注目ライフシム『星砂島物語』開発者はプレイヤーに「第二の人生」を贈りたい。誰かに必要とされながら生きる、ガチ田舎暮らしスローライフ
大きな注目を集めているライフシム『星砂島物語』の開発者に、本作のコンセプトやこだわりを訊いた。

『星砂島物語(Starsand Island)』は、田舎暮らしを題材としたライフシミュレーションゲームだ。都会の喧騒を離れて田舎の島へ移り住むことになった主人公は農作物を育てたり、住人たちと交流したりすることで日々を過ごしていく。本作はいわゆる「スローライフ」を満喫するゲームの新作として、注目を集めているタイトルだ。明日10月14日から10月20日にかけて開催される「Steam Nextフェス」では『星砂島物語』の期間限定体験版が配信予定となっている。
そんな『星砂島物語』が、東京ゲームショウ2025に出展された。今回が日本初の試遊出展となる(関連記事)。弊誌は本作のゲームプロデューサー&クリエイティブディレクターであるRichardo Wang(リチャード・ワン)氏にインタビューする機会に恵まれた。興味深い回答の数々をこの記事で紹介したい。
ゲームの世界をプレイヤーの第2の人生にしたい
――リチャード・ワンさんの自己紹介をお願いいたします。
リチャード・ワン氏(以下、ワン氏):
『星砂島物語(Starsand Island)』のプロデューサー兼クリエイティブディレクターのリチャード・ワンと申します。ゲームの全体的な企画や方向性の管理をすることが私の役割に含まれますが、それだけではありません。ストーリー、キャラクター、美術設定、ゲームプレイのデザインといったゲーム開発における核心的な部分についても、直接携わっています。
本作を通じて、私たち開発チームの思い描く田園スローライフの世界を、プレイヤーの皆様にお届けできればと思っています。
――『星砂島物語』はどのようなゲームなのでしょうか?
ワン氏:
『星砂島物語』は、スローライフを満喫することが可能なシミュレーションゲームです。プレイヤーは農作物を育てたり、動物を飼育したりすることができます。個性豊かなNPCたちと交流することや、神秘的な遺跡を探索することも可能です。本作は、農場経営や育成シミュレーションなどの要素を融合させたゲームといえるでしょう。
私たちは、温かく癒され、驚きと活気に満ちた島での暮らしを表現することを目指しています。本作を通じて、プレイヤーに本当に自分だけのものといえるような「第二の人生」を提供したいと考えています。


スローライフゲームとして本作ならではの強みとは
――スローライフのゲームとして、『星砂島物語』にはどのような独自性がありますか?
ワン氏:
『星砂島物語』独自の特徴として、次の3つを挙げることができます。1つめは、NPCたちの感情システムです。NPCたちはそれぞれが独自の人生を歩んでいますが、プレイヤーと交流することによってNPCと親しくなることができます。都会で暮らしたままだったら出会わなかったかもしれない主人公と当該NPCの物語が交錯することで、2人のキャラクターに温かい感情のつながりを築くことができるようになるんですよ。そうしていくうちに、島全体が生活感と人間味にあふれる場所へと変わっていくことを、プレイヤーの皆様には感じていただけるでしょう。
本作ならではの2つめの特徴は、極めて自由度が高いことです。高い自由度をゲームプレイとして許容しているのは、『星砂島物語』の最大の特徴といってもいいかもしれません。農作物の栽培や家畜の飼育などのアクティビティはプレイヤー主導で行われますし、DIY要素もプレイヤーが厳密に設計できます。DIYは、庭のレイアウトや家具の配置までも個人の好みに応じて自由に改造できるんですよ。私たちはどんな人生も尊重され、プレイヤーが体験する価値があると考えています。個性豊かなNPCとの交流をしつつ、プレイヤーが自由に過ごしていくことで、和やかながらも無限の可能性に満ちた癒しの世界が生まれます。これこそが『星砂島物語』ならではのもっとも独特な魅力だと考えていますね。
最後の3つめは、本作がアニメ調の3Dグラフィックを採用していることです。地域文化の特色を取り入れた島の設定と組み合わせることで、視覚的に温かく癒されるだけでなく、唯一無二の島の風情を深く体験できるようになっています。
――なるほど。特徴の1つとなるアニメ調の3Dグラフィックを採用された決め手はあるのでしょうか?
ワン氏:
私たちの開発チームのメンバーは、子供の頃からアニメを見て育った世代です。そうしたことから、私たちはアニメが視聴者を作品世界に引き込む力をよく知っています。本作の開発を決意したとき、プレイヤーがリラックスして安心できる世界を作りたいと考えました。
アニメ調の3Dグラフィックにすることは、私たちが目指すゆったりとした雰囲気と非常に相性が良かったんですよ。グラフィックで温かさや癒しをうまく伝えることができます。また、このスタイルは個性的なキャラクターデザインにも適しており、島の住民一人ひとりがプレイヤーに忘れられない印象を残せるようになります。

