あるRPG開発者、理不尽な“『Expedition 33』のパクり”呼ばわりに「心が死ぬ」と悲痛な訴え。2年も早く発表したのに
大ヒットRPG『Clair Obscur: Expedition 33』よりも早く発表されていたRPG『The Time I Have Left』の開発元が、一部ユーザーからの“模倣扱い”に苦しんでいるという。

クリエイティブチームのGroundは、開発中の『The Time I Have Left』について、一部ユーザーから『Clair Obscur: Expedition 33』(以下、Expedition 33)の盗作扱いされることがあるという。そのたびに「心が死んでいく」という悲痛な思いを吐露して注目を集めている。
『Expedition 33』は、今年4月24日に発売されたターン制RPGだ。パリィなどのアクションが取り入れられた戦闘システムのほか、フランス風の要素を取り入れた世界観やアートワーク、Unreal Engine 5による美麗なグラフィックなどから高い評価を獲得。小規模スタジオの作品ながら売上は500万本を突破する大ヒットを記録しており、Golden Joystick Awards 2025においては最多ノミネートも果たしている。2025年を代表する作品と言えるだろう。

そうした話題作の登場を受けてか、何かしら共通点のある作品に対して、『Expedition 33』の模倣や盗作だと非難をする心無いユーザーがいるようだ。今回その対象となったのは『The Time I Have Left』という開発中のインディーゲームだ。
『The Time I Have Left』は、ストーリーに重点が置かれた脱出アドベンチャーRPGだ。巨大地下都市の最後の住人であるアリーンは、謎の現象「ミアスマ」から余命6時間を宣告されてしまう。プレイヤーは制限時間内に地下都市を探索し、情報やキーアイテムを見つけ、ギミックを解きながら脱出を目指すこととなる。道中では異形の存在とのバトルも発生。敵の攻撃に対して回避やパリィを駆使するターン制の戦闘システムも特徴となっている。

両作における共通点として、ターン制の戦闘でありながらパリィや回避といったリアクションできる点が挙げられるだろう。公開されている動画や画像から、スタイリッシュなUIやモンスターデザインに『Expedition 33』との類似性を感じるユーザーもいるかもしれない。
『The Time I Have Left』の開発者によると、そういった指摘や非難が最近増えており、そのたびに「心が少しずつ死んでいく(we die a little bit inside)」という悲痛な思いを投稿。このなかではターン制RPGかつパリィと回避があるといった要素は、2022年と2024年に公開済みの体験版にてすでに備えていたとしている。『Expedition 33』を模倣したわけではないと強調しているかたちだ。
実際、『The Time I Have Left』は2022年3月のFuture Games Showにて発表され、同年10月にはSteamにて体験版が公開されている(関連記事)。『Expedition 33』が発表されたのは2024年6月であるため、模倣や盗作といった指摘は的外れといえる。にもかかわらず『Expedition 33』が大きな話題になったこともあってか、『The Time I Have Left』には理不尽な批判も多く寄せられているようだ。もちろん『Expedition 33』の開発元・権利元による批判ではなく、あくまで一部ユーザーからの批判である点には留意したい。
なお『Expedition 33』は2019年に企画がスタートし、『ファイナルファンタジー』シリーズや『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』に影響を受けていることが公言されている(関連記事)。『The Time I Have Left』においても、アドベンチャーゲームの探索とストーリーテリング、そして新旧JRPGのターン制戦闘の奥深さを融合した作品になっていると説明されている。つまり、いずれも往年のJRPGの影響を受けているわけだ。
また『ペルソナ』シリーズのようなスタイリッシュなUIも、近年インディーゲームを含めさまざまな作品に影響を与えていることがうかがえる。そしてパリィなどは「ソウルライク」ジャンルをはじめ、幅広い作品で採用されてきたシステムだ。そうして“インスパイア元”が被れば、発表時期・発売時期が後か先かに関わらず、作品間で必然的に似通った要素も生まれてくるだろう。
なお『The Time I Have Left』は、当初2023年の発売が予定されていたものの、現在においても発売日は未定。2024年12月に実施されたクラウドファンディングは、目標額に届かずキャンセルとなっている。開発中止が危ぶまれていたところ、今年5月に開発継続中であることが発表された。
本作のために設立されたGround Game Atelierは閉鎖され、現在はGroundというチームとして活動しているという。コアメンバーはそのままながら、余暇の時間に開発に取り組んでいるそうだ。ディレクターやゲームデザインを務めるYITE氏は、予算がゼロのため仕事を探さなければいけないと語っており、なかなかに厳しい状況のようだ。そのような心血を注いだ作品が、盗作やパクリ扱いされることの悲しみは想像に難くない。本作の体験版をプレイして、本作ならではのオリジナリティや『Expedition 33』との違いを確認してみてはいかがだろうか。
『The Time I Have Left』は、PC(Steam)向けに開発中だ。




