過去の自分”と共闘するローグライクアクション『HOTEL BARCELONA』は、常識人保安官と殺人鬼の掛け合いも最高。TGS2025で試遊した感想

『HOTEL BARCELONA』のTGS2025試遊レポートをお届けする。

HOTEL BARCELONA(ホテル・バルセロナ)』は、7人の殺人鬼たちが巣食うホテルを舞台にした横スクロールアクションだ。死んだ自分の残像を利用して戦う「スラッシャーファントム」というシステムが特徴で、ゲーム自体の難易度は高いながらも、過去の自分の亡霊を活かした立ち回りを心がけることで強大な敵とも渡り合えるようになっていく。

本作を手がけたのは、『レッドシーズプロファイル』や『The Good Life』などで知られるSWERY氏と、『ノーモア★ヒーローズ』や『killer7』などで知られる須田剛一氏。ふたりの奇才がタッグを組んだ異色の新作として、『HOTEL BARCELONA』は注目を集めてきた。そんな本作が出展されていたので、本稿ではプレイした感想をお伝えしたい。

保安官でありながらも殺人鬼の魂を宿す主人公

本作の主人公は、新米連邦保安官ジャスティーン。彼女は7人の殺人鬼が巣食うホテルに囚われてしまっており、ホテルから脱出するためには殺人鬼たちを始末しなければならない。彼女にはいわゆる“死に戻り”の能力が備わっており、殺人鬼に殺される度にホテルの部屋で復活することができる。

ジャスティーンは本来控えめな性格をしているが、その精神に「Dr.カーニバル」と呼ばれる殺人鬼を宿している。まったく性格の異なるジャスティーンとDr.カーニバルの2人だが、ホテルから脱出するという目的は同じ。協力関係を築いた2人の掛け合いは豊富に用意されており、常識的なジャスティーンと悪魔的な凶悪さをもつDr.カーニバルのギャップが筆者の琴線に触れた。

主人公からすれば呪われたホテルだが、受付やバーなどの施設は通常営業を続けている。スキルの獲得や武器の購入などのカスタマイズにつながる施設の数々には、それぞれ個性的なキャラクターが登場する。本作のキャラクターたちの言動はぶっ飛んだものが多く、クセの強いキャラクターたちは平凡で控えめな主人公とは対比する形で存在感が際立っている。

爽快感ある戦闘とシビアさも求められる移動

本作は、ステージクリア型の横スクロールアクションゲームだ。主人公は近接武器や銃などで攻撃していくほか、パリィなどのアクションも駆使して敵と戦いを繰り広げていく。ステージの最奥で待ち受けるボスを倒せばステージクリアとなるが、道中でどのようなルートをたどるかはプレイヤーの自由だ。ボスのもとにたどり着くには複数のエリアを突破する必要があり、次のエリアに進むためには扉を見つけて開けなければならない。1つのエリアには複数の扉が存在し、開ける扉によって得られるボーナスが異なる。ボス戦を念頭に置いて、どのようにステージを攻略していくのかが重要となってくる。

道中で戦う雑魚敵の数は多く、ステージ攻略ではかなりの時間が戦闘に費やされる。試遊では序盤のステージから複数の敵が同時に登場し、倒したあとも増援として敵が追加されることがしばしばあった。潜んでいる雑魚敵がいきなり襲いかかってくることもあるため、ステージ攻略中はいつも気が抜けない。とはいえ、主人公の戦闘力は最初からかなり高い。注意さえしていれば雑魚敵はサクサク倒していけるところには爽快感があった。

戦闘が爽快感あふれる一方で、ステージの移動アクションについてはもどかしい部分があるのも事実だ。エリアによっては不安定な足場を連続ジャンプで進んでいくことになるが、その難易度はかなり高いように思う。湖に浮かぶ船は短時間立っているだけで沈んでしまうし、足場を確かめながら慎重に進んでいる最中に敵から撃ち落とされることもしばしばだ。横スクロールのアクションゲームとしては1種のお約束なのかもしれないが、本作はステージを駆け抜けるようなスピード感に乏しい。戦闘のアクションは爽快な一方で、移動アクションには細心の注意が求められる印象だった。

過去の自分と共闘する「スラッシャーファントム」

本作には「主人公の精神に宿る殺人鬼」という特徴を活かしたアクションも登場する。敵の血を浴び続けることでスカルゲージが溜まり、ゲージが溜まると特殊攻撃の「カーニバル覚醒」を発動できるのだ。返り血を浴びるほどアグレッシブに攻め続けることでメリットを得られるシステムは、戦闘をより攻撃的で挑戦的にしている。カーニバル覚醒の威力はかなり高く、雑魚戦ならば敵を一掃するほど強い。

死に戻り要素を活かしたシステム「スラッシャーファントム」は、本作を唯一無二のものとする大きな特徴だ。主人公が死亡してゲームオーバーになってしまうとそのときの記憶がその場に残り、次のプレイで亡霊として登場する。この亡霊は前回のプレイヤーの行動をなぞるものとなっており、亡霊の移動するルートや繰り出す攻撃も前回のプレイヤーの行動にもとづいている。いわば、スラッシャーファントムとは、過去の自分と共闘できるシステムだ。勝手に攻撃してくれるので敵の殲滅は早くなるし、亡霊を盾役としてプレイヤーは後方からの攻撃に徹することもできる。

過去の自分とシンクロして戦っていく感慨には独自のものがあり、本作でしか味わえない共闘感に満ちている。ステージの最奥で待ち受けるボスはとてつもない強さを誇るが、過去の自分と協力することで必ずや勝機を見出すことができるだろう。過去の自分の振る舞いがスラッシャーファントムの動きに繋がっているので、過去の自分を信じて戦う独特の境地に至ることができるのは、本作ならではの魅力である。

各プラットフォームで遂に発売へ

血みどろの戦闘アクションや殺人鬼をはじめとした個性的すぎるキャラクターたちが特徴の本作は、もしかすると人を選ぶゲームなのかもしれない。しかし、“過去の自分”と共闘できる本作ならではの魅力は唯一無二のもの。SWERY氏と須田剛一氏がタッグを組んで手がける本作は、アクションゲームとして突き抜けたものに仕上がっている。

『HOTEL BARCELONA(ホテル・バルセロナ)』は、PC(Steam/Microsoft Store)/PS5/Xbox Series X|S向けに発売中。発売を記念した期間限定セールも実施されているので、そちらについては各プラットフォームのストアを参照してほしい。

Ryuichi Kataoka
Ryuichi Kataoka

「ドラゴンクエストIII」でゲームに魅了されました。それ以来ずっとRPGを好んでいますが、おもしろそうなタイトルはジャンルを問わずにプレイします。

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