『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』はもう“スピンオフ”じゃない。「気持ちよさの連鎖」で進化するバトル、その核心を訊いた
『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』の開発陣に、本作のコンセプトや意気込みを訊いた。

ハンティングアクションをコマンド式戦闘に落とし込んだRPGとして人気を誇る『モンスターハンターストーリーズ』シリーズ。その最新作『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』(以下、モンスターハンターストーリーズ3)が2026年3月13日に発売される。このたび東京ゲームショウ2025にて、本作品のディレクターを務める大黒健二氏、リードゲームデザイナーを務める若原大資氏、そしてプロデューサーの辻本良三氏に対して、複数メディアによる合同インタビューが執り行われた。本稿ではその模様をお送りしよう。
『モンスターハンターストーリーズ3』は『モンスターハンターストーリーズ』シリーズ最新作。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch2/Xbox Series X|Sで、発売日は2026年3月13日を予定している。物語としては、いわゆる「ハンター」とは異なる役割を持つ職業「モンスターライダー」が存在する社会において、二つの国、二人のライダー、そして二頭のリオレウスの運命が交差し、滅びの運命を覆す物語が展開される。

――まずは本作の物語についてお聞きします。今回のストーリーのテーマは「何かを知る」という点に強く焦点が当たっているように感じます。なぜこのテーマを選んだのでしょうか?
辻本氏:
その理由として、まずはマーケティング的な面からお話します。これまで販売してきた過去2作は作品コンセプトとして、『モンスターハンター』シリーズ……ハンティングアクションシリーズのスピンオフという面を強調しておりました。ハンティングアクションの体験を、コマンド式戦闘を用いたRPGに落とし込んだゲームであるということをアピールポイントにしていたわけです。また、物語体験においても、ライダーという視点を用いてハンターの世界を違う角度から描いてみる、という狙いがありました。
そして本作については、メインシリーズに対するスピンオフという側面を脱出し、独立した『モンスターハンターストーリーズ』というシリーズならではの世界を描こうというコンセプトを掲げています。たとえば、本作の主人公は既にライダーとして成熟しており、物語としては「ライダー」としての成長がメインになるわけではありません。これまでよりスケールアップした内容が展開されていきます。
大黒氏:
スケールアップの具体例としては、舞台となる地域の拡大と設定の深堀りがあります。過去作においては「ハンターの世界にライダーという特殊技能を活用する村々があった」という前提を世界を描写するうえで用いていましたが、本作は違います。巨大な国同士の関係性が描かれるのはもちろん、「ライダー」という技術が地域内では一般的なものとして認知されており、それを生かせる「レンジャー」という職業が存在します。本作において「ライダー」であることは珍しいことではなく、「レンジャー」であることに焦点が当たります。そして、「レンジャー」は絶滅危惧種を保護し生態系を取り戻す仕事になります。主人公が属するアズラル国ならではの仕事です。
いわゆるチュートリアル的な体験にも変化があります。過去作ではプレイヤーがライダーの知識や技術を教わるという形で、物語に対する没入を狙っていました。一方、シリーズ3作目の主人公は「エースライダー」の肩書を持つ手練れです。ライダーを既に熟知し、人にライダーの技術を教える立場です。さらに、その前提を活かして、レンジャーという天職、そして国の後継という立場に挟まれる葛藤を描こうという狙いがあります。
物語を進めていくと、主人公はある大きな出来事をきっかけに、「自分は色々と知っていると思っていたが、知らないことだらけだった」と気付き、今いる世界に閉じこもっていてはダメだという強いブレイクスルーを迎えます。その「知らない世界に飛び込む」という行動原理が、『モンスターハンターストーリーズ』が描こうとする世界の深堀りにつながり、ユーザーのワクワク感にもつながると考えました。
――確かに、ライダーの技術が戦争兵器として活用されているシーンもPVにはありました。
大黒氏:
そこが軍人としての責務とレンジャーとしてモンスターを保護したいという想いに揺れる、主人公の葛藤を表現するポイントの1つです。主人公はレンジャーとして生態系を保護したいわけですが、立場上それよりも優先すべきことがあると意見を言う人も登場します。さまざまなキャラクター達による想いのぶつかり合いを堪能して欲しいですね。
――主人公のレンジャーとしての活躍、特に生態系の調査が物語の中で描かれるそうですが、なぜ生態系調査というテーマをゲームに落とし込んだのでしょうか?
大黒氏:
作品のストーリーラインを考えるうえで、人間社会を動かすに足るリアリティを持った「大きなスケールのある」アクシデントは何か、そして、実際のゲームプレイを通じて解決できそうなものはないか、とアイデアを練ったときに成立したのが、「石化現象」という異変でした。さまざまなモノが石になっていくという現象はユーザーがイメージしやすく、かつ主人公の活躍……ゲームプレイによって「元に戻せそうな」ファンタジックな現象だと思ったんです。生態系調査というテーマを用いたのは、「石化現象」を解決するためのアプローチとして適していると考えたからですね。
――今回2つの国が登場しますが、それぞれの違いはどういうものがありますか?
大黒氏:
本作にはアズラル国とビュリオン王国が登場します。もともと関係性の問題はなかったのですが、石化現象が広がる中で、ビュリオン王国の方がより厳しい状況にあります。そのため、ビュリオン王国がこの苦しい状況を打開するために思い切った行動を取ろうとし、両国が緊張関係になっていくという流れです。石化現象の影響度合いに大きな違いがあることが、両国の考え方の衝突につながっています。
――今回の主人公も見た目をカスタマイズできるとのこと。どういった点が変更できますか。
大黒氏:
まずは主人公の設定に基づき、「王子」/「王女」のどちらかを選択できます。そして外見に関して、髪型など、前作と似た項目が、プレイヤーの好きな形にカスタマイズ可能になっています。前作からの違いにつきましては、より細かな設定が可能になっています。
――最近発表されたモンスターの中で、レ・ダウが人気でしたが、どのような立ち位置で登場しますか?
若原氏:
『モンスターハンターワイルズ』でも人気のあるモンスターでしたので、ユーザーの反響も大きかったです。詳細は言えませんが、ユーザーの壁として立ちはだかることになるかと思います。オトモンにも出来ますよ。
辻本氏:
本作はある程度の時期において、『モンスターハンターワイルズ』と開発が並行になっている状況があり、チームメンバーの熱量によって、登場が実現したという経緯があります。他にも『ワイルズ』から登場するモンスターがいますので、楽しみにしていてください。

