバグがあったりすることに対してユーザーは厳しい目を向けているとの考えを述べ、早期アクセス配信前に同作の品質を磨き上げる方針をとったことを伝えていた(関連記事)。大手メーカーの作品だけでなく、早期アクセス配信のインディーゲームであっても、“辛口レビュー”に晒されやすくなっている状況はあるのかもしれない。

ちなみにXbox Game Studios傘下のデベロッパーWorld’s Edgeにてビジネス責任者を務めるWill McCahill氏がおこなった独自調査では、Steam上のユーザーレビューの好評率のグローバル平均が2020年には90%であったところ、2024年には84%に落ち込んでいたという。Steamのユーザーベースが年々増加を辿っていることも踏まえると、好評よりも不評を投じるユーザーがかなり増えていることも垣間見える。一連の状況からは、ユーザーレビューの評価基準がかつてよりも厳しくなっているという見方もできるだろう。ちなみにWill氏が示す言語別の好評率推移データを見るに、日本語はレビューにおいてもっとも好評率が低い言語となっている。

Image Credit: Will McCahill on LinkedIn


そもそも点数付けは必要?

いずれにしても極端な低評価を問題視する今回の投稿は、ユーザー間で議論を巻き起こしている模様だ。「それなりの作品にも極端な低評価を付ける人は、本当にひどいゲームを遊んだことがないからだ」との意見には一定の賛同も見られる。上述したようなレビュースコアの存在で、ユーザーが“ひどい”と評価されたゲームを遊ぶ前から避けやすくなった結果、今度は今まで「2~3点扱い」されなかったゲームが“ひどいゲーム”とみなされるようになっている可能性もあるかもしれない。

一方、そもそもゲームに点数付けをすること自体がナンセンスだとする声はある。あくまで遊んできたゲームの良し悪しではなくプレイ前の「期待の高さ」や「好み」にも左右されうるため、点数はプレイヤーの主観によって大きく変動しうるという考えだ。好み次第で、世間的な評価とまったく異なる評価を付けたくなる場合もあるだろう。

なお、業界で一定の権威をもつMetacriticのメタスコアでさえ、指標としての正確性や存在意義を疑問視する開発者の意見は見受けられる(関連記事)。メタスコアやSteamユーザーレビューなどでゲームの評価が数値として可視化されることは、分かりやすい指標ではある。一方で、メタスコアで評価されづらいゲームが作られにくくなったり、不誠実なレビューやレビュー爆撃でスコアが変動したりする問題もある。ユーザーが“辛口化”している傾向も見られるなかでは、より多様なゲームが適切な評価を受けやすい仕組みも求められているのかもしれない。

この記事にはアフィリエイトリンクが含まれる場合があります。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

記事本文: 3609