『Battlefield(バトルフィールド)』新作の開発費、「2年前時点で“約500億円以上”も費やされた」との報道。気合入りすぎて難航模様
『Battlefield』シリーズ最新作について、スタッフの証言として海外メディアArs Technicaが伝えるところでは、2023年初頭時点で500億円規模の開発費が投入されていたようだ。

現在「Battlefield Labs」などのコミュニティプログラムも活用されつつ開発中の『Battlefield』シリーズ最新作。Electronic Arts肝入りの作品でもある本作は、2023年初頭時点で500億円以上の開発費用が投入されていたという。Ars Technicaがスタッフ証言として伝えている。
『Battlefield』シリーズは、大規模戦のPvPモードなどを特徴とするFPSだ。最新作では、『Battlefield 3』『Battlefield 4』といった人気作への回帰が図られ、現代戦が描かれるという。開発は、Battlefield Studiosとして4つのスタジオが分担。Electronic Arts の子会社DICEおよびRipple Effectのほか、シングルプレイキャンペーンは現在Criterion Gamesが手がける。さらにリメイク版『Dead Space』を手がけたMotive Studioも開発に携わっている。
そして現在はコミュニティテストプログラム「Battlefield Labs」を通じ、『Battlefield』の最新作の開発が進められている。「Battlefield Labs」にてテスターとなったユーザーは新作のコンセプトやメカニクスをテストしてフィードバックを送ることができ、開発において積極的にユーザーの声が取り入れられているようだ(関連記事)。
Ars Technicaが、『Battlefield』最新作に携わるElectronic Artsスタッフおよび元スタッフの証言として伝えるところによれば、本作には膨大なリソースがつぎ込まれているのだという。具体的には、「Glacier」のコードネームで呼ばれる『Battlefield』最新作の開発は、『Battlefield 2042』のリリースから数か月後に始まったようだ。
『Battlefield 2042』はパフォーマンスの問題や多数の不具合が指摘され、Steamユーザーレビューで「やや不評」ステータスとなったり、Metacriticにてユーザースコアが10点満点中2点台を記録したりなど、苦しい立ち上がりとなっていた(関連記事)。さらに同作はそもそも正式リリースが1か月ほど延期されていた。しかし同作スタッフいわく、実際にはこの延期はほとんど意味がなく、現実的な観点で、半年ほど延期しなければならない状態だったという。

当時すでに次回作として「Glacier」のプロジェクトが動き出しており、『Battlefield 2042』での失敗を糧とするためにポストモーテム(事後検証)もおこなわれたという。また『Battlefield 2042』が苦戦する一方で、バトルロイヤルモードが導入された『Call of Duty』や『フォートナイト』の好調ぶりが伝えられており、これに対抗するために、EA内部では多額の投資がおこなわれ、“一定期間で1億人プレイヤー突破”を目標として開発が進められたとのこと。なお取材に応じたEAスタッフによれば、シリーズ作品でもっとも成功した作品とされている『Battlefield 1』のプレイヤー数でも同じ期間でのプレイヤー数は“せいぜい3000万人より多いくらい”とのこと。つまり「Glacier」は、『Battlefield 1』の3倍ほどのプレイヤーを集めることを目指して制作されていたわけだ。
そのため、「Glacier」には多数のモードを盛り込む方針になったそうだ。たとえばシングルプレイヤーのキャンペーンモード、コンクエストなど『Battlefield』シリーズにて代々提供されていたマルチプレイ用モードだけでなく、新無料プレイモードとなるGauntlet、『バトルフィールド 2042』でも導入されたコミュニティコンテンツ用モードのPortalや、基本プレイ無料となるバトルロイヤルモードの実装が検討されていた。

しかしそうした「てんこ盛り」の制作を進める中で予算も膨れ上がったようだ。2023年初頭にはプロジェクト出発時点の予算計画を大幅に超え、4億ドル(約575億円・以下いずれも現在のレート)以上の予算になっていたという。さらに「Glacier」のキャンペーンモードを手がけていたRidgeline Gamesは2024年2月に解散。先述の通り、シングルプレイキャンペーンはCriterion Gamesに引き継がれた。ところが複数の関係者によれば、Ridgeline Gamesに向けた予算はたびたび再配分され、リソースが不十分な状態だったとのこと。
そして進捗状況の適切な確認まで手が回らず、内部レビューなども満足に実施されていなかったようだ。そんな状況下で外部からのレビューがおこなわれて進捗に問題があることが発覚したことで、スタジオ閉鎖という決断が下されたという。引き継ぎがおこなわれたものの引き継げる内容はほとんどなかったといい、実質的にシングルプレイモードについては「一からの作り直し」を迫られたそうだ。
そうして開発が難航していたとみられ、シングルプレイモードについてはCriterion GamesとMotive Studioがタッグで巻き返しを図っている状況もあるのだろう。ただ人員や開発期間が増大したこともあってか、複数の関係者証言によると現在の予測では4億ドルをはるかに超える予算状況になっているとのことだ。
ちなみにゲームの開発費が公表されることは少ないものの、たとえば『The Last of Us Part II』の開発費が約2億2000万ドル(約316億円)と報じられたことがあった(Axios)。ほか、『Call of Duty: Black Ops Cold War』ではゲームのライフサイクル全体で7億ドル(1000億円)以上にもなる開発・運営費が投入されたという。『Battlefield』最新作では先述のとおり2023年初頭の段階で4億ドルが投じられていたとされ、発売までの費用や発売後のサービス運営・宣伝費も含めればAAAゲームのなかでも屈指の高額開発タイトルとなりそうだ。
今回の報道ではいずれもあくまで匿名の関係者証言として報じられている点には留意したい。とはいえ、ただでさえ大型タイトルの開発費が増大するなかで、トラブルもあったことで『Battlefield』最新作の開発費は肥大化している模様。人気シリーズ、かつ前作が振るわなかったこともあってか予算に糸目をつけずテコ入れがおこなわれているとみられ、発売時の品質には注目が集まるところだろう。
『Battlefield』最新作は、今夏に正式発表予定だ。