――なぜ、主人公を「都会から田舎に移り住む人物」として設定したのですか?
ワン氏:
現代社会では、多くの人々が喧騒やスピードから逃れて自分だけの心の安らぎを求めています。私たちのチームも同じ思いを抱いていました。本作の制作過程においても、主要メンバーたちは「都市の高いプレッシャーから解放され、田舎に戻って無邪気な日々を過ごしたい」、「祖父母と一緒に働き、大自然の中で心を養いたい」といった夢を見てきました。
そういう経験が開発チームに存在したので、「都会から田舎に移り住む人物」を主人公にすれば、プレイヤーからの共感を得ることができると思いました。本作をプレイしてくださる皆様には、平凡でありながら温かい物語の中に、自分自身の感情の出口や心の慰めを見つけられると信じています。それが、ゲームをプレイすることによる「癒しの旅」となれば幸いです。
――田舎暮らしを満喫できるアクティビティとして、本作にはどのようなものが登場するのでしょうか?
ワン氏:
本作では、農作物の栽培、家畜の世話、釣り、料理、野外での採集といった自然の豊かさを感じるアクティビティが登場します。道具や家具の制作などのクラフト要素も存在しますね。島では定期的に収穫祭や釣り大会、春節の花火大会といったイベントも開催され、プレイヤーはにぎやかな祭りの雰囲気を楽しむことができます。さらに、依頼クエストをこなすことで、より多くの交流やストーリーが解放され、コミュニティ生活の魅力を実感できるようになっています。

NPCが積極的にプレイヤーを攻略してくれる好感度システム
――主人公と住民との交流はどのように描かれていくのでしょうか?
ワン氏:
主人公とNPCの交流は、「クエストシステム」と「好感度システム」という2つの仕組みによって描かれていきます。クエストシステムでは、すべての会話内容やクエスト設計がキャラクター設定に基づいて作られています。NPCがプレイヤーに出す依頼はそれぞれの理想や人生観と密接に結びついており、会話の反応もキャラクター性に沿ったものとなっています。
その一方で、好感度システムはゲーム全体を通じて作用する仕組みです。プレイヤーの選んだ選択1つ1つが関係の進展に影響します。依頼を達成して交流を深めることもできれば、雑談やプレゼントなどによってキャラクター性に合った反応が返ってきます。NPCたちの人生背景はきちんと設計されているので、日常のやり取りの中でキャラクター性に合ったサプライズが返ってくるでしょう。そうした意味で、リアルで温かい交流を体験できるのが『星砂島物語』というゲームなんですよ。
――本作の好感度システムについて教えてください。
ワン氏:
本作の好感度システムは、「双方向の成長」を重視しています。プレイヤーは日常の交流やプレゼントを贈ることなどを通じてNPCとの親密度を高めることができますし、NPCの側からもイベントに招待してくれたり、プレイヤーが困難に直面したときに助けてくれたりします。
関係が深まるにつれて、専用ストーリーや隠し要素が段階的に解放され、さらにデート、同居、パートナーになるといった深い関係に発展することも可能です。NPCとの交流は各段階ではおよそ2時間程度のコンテンツが用意されていますが、NPCによって体験時間は異なります。また、親密な関係の構築は町全体の雰囲気や発展にも影響を及ぼします。
――NPCが好意を示す段階はおおよそいくつあり、どのくらいの期間がかかりますか?
ワン氏:
NPCの感情進行は5つの段階に分かれており、それぞれで独自の行動や解放要素があります。たとえば、出会ったばかりの頃は挨拶程度ですが、親しくなると日常の出来事を共有するようになり、友人になると自宅に招待してくれることもあります。
さらに信頼や依存の段階に進むと、特別なストーリーが展開されます。全体の進行はできるだけ自然に設計されており、プレイヤーは数週間のゲームプレイを通じて交流を積み重ね、少しずつNPCと仲良くなっていきます。少しずつ進めていくことを実感できることで、単調さや繰り返し感を避けているんです。

――なぜ、NPCがプレイヤーに積極的に好意を示すようにしたのですか?
ワン氏:
私たちは、リアルな世界を表現するためにはNPCが「ただのキャラクター」であってはならないと考えています。「プレイヤーに癒しを感じてもらう」という核心的な設計理念にもとづき、私たちは外向的な性格をもつNPCたちを登場させることにしました。本作のNPCたちは現実の人間と同じように、プレイヤーに愛情や好意を積極的に示します。
NPCはそれぞれ独自の性格や欲求をもっているため、自らプレイヤーに気遣いをしてくれたり、ときには不満を表すこともあります。こうした交流を通じて、プレイヤーは「愛されること」を実感しながら「人を愛すること」を学び、「必要とされている」や「注目されている」と感じることができます。その結果として、島全体のコミュニティがより生命力に満ちたものとなります。

