即販売中止ゲーム『The Day Before』開発元、「詐欺呼ばわり」に訴訟提起も、裁判所に全面却下される。ほとんど門前払い

『The Day Before』の開発元であったFNTASTICがロシアのメディアYakutia.infoを相手取って提起していた訴訟が、全面的に棄却されていたことが明らかになった。

The Day Before』の開発元であったFNTASTICは今年3月、ロシアのメディアYakutia.infoを相手取る訴訟を提起していた。同作を巡る一連のトラブルに対し、同メディアが「詐欺」といった表現を用いて報じたことなどに対する訴えであった。今回、FNTASTIC側の訴えが全面的に棄却されたことが明らかになっている。

『The Day Before』はパンデミック後のアメリカ東海岸を舞台とするオープンワールドサバイバルMMOと標榜されていた。2021年1月に発表されたのち、幾度も発売延期を重ねながらも2023年12月8日にPC(Steam)にて早期アクセス配信開始。しかしサーバー問題や品質面などの課題を数多く抱えていた点や、「MMO」と掲げながらも実際のゲームプレイが脱出型PvPvEシューターであり品質的にも課題が山積みであった点などに多くの不評が寄せられる結果となった。

『The Day Before』


そうした中で開発元のFNTASTICは、同作発売から間もない同年12月12日にすぐさまスタジオを閉鎖し『The Day Before』の開発を中止すると発表。あわせてSteamでの本作の販売も停止され、購入者への返金もおこなわれた。

そんなFNTASTICは2024年9月に、閉鎖されたはずのスタジオを再始動すると表明。翌10月にはクラウドファンディングキャンペーンを実施して失敗していたものの、ゲーム開発自体は続けているようだ(関連記事)。

そしてFNTASTICは今年、同社についてYakutia.infoが報じた2本の記事の内容を巡り、現地裁判所に訴訟を提起していた。該当する記事でYakutia.infoはFNTASTICの動向について、「スキャンダラスな開発元が評判を回復しようとしている」といった見出しで報道。このなかでは同社の過去の活動について「скам(scam/詐欺)」といった表現と共に言及されたほか、「『The Day Before』においてほかのゲームのメカニクスが借用されている」といった説明がおこなわれていた。

Yakutia.infoが報じた記事


この点に対してFNTASTICが抗議をおこない、Yakutia.infoは記事の表現を変更することになったようだ。しかしFNTASTIC側は表現の変更では納得せずにYakutia.infoに謝罪と記事の削除を求め、同誌が応じなかったことから法廷での争いに発展したかたちであった(関連記事)。

そんな本訴訟について、棄却されたことが今回新たに明らかになった(80 Level)。ロシアの裁判所ポータルサイトによると、FNTASTIC側はサハ共和国仲裁裁判所に向けて現地時間2月26日に訴状を提出し、訴状の不備や書類の不備を経ながらも裁判が進められてきたようだ。ただ7月2日に予定されていた公判は、裁判所側が当事者から提出された証拠を全面的かつ十分に検討する必要があると判断して延期。延期後の7月21日におこなわれた公判にて、FNTASTIC側の訴えはすべて棄却される格好になった。

棄却の理由については本稿執筆時点で公表されていないものの、被告側であったYakutia.infoはさっそく判決について報じている。記事によると、Yakutia.info側は、FNTASTICが過去に自ら過失として認めた内容や、同社に“騙された”といった批判を寄せるユーザーレビューなどを証拠として提出したという。対するFNTASTIC側は同誌の報道が虚偽またはFNTASTICの名誉を棄損する表現であったと示す必要があったものの、十分な立証には至らなかったようだ。結果的にFNTASTICの訴えはすべて棄却となり、現在は同社が控訴するかどうかを待つ状況だという。

『The Day Before』


『The Day Before』を巡る騒動に関して批判的な言及をおこなったメディアに訴訟を提起していたFNTASTICながら、同社の訴えは半年足らずで棄却されることとなった。なお同社は昨年10月のクラウドファンディングキャンペーン失敗後に、アクションホラーかくれんぼ系(prop hunt)ゲーム『ITEMS』を開発すると表明。公式Discordサーバー上では今年2月に開発がコーディング段階に突入し、本格的に進められていることが伝えられている。「劣悪である」と告発されていた労働環境の改善も含め、再始動時に掲げられた方針(関連記事)のもとで汚名返上を果たせるかどうかは引き続き注目されるところだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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