ゲーム業界で「『GTA 6』なら“定価70ドル(約1万円)の壁”を破ってくれるかも」との期待があるとアナリストが報告。定価最大1万5000円級になるとの推測も
ゲームの定価の設定基準はメーカーによってまちまちではあるものの、近年大型タイトルはいわゆるフルプライスとなる70ドル(約1万円)で販売されている。そうした昨今の定価水準を「『Grand Theft Auto VI』(以下、GTA6)であれば押し上げてくれるのではないか」といった業界人の声もみられるという。
『GTA6』は、Rockstar Gamesが手がける人気オープンワールドクライムアクションゲーム『Grand Theft Auto』(以下、GTA)シリーズの最新作だ。PS5/Xbox Series X|S向けに2025年秋に発売予定。本作の舞台となるのは、米国の架空の州であるレオナイダ州。過去作『Grand Theft Auto: Vice City』などに搭乗したバイスシティをはじめとする街を擁する州であり、シリーズ最大級に進化した規模と没入感が表現されるという。
今回、『GTA6』が大型タイトルの定価を引き上げることを期待する業界人の声が紹介されたのは、Matthew Ball氏が作成した資料だ。同氏はメタバース分野への上場投資信託をおこなうEpyllion社のCEOであり、このたび「The State of Video Gaming in 2025(2025年のゲーム業界の状況)」と題したプレゼンテーション資料の一部を公開。NewzooやIDCといった市場調査会社などのデータをもとにしたというグラフにより、近年のゲーム業界の動向が分析されている。このなかではPCゲーム業界が成長を見せる一方で、コンソール業界やモバイルゲーム業界が伸び悩んでいる傾向も示されている(関連記事)。
このなかでBall氏は一部ゲーム会社の望み(hope)として、『GTA6』の定価が70ドルの壁を打ち破り、80ドル~100ドル(約1万2000~約1万5000円)となることが期待されていると紹介した。また大型タイトルの定価水準の引き上げにより、50ドルのゲームを60ドルに、60ドルのゲームを70ドルにといった風に業界全体のゲームの定価水準が上がることも望まれているようだ。
米国でのゲームの定価といえば、2020年にTake-Two Interactive(以下、Take-Two)が『NBA 2K21』を70ドルで販売して以降、同額のフルプライスタイトルが一般的になってきた。プラットフォームや作品によってまちまちながら、日本国内でも70ドルを基準とした定価水準になったといえるだろう。
なおTake-TwoはRockstar Gamesの親会社であり、『GTA』シリーズの販売元だ。Ball氏の資料を見るに、『GTA6』を機に、再びTake-Twoが業界の定価水準引き上げるのではないかといった期待も業界に生じているのだろう。
あわせてBall氏は、1976年から2024年にかけての米国でのゲームの価格の推移にも言及。2024年のドルに基づく貨幣価値の換算では、ゲーム開発・販売の予算は増大する傍らで、定価は実質的に減少しているという。たとえば2005年には米国でのゲームの定価水準が60ドルに引き上げ。そして2005年当時の物価水準での60ドルは、2024年における約100ドル相当であったという。また2020年に引き上げられた定価水準の70ドルは、2024年における約80~90ドル(約1万2000~約1万4000円)相当であったとのこと。
そして『GTA』シリーズ作品間で比較すると、『Grand Theft Auto IV』の発売当時の定価60ドルは2024年において90ドル相当。『GTAV』の発売当時の定価60ドルは、2024年において80ドル強相当であったそうだ。Ball氏によれば、もし70ドルで『GTA6』が発売される場合、過去のシリーズ作品の価格換算と比較してシリーズでもっとも安い『GTA』になるという。
なお過去の貨幣価値を現在の貨幣価値から正確に換算することは難しく、それぞれの換算はあくまで目安といえる点には留意したい。とはいえ仮に70ドルで『GTA6』が発売されるとするならば、現時点での物価状況や開発費を踏まえると、大型タイトルに見合わない価格帯となる可能性もあるのだろう。
ちなみに大型タイトルの開発・販売に用いられた予算が公表された例として、Treyarch/Raven Softwareが手がけActivisionが販売する『CoD: Black Ops Cold War』は、開発・販売・運営に7億ドル(約735億円・発売当時のレート)もの費用が投入されたことが明らかになっていた(関連記事)。特に近年では大型タイトルにおける予算の肥大化、および回収の難しさを業界の課題のひとつとする見解もあり(関連記事)、今後解決策として定価水準のさらなる引き上げに乗り出す企業は現れるかもしれない。
一部のゲーム会社からは、その先駆けとして『GTA6』での定価水準の引き上げが期待されている状況もあるようだ。世界的なヒットシリーズであり、その新作に強気の定価引き上げがおこなわれる可能性もゼロではないだろう。とはいえあくまで『GTA6』の定価がどうなるかは未知数。2023年12月のトレイラー公開以降、公式からの続報がない状況であり、価格を含めた新情報も期待されるところだ。
『Grand Theft Auto VI』はPS5/Xbox Series X|S向けに今秋発売予定だ。