細かい描写を盛り込んだ田舎暮らし
――開発の過程で、どのような田舎暮らしの細部に特にこだわりましたか?
ワン氏:
私たちは、とりわけ「生活の温もり」を再現することに注力しました。たとえば、雨の日のぬかるむ小道、朝の鳥のさえずり、台所の炊煙、隣人の優しい挨拶など、日常の癒しの要素をすべてゲーム体験に取り入れています。プレイの仕組みにおいても、エサをあげるとヒヨコが一斉に集まってきたり、他人の畑で収穫しようとするとイヌが吠えて警告したりと、細かい描写を盛り込みました。
その一方で、操作はシンプルで分かりやすくなるよう最適化しており、プレイヤーが煩雑さを感じないようにしています。最も大切なのは、どのような遊び方にもできる限り「感情的な意味」を持たせ、プレイヤーが世界の人々や動物たちと独自のつながりを築けるようにしている点です。
――リアルさとゲーム性のバランスはどのように取っていますか?
ワン氏:
私たちの目標は、ゲームに現実の暮らしの味わいを持たせつつ、楽しさと快適さを失わないことです。常に「リアルさはゲーム性に役立ち、ゲーム性もリアルさに寄与する」という設計理念を貫いています。たとえば、農作物の成長には一定の規則性がありますが、過度に時間がかかることはありません。プレイヤーにストレスを感じさせないようにしています。私たちは常にプレイのリズムを磨き上げ、リラックスして楽しみたい人も、達成感を求める人も、どちらのタイプのプレイヤーも楽しめるよう心がけています。
――人と動物の関係はどのように表現されていますか?また、動物はゲーム内でどのような重要な役割を持っていますか?
ワン氏:
『星砂島物語』では、ネコやイヌ、パンダなどの動物にも好感度システムが存在します。プレイヤーが一定の交流を重ねることで、その動物を飼うことができます。動物ごとに島での生活を助けてくれる役割があるのも重要なところです。たとえば、ニワトリは害虫を駆除し、ウサギは雑草を片付け、ネコは魚をもってきてくれたりします。パンダのような希少動物は、愛らしい仕草やタケノコを食べる姿だけでなく、プレイヤーにサプライズ報酬をもたらすこともあります。
私たちは、こうした仕組みを通じてペットをプレイヤーの生活における大切で温かい存在にしたいと考えています。現実の暮らしでペットが寄り添い、癒しや楽しさを与えてくれるように、『星砂島物語』でもそれぞれの動物が独自の方法で、プレイヤーが過ごす日々に温もりと驚きを添えてくれるのです。そういう意味では、動物は素材を生産するパートナーであるだけでなく、生活の一部でもありますね。

――ゲーム内の時間はどのように流れますか?季節の変化や関連イベントはありますか?
ワン氏:
ゲーム内の一日は約30分で、28日をもって1つの季節が完結します。四季の移り変わりは、NPCや動物の習性や栽培できる作物の種類などに影響を与えます。グラフィック的な変化としては春には花が咲き誇り、夏には花火が打ち上がり、秋には果実の収穫が楽しめ、冬には雪景色を堪能できます。さらに、春節といった中国の伝統的な祝祭日も登場しますね。
――『星砂島物語』というゲームを開発するうえで、日本から影響を受けたと感じる部分は存在しますか?もしあれば、それがどのようなものかを教えてください。
ワン氏:
私たちのゲーム開発は、たしかに日本のゲーム文化から影響を受けています。たとえば、『あつまれ どうぶつの森』に見られるキャラクター設定における人間味や心配りは、私たちにとって大きな参考となりました。
開発チームにとっては中国の道家文化の影響も根底にあります。誠実でなおかつこつこつと努力を続けないと、遠くにある目的に到達することはできないという意味の「寧静致遠」という思想と深く結びついていますし、「心の静けさ」の表現を突き詰めるのに念頭にあった考え方です。
この考えをもとに、中国道家文化の精神的な核をゲーム体験に取り入れました。竹林でお茶を楽しみ湖を眺める、田畑の中で鶏や犬の声を聞くといった場面を通じて、自然との調和や本来の姿に立ち返る生活理念を伝えています。癒し系スローライフゲームの心温まる基調を保ちながら、東洋哲学の意境を備えた田園世界を構築することで、プレイヤーは田舎の島において道家文化ならではの静けさと癒しを体験できるようになっています。
――プレイヤーに向けてメッセージと、今後の開発計画について教えてください。
ワン氏:
『星砂島物語』を応援し、期待してくださっている皆様に心から感謝いたします。この島を訪れるすべてのプレイヤーが、自分だけの静けさと喜びを見つけられることを願っています。今後も新しいプレイ要素やストーリー、より多くの交流コンテンツを拡充し、ゲームに新鮮さと温かみを持たせ続けていきます。現在、2026年初頭にXboxとPS5でのリリースを予定しており、そのときにはぜひ一緒に新たな島の暮らしを始めましょう。私たちはこれからもプレイヤーの声に耳を傾け、ともに歩んでいきたいと考えています。
――ありがとうございました。
『星砂島物語(Starsand Island)』は現時点ではPS5/Xbox Series X|S向けに2026年2月1日に発売予定と告知されている。またそのほかの対応プラットフォームはPC(Steam/Microsoft Store)/Nintendo Switchで、PS5/Nintendo Switch向けにはパッケージ版がGame Source Entertainmentから発売予定となっている。
[執筆・編集:Ryuichi Kataoka]
[編集:Ayuo Kawase]