Steam上の「生成AIを利用しているゲーム」、1万タイトル突破との報告。「売上15億円超は12作品」など売上別内訳も示す独自調査データ

Totally Human Mediaの統計によれば、Steamにおける生成AIを利用したタイトルの総数は1万件を超えたのだという。

Steamでは現在ストアページに「AI生成コンテンツの開示」の項が設けられており、ゲーム開発や宣伝素材などにおいて生成AIが使用されたかどうかが確認できるようになっている。そうしてSteam上で公開されている、生成AIを利用したゲームの数をTotally Human Mediaが独自に集計したところ、1万タイトルを超え、Steamに存在する全ゲームのうち8%を占めていると判明したという。

Valveが運営するPCゲームプラットフォームのSteamと生成AIの関係については、2023年まで遡る。同年6月、ある開発者がAIツールを用いて生成した画像を含むゲームがValveによってSteamでの配信を拒否されたとして話題になった。この際ValveはAI技術を活用すること自体は問題ないとしつつも、他者の著作権を侵害するコンテンツは認められないとコメント。生成AIにおける、訓練用データにおける著作権を巡った訴訟が提起されたことや、各国・地域にて法整備が進められている状況を鑑みてか、慎重な姿勢を示していた(関連記事)。

一方で2024年1月にValveは方針を転換し、生成AIツールを用いて開発されたタイトルのSteamでの取り扱いを明確化。生成AI技術を利用するゲームに関して、リリース前のレビュー(審査)などにおける新たな仕組みを導入し、開発者側からの開示情報をもとに審査をおこなうとした(関連記事)。つまり、Steamでは開発に用いた生成AI技術の情報を明示することで、生成AI技術を使用するゲームの大半がリリース可能となったわけだ。とはいえ同社は今後も生成AI利用コンテンツに対する検討を進めていくとし、AI関連の法律の整備状況を学びながら、必要に応じて再検討される可能性があることを伝えていた。

なお、生成AI使用に関する開示情報はストアページ上でユーザーも確認可能となっており、たとえば『東方錦上京 〜 Fossilized Wonders.』では、「一部の背景テクスチャに、AI生成コンテンツが含まれている」と記載。『Call of Duty: Black Ops 7』では、「一部のゲームアセット開発に生成AIツールを使用している」との説明が記載されている、といった具合だ。

『東方錦上京 〜 Fossilized Wonders.』のSteamストアページ

そしてTotally Human Mediaの統計によれば、今年11月の調査時点では1万258タイトルが生成AIを用いたタイトルとして計上されたという。これはSteamの全タイトルのうち8%に相当する数とのこと。なお今年7月時点で約8000件のゲームが生成AIを用いており、約4か月で2000件増加したかたち。AI生成コンテンツの開示はあくまでも自己申告に基づく情報ではあるものの、2024年における実質的な“解禁”とともに、その数を増やし続けている様子もうかがえる。

そしてTotally Human Mediaはレビュー数から収益を大まかに推定するために用いられる「Boxleiter法」で生成AIを利用した各タイトルの収益を計算したところ、総売上高は約6億6000万ドル(約1030億円)になると報告。内訳としては、12タイトルが8桁ドル(約15億6000万円以上)の収益を記録しているという。この12タイトルには、『Call of Duty: Black Ops 6』や『inZOI』など新作のほか、『Stellaris』といった2024年以前に発売済みであったタイトルもラインナップされている。

『inZOI』

なおこのほか33タイトルが7桁ドル(約1億5600万円以上)、170タイトルが6桁ドル(約1560万円以上)、487タイトルが5桁ドル(約156万円以上)となっている。そして残りの9556件、すなわち対象タイトル全体の約93%は5桁ドルを下回っている、つまり1万ドル(約150万円)未満の売上にとどまっているとの推算がなされている。

ちなみにSteamの非公式統計データベースGamalyticを見るに、Steamの全体傾向としては売上が1万ドル以下のゲームは本稿執筆時点で約76%となっている。そのため生成AI技術の情報を明示しているタイトルでは、さらに“売れているゲーム”が限られている傾向もうかがえる。

先述したとおり生成AI技術を利用していることを明示するルールは2024年から設けられたばかり。対象となるタイトルは比較的新しいゲームが多いだろう。売上にまだ伸びしろのあるタイトルが一定数含まれている可能性にも留意したいものの、一部ユーザー間では開発に生成AIを利用すること自体を批判視する向きもある。生成AI技術を利用していることの明示が、売れ行きに影響するかどうかは今後の統計的な分析も待たれるトピックといえる(関連記事)。

とはいえ先述したとおり一部のタイトルは、生成AI技術が利用されつつも大きな売上を立てることに成功している。大型の新作タイトルや、発売済みタイトルの新展開において一部要素に利用されるケースも増えているわけだろう。

ただ昨今ではインディーゲームを対象とするアワード「The Indie Game Awards 2025」にてGame of the Yearなどを受賞予定であった『Clair Obscur: Expedition 33』が開発プロセスにおける生成AIの利用を巡って失格に。The Indie Game Awards(以下、IGA)側の発表によると、同アワードでは生成AIを利用している作品を受賞対象にはしない厳格な基準を設けているそうで、本作開発元のSandfall InteractiveもIGAに対し「開発プロセスの中で生成AIを利用していない」と回答していたという。しかしその後IGA 2025の放送当日に開発プロセスにおいて生成AIが利用されていたことが発覚したとして、すでにアセットは置き換えられているものの失格の判断を下したことが報告された(関連記事)。

『Clair Obscur: Expedition 33』

生成AIにおいては訓練用データとなるコンテンツの権利関係を中心に議論が続けられており、各国で法整備の只中にある。とはいえゲーム開発を含め、実務上はさまざまな分野ですでに活用され始めており、Steamでもそうした背景から暫定的なルールを定めたのだろう。一部ユ―ザー間では根強い懸念もあるようで、今後どのように規約が整えられるのか、そして生成AIを利用する作品が受け入れられていくのかどうかは注目される。

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Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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