カプコン新作宇宙アクション『プラグマタ』開発者を突き動かしたのは「既視感のあるゲームにしたくない」執念。延期を重ね、たどり着いた“新しいゲーム”

ついに来年発売となるカプコンの新作『プラグマタ』では延期を重ねる中でどのような開発を経てきたのか。本作の開発陣に合同インタビューを実施した。

カプコンは、SFアクションアドベンチャー『プラグマタ』を2026年に発売予定だ。対応プラットフォームはPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S。

本作はTPSとパズルを組み合わせたアクションアドベンチャーゲームだ。舞台は近未来、夢の素材「ルナフィラメント」を研究する月面施設。連絡が途絶えた施設の調査に向かった「ヒュー・ウィリアムズ」は、月震により仲間とはぐれ重傷を負ってしまうが、アンドロイドの少女「ディアナ」に助けられる。暴走したAI「IDUS」が繰り出すロボットが襲いかかるなか、ふたりは互いに助け合いながら、施設からの脱出を目指す。ディアナのハッキング=パズルと、ヒューのTPSアクションを並行して進める独創的な戦闘システムが特徴だ。

2020年の発表後、数回の延期を経て、ついに2026年の発売が決定した本作。今回弊誌は、東京ゲームショウ2025への出展に先がけて本作を試遊する機会に恵まれた。その後、『プラグマタ』のプロデューサーを務める大山直人氏、エドソ・エドウィン氏と、ディレクターを務める趙容煕氏へのメディア合同インタビューを実施。本稿では、試遊で気になった点や、開発のこだわりを訊いたインタビューの内容をお届けする。


コアゲーマー、カジュアルゲーマー両方が楽しめることを目指した難易度

——本作は「TPSとパズル組み合わせが最大の特徴ですが、片方が得意、片方が苦手な人もいるかと思います。製品版ではどのようなバランスの難易度を目指していますか?また、難易度調整のこだわりがあれば教えてください。

大山直人氏(以下、大山氏):
まず難易度面では、「コアゲーマーの方でもしっかり歯応えを感じる戦闘体験ができること」「カジュアルゲーマーの方でもゲームを楽しんで遊んでいただけること」、この2軸を大切にしてゲームを調整しています。これを具体的にどのようにシステムに落とし込んでいるのかは、発売までにお知らせできればと思っています。

今回の試遊は序盤のステージなので、人によっては簡単に思えるかもしれません。ただゲームが進んでいくともちろん、段階的に難易度は上がっていきます。ちょうどいいストレスを感じる壁があって、それを強化して乗り越えて、ステージをクリアした時に達成感が得られる、というサイクルになるようにゲームを構築しています。

趙容煕氏(以下、趙氏):
皆さんがTGSの試遊でプレイされるものは、初めて『プラグマタ』のTPSハッキングを触る方がちゃんと入り込めるように、全体的に難易度を低くしてあります。敵のスピードも、他のゲームに比べてテンポが遅く感じるかと思いますが、ゲーム後半になっていけばいくほど、スピード感もどんどん上がっていくように調整しています。


コンセプトは「ヒューとディアナの協力」

——今回の試遊では「シェルター」がプレイアブル要素になっていました。シェルターからエリアを選択する流れや探索要素が面白かったのですが、ステージ内の動きやエリア選択において、探索の自由度はどれほどありますか?

大山氏:
ステージは立体的に作っているところが多くて、戦闘だけではなく探索でも、「ヒューとディアナの協力」がコンセプトの1つになっています。たとえばディアナがハッキングして道を切り開いたところを、ヒューがスラスターとかホバーで進んでいったり、エリアが広くて迷ってしまう場合はディアナがスキャンして道を教えてくれたりというような、ふたりの協力が不可欠なようにデザインしています。

エリアは基本的には各ステージを順に進んでいくかたちですが、時には探索し尽くしてないところに戻ってまた強化素材を獲得しに行くとか、隠しエリア・隠しアイテムを探したりといった、「再探索の楽しみ」もご用意しています。

——たとえば新しい能力が加わって今まで行けなかったところに行けるようになるというような要素はあるのでしょうか?