――オトモンに関連して、前作ではフィールドギミックを解決する用のオトモンと、強いオトモンでパーティーが埋まってしまい、好きなオトモンを連れて行けなかったり、可愛がるアクションが不足していた印象がありました。今作ではその点について工夫はありますか?
若原氏:
ギミック攻略用のオトモンと高いステータスのオトモンでパーティが埋まってしまう点は課題として認識していました。今作では、特にフィールドギミックに関して、「アスレチックライド」を導入し、一体のオトモンでできることの幅を広げています。たとえばレウスはブレスを吐いたり、空中を空を飛ぶことができます。本作では好きなオトモンが活躍できる幅を広げて、長く連れ歩けるようにしたい、という狙いがあります。また、現時点ではお答えできませんが、好きなオトモンのための仕掛けも用意していますので、お楽しみに。
――本作の主人公は王子様/お姫様ですが、『モンスターハンター』で王族と聞くと、わがままな第三王女を思い出します。彼女のようなキャラクター、もしくはご本人が登場することはありますか?
大黒氏:
登場しません。他の関連作との繋がりを深くしすぎると、かえって制約になってしまうという考えがあり、今作は前作との繋がりも一新して開発しています。私たちが作りたいものを全面に押し出して開発していますので、そういった過去のキャラクターは出てこないです。
辻本氏:
『モンスターハンター』全体の取り組みとして、「どこから遊んでも楽しめるタイトル」をテーマとして掲げています。本作は関連タイトルはもちろん、過去作を一切プレイしていなくても楽しめます。
――本作には、前作のマスコットキャラクターであるナビルーの姿が見られませんが、それも「どこからでも楽しめるタイトル」を目指すという理由からでしょうか。
大黒氏:
ナビルーの不在の大きな理由は、今作の主人公が「喋る主人公」になったことです。前作のように、主人公の代弁者になるという役割の必要性は、本作では薄いです。また、ナビルーの振る舞いには「ギャグ」テイストが強かったですが、今作ではシリアスさの中に、「ユーモア」という要素を組み込んでいきたいと考えました。
そして、既存のキャラクターであるナビルーの良いところを薄めることはしたくない。本作からでも楽しく遊んでもらいたいという思いもあり、キャラクターを一新しました。新しいマスコットキャラであるルディは、ナビルーの役割だった代弁者ではなく、レンジャー部隊の一員として、主人公を支える相棒として描かれています。

