「きかんしゃトーマス」Modブームの“生みの親”、かつて権利元弁護士から叱られていた。でも懲りない
「きかんしゃトーマス」Modブームの火付け役といえるMod制作者と、同作の権利元マテルとの過去の“因縁”に再び注目が集まっている。

Mod制作者のTrainwizことKevin Brock氏は11月20日、『The Elder Scrolls III: Morrowind』(以下、Morrowind)向けのMod「Really Useful Cliffracers」をリリースした。同氏はゲーム内の敵などを「きかんしゃトーマス」に置き換えるModを最初期に制作・公開した人物として知られ、「きかんしゃトーマス」の権利元との“因縁”も改めて話題になっている。PC Gamerなどが伝えている。
「きかんしゃトーマス」は、人間のような顔をもつ機関車たちと彼らに関わる人々を描くアニメーション番組だ。当初は人形劇であったが、第13シリーズからは3DCGアニメとなり、第25シリーズからは2Dアニメとして展開されている。2012年には米国の玩具メーカーであるマテルによって権利が買収された。
そんな「きかんしゃトーマス」の主人公トーマスについては、一風変わったかたちでゲーマーコミュニティを賑わしてきた。PCゲームにおける非公式Modとして、さまざまなゲームに“勝手に”登場させられてきたのだ。あるときは魔法使いの箒(関連記事)、あるときはホラーゲームの敵(関連記事)、またあるときは本来どおりの機関車として(関連記事)、多種多様なかたちでPCゲームに姿を見せてきた。

そんな“トーマスMod”の先がけとみられるのが、『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)におけるMod「Really Useful Dragons」だ。TrainwizことKevin Brock氏が2013年に配信したModであり、ゲーム内のドラゴンをすべてトーマスなどに置き換えるという内容。同氏はその後もさまざまなModを制作する傍らで、Bethesda Game Studios作品に向けてトーマスModを制作してきた。
今回はそんなBrock氏が、『Starfield』向けの「Really Useful Starfield」以来約2年ぶりのトーマスModとなる「Really Useful Cliffracers」をリリース。『Morrowind』における敵「Cliffracer」をトーマスに置き換えるModとなっており、群れをなして空中から迫ってくるCliffracerがすべてトーマスになるという強烈なModになっている。Nexus Modsの説明文を見るに実は数年前にこのModを作ったそうだが、投稿には至らなかった。しかし今になって“特に何も気にすることはない”と気づき、リリースされたそうである。
またBlusSkyにてBrock氏は、本Modの公開報告と共に皮肉交じりのジョークも投稿。「私は企業が相手だとまったく懲りることがないんだ」としつつ、トーマスの権利元であるマテルの存在など意に介していないかのような姿勢を見せている。
そうした投稿の背景には、過去にBrock氏が投稿したコンテンツに向けてマテルが削除要請をおこなったことが関係しているようだ。海外メディアThe Faceが2019年に公開したインタビューにて同氏は、過去にYouTubeに投稿していた『Skyrim』のMod「Really Useful Dragons」の紹介動画が削除要請を受けたと説明。マテルの代理人とみられる法律事務所からの要請であったといい、トーマスが爆発するシーンがブランドを毀損するといった主張から動画の削除が求められていたとのこと。
なお動画については要請が認められ一度は削除されたものの、別のユーザーが再投稿。こちらにも削除要請がおこなわれたが、YouTube側が法的にはパロディの範囲内といった判断をおこない、要請が却下されたという。Brock氏はちょっと気分が良かったと振り返っている。
ちなみに動画のもとになった「Really Useful Dragons」については、本稿執筆時点でNexus ModsおよびSteamワークショップのいずれでも公開が継続されている。ただBrock氏が制作した『Fallout 4』向けのトーマスMod「Really Useful Fallout」についてはNexus Mods上で配信停止になっており、同氏はこの背景にもマテルが関係していることを示唆している。こちらは削除要請を受けて配信停止になったということかもしれない。
いずれにせよそうした経緯もあって、今回Brock氏は「Really Useful Cliffracers」公開にあわせて皮肉交じりのジョークを投じているのだろう。The Faceにおける発言も含めてGamesRadar+なども報じており、改めてBrock氏とマテルとの過去の因縁にも注目が集まっている。
とはいえ「Really Useful Dragons」を皮切りに、Brock氏やほかのMod制作者によって多種多様なトーマスModが制作され、YouTube上にもさまざまな動画が投じられてきた。それぞれ削除されていない点も見るに、マテルが逐一削除要請を出しているわけでもないのだろう。トーマスのキャラクター性とかけ離れたModも多く見られ、中にはブランドイメージを損ないかねないModもあるものの、大規模にネットミーム化したこともあってかマテルがいくらか寛容な姿勢をとっていることもうかがえる。
ちなみにModとは別に、鉄道運行シミュレーションゲーム『Train Sim World 5』向けにはいわば“公式に”トーマスを導入するDLC「Thomas & Friends Visit the West Somerset Railway」も販売されている。同作があくまでトーマスのイメージに則した作品という点には留意したいものの、ゲーム向けにライセンスが認められる場合もあるようだ(関連記事)。