大山氏:
まだ詳細はお伝えできないんですが、試遊いただくと、「あれ、ここってどうなんだろう」と違和感を覚える場所があるかと思います。そういったところを探しつつ、楽しみにしていただければなと思います。

趙氏:
そうですね。詳しい答えは言えないのですが、あるかないかで言うとあります。

——ディアナといえば可愛らしいビジュアルが印象的ですが、ディアナのグラフィックや動きを作る時のこだわりや、ディアナとどのようなコミュニケーション要素が用意されているかを教えてください。

趙氏:
ディアナというキャラクターを作る時に1番気をつけたのは、「リアルな子供らしさ」です。アニメ的な美少女キャラや恋愛相手としてではなく、プレイヤーが守りたくなるような、愛着を感じられる子供らしさにこだわって作っていました。

大山氏:
あざとい可愛さというよりかは、あくまでナチュラルな子供らしい可愛さっていうのがチームの目指す方向になってます。

趙氏:
コミュニケーション要素としては、ディアナとの会話が数々用意されています。会話を通して、ディアナの存在感をしっかり感じられるようなものを目指しています。

大山氏:
普通にシェルター内で話しかけることもできますし、ステージの中で見つけたプレゼントを渡すことによって、ディアナのリアクションを見られるといった要素も作っています。

——ディアナの動きはどのように制作しているのでしょうか?子役や大人の動きをモーションキャプチャーしているのか、それとも手付けなのか。

大山氏:
基本的には子役の起用はせず、チーム内で作っています。

趙氏:
チーム内でもディアナに対する印象はみんなそれぞれ違ったので、チーム全員が納得できるように、しっかり時間をかけて作り込んだところですね。

——試遊では「ステイシスネット」と「ショックウェーブガン」という武器が出てきましたが、ほかにはどんな武器が登場しますか?

大山氏:
今回の試遊のエリアでは、弾数が自動でチャージされる基本的な銃、敵を捕縛するステイシスネット、高火力のショックウェーブガンという、3タイプの武器を用意していました。十字キーで切り替えて使い分けますが、下側の空いている部分、ここにもまた別の武器を装備できるようになります。詳細はまだ言えませんが、ハッキングとアクションの選択肢と戦略性が広がっていくような武器が追加されていきます。

——試遊では、人間型、ドローン型、丸い形をしたロボットの3種類の敵が出てきましたが、製品版ではどれくらいの数の敵が用意されているのでしょうか?

趙氏:
ステージごとに新しい敵がしっかり用意されてるので、そこは楽しみにしていてください。

大山氏:
繰り返し遊んで面白いというだけではなく、ゲームを最後まで飽きずに楽しんで続けられるか、というのも明確な目標のひとつでした。進んでいくにつれてまだまだ新しい遊び、体験が得られるように作っていますので、続報を楽しみにしていただければと思います。


「見たことがないもの」「繰り返し遊べるもの」、2つのこだわり

——これまで延期の中で試行錯誤を続けて、今のTPSとパズルの組み合わせにたどり着いたとのことですが、システムを作る中でここまで満たせなかったら作り直すといった、明確な基準はあったのでしょうか?

趙氏:
大事にしていたポイントの1つとして、「どこかで見たことがあるゲームにはなってほしくない」というのがありました。そこにこだわって試行錯誤するなかで、今のかたちができあがって、そこから開発スピードを上げて今に至るという感じですね。

大山氏:
あと「繰り返し遊んでも楽しめる遊びになっているか」というのは、判断基準になっていたかなと。

趙氏:
そうですね。個人的にゲームを見るときに一番大事にしているポイントでもあるのですが、エンディングを見て終わりのゲームではなくて、あとでもう1回プレイしたくなるような、リプレイ性の高い戦闘システムにしたかったです。ここもこだわりポイントのひとつでしたね。

——延期したメリットとして技術進化があったそうですが、グラフィックやゲームプレイにおいて、具体的にどのような恩恵がありましたか?