――戦闘に関して、前作はゲーム内のじゃんけん(真っ向勝負)に勝ち続ければ完封できる内容でしたが、今作はじゃんけんを勝ち続ければ完封できるのか、あるいは相手が行動パターンを変えてくるなどのスパイスがあるのか、お聞きしたいです。
若原氏:
本作もいわゆるじゃんけん……真っ向勝負のシステムは導入しています。モンスターの行動パターンを把握して、適した行動を取る、というシステムですね。これは本シリーズを象徴するシステムであると認識しています。しかし、「行動パターンを把握し終わってしまう」と、戦闘内容が単調になりがち、という点はユーザーの皆様からいただく意見もあり、課題として認識しておりました。
そこで、本作は「気持ちよさが連鎖する」をコンセプトに、「竜気ゲージ」を課題の解決策として導入しました。
「竜気ゲージ」はモンスターの気力を表したゲージであり、0にするとモンスターが疲れてプレイヤーが有利になります。ストック分をすべて削りきると、モンスターがダウンし、大技「シンクロラッシュ」が発動。絆ゲージが上昇して、絆技へ連鎖し、さらに竜気ゲージを削っていきます。また、竜気ゲージを削るには部位破壊が効果的です。部位破壊を行うには適した武器の選択が必要です。このように、ユーザーが筋道だった戦略を立て、それを実現する気持ちよさを本作の戦闘には込めました。さらに言ってしまえば、ゲームを進めていくと真っ向勝負に勝つだけでは勝利が難しくなっていきます。ぜひ新システムを活用して戦闘を楽しんで欲しいです。
――デモ版では、チャタカブラの背中か腕、どちらの部位破壊を優先するかという選択が迫られる場面が登場しました。製品版でもボス戦を中心にこういった場面がよくあるのでしょうか。
はい。どんなバトルも、プレイヤーに「何をを選ぶか」を意識させる形で構築しています。デモ版であれば、「背中を破壊するのか、腕を破壊するのか」といったリスクリターンを突きつけ、プレイヤーに思考させる瞬間を大切にしています。正解に誘導するのではなく、何が自分にとって正解なのかを思考することが、コマンド式戦闘の醍醐味だと思うからです。

――最後の質問です。今作で一番お気に入りのモンスターの絆技の演出は何でしょうか?
若原氏:
(公開範囲における)絆技で言えば、今回試遊でも体験できるトビカガチの絆技です。ユニークで面白い演出も多いですが、トビカガチのような、シンプルにかっこよくて派手な演出がとても面白いと思っています。また、ティオがトビカガチについていけてないコミカルな演出など、キャラクターごとの絆技の演出にもこだわっているので見ていただきたいです。
大黒氏:
質問の趣旨からズレますが、同じモンスターでもパートナーごとで乗るとちょっと演出が変わるなど、細かいこだわりが用意されています。『ワイルズ』から来た初めて見るモンスターがどんな絆技をするのかにも期待していただきたいです。
『モンスターハンターストーリーズ3 ~運命の双竜~』はPC(Steam)/PS5/Nintendo Switch2/Xbox Series X|S向けに、2026年3月13日に発売予定だ。
[聞き手・執筆・編集:Takayuki Sawahata]
[編集:Hideaki Fujiwara]