『サイレントヒルf』開発陣、「ソウルライクではない」と強調。“ソウルライク濫用”状況に苦言

『サイレントヒルf(SILENT HILL f)』の開発者らがメディア取材に対して、「ソウルライク作品ではない」ことを伝えている。

コナミデジタルエンタテインメントは9月25日、『サイレントヒルf(SILENT HILL f)』を発売予定。今月初めには同作の先行プレイの内容がさまざま伝えられ、中には本作を「ソウルライク」ジャンルになぞらえる反応もみられた。そうした中で今回、開発陣が本作がソウルライク作品ではないことを強調している。

本作は、サイコロジカルホラーゲーム『サイレントヒル(SILLENT HILL)』シリーズの最新作。舞台となるのは1960年代の日本の架空の田舎町・戎ヶ丘で、岐阜県下呂市金山町をモデルにしているという。主人公となる学生の深水雛子は平凡な日常を過ごしていたものの、町は突如霧に包まれ、奇怪な何かがうごめくおぞましい場所に変貌することに。町を探索して謎を解き、身を守るために戦うなかで、美しくもおぞましい選択の物語が繰り広げられるという。

8月1日に本作の先行プレイ映像などが解禁される中で、本作のゲームプレイを「ソウルライク」ジャンルとする声も一部見受けられた。ソウルライクといえば、フロム・ソフトウェアが手がけたダークファンタジーアクションゲーム『デモンズソウル』や『ダークソウル』シリーズなどの、いわゆる“ソウルシリーズ”と類似するシステムや世界観をもつゲームに付けられるジャンルだ。ソウルライクとされるゲームにおいては、手強いステージ構成やボス戦、スタミナ制限のあるアクションや、攻撃をタイミングよくパリィしてチャンスを生むといったシステムが共通していることが多い。また休息すると回復アイテムが補充されつつ、敵が復活するといったシステムも特徴のひとつだろう。

では『サイレントヒルf』はどのような点から一部でソウルライクと表現されているのだろうか。本作では舞台設定もあってか銃器は登場しないとみられ、戦闘において用いられるのは近接武器のみ。弱攻撃・強攻撃の使い分けのほか、回避・ジャスト回避・ジャストカウンターといったアクションも存在。攻撃・回避ではスタミナが消費されるため、連発は禁物となっている。そして先行プレイにおいては難易度選択も用意されていたものの、特にボス戦を手強いバランスとするメディアプレビュー記事も散見された。そうした点から、Game Informerなどをはじめ一部メディアやユーザー間では、ゲームシステムやその難易度を「ソウルライク」ジャンルになぞらえる声があがっていた格好だ。

一方、ドイツにて現地時間8月20日から24日にかけて開催されていた大規模ゲームショウ「gamescom 2025」に出席した開発者らは本作が「ソウルライク」ジャンルとは異なることを強調している。プロデューサーの岡本基氏が米IGNの取材に対して伝えるところでは、本作の戦闘システムはソウルライク作品ではなく、過去の『サイレントヒル』シリーズにあったシステムから多く引き継がれているという。

岡本氏はたとえばスタミナの概念については『サイレントヒル3』にも存在していたと紹介。また『サイレントヒルf』においては、『サイレントヒル4 ザ・ルーム』におけるチャージ攻撃を彷彿とさせる、集中ゲージ最大で放てる「渾身の一撃」システムがあることにも言及している。ソウルライクジャンル特有のシステムはなく、あくまでシリーズ過去作や長らくアクションホラーゲームに採用されてきたシステムを踏襲しているかたちのようだ。

そして岡本氏は、昨今ではスタミナゲージや回避といった要素だけでソウルライク扱いされがちであるとも言及。ただ同氏としては、そうした風潮を「不誠実なラベル付けだと考えている(And I think it’s a label that’s a little bit disingenuous)」そうだ。本作についてもソウルライクではなく、アクションホラーゲームであると強調している。

なお本作の開発はNeoBards Entertainmentが手がけており、同スタジオにてディレクターを務めるAl Yang氏も同様の発言をおこなっている(PCGamesN)。同氏もソウルライクというジャンル名が濫用されていると考えているそうだ。また同氏は、高難度のボス戦があるからといって自動的にソウルライクになるわけではないとの見解を説明。確かに手強い難易度ではあるものの、『サイレントヒルf』にはソウルライクジャンルの要素が揃っているわけではないそうだ。あくまで一般的なアクションゲームを想定して開発されているという。

ちなみに「ソウルライク」というジャンル名が濫用される状況については、ユーザー間でもしばしば話題にのぼってきた。たとえばSteamではユーザーが作品にタグ付けをすることが可能であり、ソウルライク要素のあまりない作品にも「ソウルライク(Souls-like)」タグがユーザーによって付与されたとみられる事例が多くある(関連記事)。またソウルライクは人気ジャンルであり、ユーザーによるタグ付けだけでなく、作品によっては販売者側が作中の一部要素を誇張するようなかたちで設定している可能性もある。

とはいえソウルライク作品を構成する要素はさまざまあり、名乗るにあたって必要な条件が明確に存在するわけではない。いずれにせよ、ソウルライクとは公言されていないゲームについては、開発者がソウルライク作品として意図していない可能性はある。プレイヤー側で作品にどのような印象をもつのかはもちろん自由ではあるものの、発売前に本来の作風と違った“ラベル”が付けられる状況には開発者にとって懸念にも繋がるのだろう。


『SILENT HILL f』はPS5/Xbox Series X|S/PC(Steam/Epic Gamesストア/Microsoft Store)向けに発売予定だ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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