趙氏:
一番影響が大きかったのはディアナの髪ですね。開発途中で今のレベルのヘアシミュレーションがインゲーム、リアルタイムでできるようになり、従来より綺麗に表現できるようになりました。

大山氏:
ゲームプレイではディアナの髪の毛ほどの大きな技術進化はないですが、自社のRE ENGINEの方で様々な機能をこの数年でも足していて、それによってゲーム制作自体がやりやすくなったっていうのは、ゲームのコンテンツ量や作り込みに反映されてますね。

——ハッキングは一筆書き的なパズルになっていますが、試行錯誤の過程では、どんなパズルが考えられていたんでしょうか?

大山氏:
実はそもそもパズルではなく、別の手段でハッキングを表現してた時期もありました。ただ、これが具体的にこんなシステムでしたというのを紹介すると、表面上はすごく面白そうに聞こえるんですよ。

実際、試作として部分的にいくつか作ってきて、瞬間的にはすごく面白いゲームプレイができたものもあったんです。ただそれを繰り返して遊んだり、本編の規模で長く遊んだ時に最後まで楽しめるかという観点で頓挫してしまったアイデアがいくつかあります。

それをここでお話すると、話だけ聞くと「そっちのゲームもやってみたい」と思われちゃうんじゃないかなと思うので(笑)今は今の『プラグマタ』を見ていただけると嬉しいです。

趙氏:
ディアナとヒューが融合した戦闘システムというのは、昔からずっとコンセプト自体はありました。じゃあディアナのハッキング能力とは「どういった形にすればいいのか、全体的にどういう遊びにするか」という試行錯誤があって、その中で一番『プラグマタ』にぴったりだったのが、今の一筆書き形式のパズルでした。

——近年は2人専用プレイの作品も人気ですが、今作も2人プレイがぴったりな作品のように感じます。開発中に2人プレイに対応させるというアイデアは出ましたか?

大山氏:
アイデア自体は出てはいたんですけど、『プラグマタ』で大事にしているのが、「新しいゲーム体験を届けたい」というところだったので。アクションとパズルを1人のプレイヤーが同時に操作する忙しさと楽しさに振り切った結果、いまのかたちになっています。

これをもし2人に分割すると、単にアクションをしてる人とパズルを解いている人になって、組み合わせた時の面白さが感じられなくなってしまいます。なのでそこを重視して、1人プレイで楽しめるゲームを作ってます。

——開発当初の情報では『プラグマタのチームは若手の方が多いという風にお聞きしましたが、アクションもパズルも洗練されているなと感じました。実際にはどのような座組だったのでしょうか

大山氏:
若手が多いっていうお話はあるんですが、比率として若手だけで構成されてるっていうイメージではなくて、中堅層だったりベテラン層だったり、幅広い層が存在しています。若手のフレッシュなアイデアも出しつつ、ベテランの技術力で支えるというような、いろんな層が協力するイメージでゲームを作っています。プロデューサーとしても、大山とエドソと『バイオハザード』シリーズの川田の3人で務めているので、若手もベテランも関係なく、いろんな層が関わって作られてきました。

具体的には、『プラグマタ』はカプコンの第1開発という部署で作ってまして、これは『バイオハザード』や『デビル メイ クライ』など、主にアクションゲームを作っている部署になります。そういったシリーズに過去参画してきたスタッフも多く『プラグマタ』のチームに参加していますので、経験が発揮されているかと思います。

——ありがとうございました。

インタビューでは、長い時間をかけて磨き上げてきた本作の完成度への自信もうかがえた。発表時から注目され、いよいよ来年発売を迎える本作がどこまでブラッシュアップされて世に放たれるのか、期待したい。

プラグマタ』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに2026年発売予定。

AUTOMATON JP
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