モバイルゲームをNintendo Switchへ積極移植、異色の活動をするQubicGamesが日本市場本格参入を宣言。なぜそんなことをするのかや日本の印象などを訊いてきた
QubicGamesは2004年に設立された、ポーランドに拠点を置くゲーム会社だ。設立当初は任天堂ハード向けにソフトを開発していた同社は、現在では主にモバイルゲームをNintendo Switchなど他機種向けに販売する、旧作の移植と販売に特化したパブリッシャーとして活動をおこなっている。
そんなQubicGamesが今回、日本市場へ本格的に参入することにしたという。そこで弊誌は同社へメールインタビューを実施。パブリッシュを手がけている作品や、独自路線を貫く同社の販売戦略、日本市場の印象と参入への意気込みなどを訊いた。以下にその内容をお伝えする。
なお、QubicGamesの最近のイチオシタイトルは以下3作品である:
『レオズ・フォーチュン』(eショップリンク)
『Star Trek: Legends』(eショップリンク)
『ホール io』(eショップリンク)
また後述するように以下の3作品を日本ゲーマーには推したいとのこと:
『DEX』(eショップリンク)
『One Strike一騎打ち』(eショップリンク)
『アカネ』(eショップリンク)
幅広い層のユーザーに作品を届けたい
──自己紹介と、QubicGamesの紹介をお願いします。QubicGamesはどんなパブリッシャーなのでしょうか。
Paweł Warzycha氏(以下、Warzycha氏):
QubicGamesのコミュニティ&PRマネージャーのPaweł Warzychaです。QubicGamesはゲーム業界で20年以上の経験を有する、独立したパブリッシャー兼デベロッパーです。我々は楽しく、手軽で、クリエイティブなゲームを、世界中のユーザーに届けることを専門としています。古典的名作から新作タイトルまで、Nintendo Switchを中心にさまざまなプラットフォームへの移植を手がけております。我々の企業としてのミッションは、喜び・楽しさ・創造性といったポジティブな感情をわき起こす作品たちで、プレイヤーをつなぐことです。
──QubicGamesは20年以上の歴史をもつとのことですが、設立当初はどういった活動をおこなわれていたのでしょうか。
Warzycha氏:
QubicGamesの設立当初は、ニンテンドーDS向けのソフト開発をおこなっていました。革新的でユニークな作品をつくるべく、実験的なゲームプレイメカニックの構築に励んでいました。その後Nintendo Switch向けに開発した『ロボノーツ』と『アストロベアーズ』は人気を博し、当社の歴史における大きなマイルストーンとなりました。当時の経験は、任天堂と協力しながらゲームを制作し世に送り出すという、現在へ至る事業の礎になっています。
──近年は『レオズ・フォーチュン』や『ホール io』など、もともとモバイルゲームとして開発されたタイトルを、Nintendo Switchなど他機種へ移植しているようですね。なぜそういった事業を手がけるようになったのでしょうか。
Warzycha氏:
当社の理念は「幅広い層のユーザーに多様で高品質なゲームを提供する」というもので、こうした作品の移植はその理念に基づいています。『レオズ・フォーチュン』や『ホール io』は単なるモバイルゲームではなく、独自の魅力をもつハイクオリティな作品です。たとえばApple Arcade向けに配信されている『レオズ・フォーチュン』は、とても芸術的なグラフィックをもつ、野心的な作品です。また『ホール io』はシンプルで魅力的なゲームシステムを備えており、世界中に何百万というプレイヤーを有しています。さらに移植の際は、作品をコンソールゲームにふさわしいプレミアム品質に引き上げることで、ゲーマーたちに新鮮で没入感ある体験を提供することを心がけています。
──直近でリリースした作品について、詳しく教えてください。
Warzycha氏:
もちろんです。三本の新作についてご紹介いたします。
『レオズ・フォーチュン』:
本作の主人公のレオは、ターコイズ色のふわふわとした毛玉です。彼は風変わりなエンジニアで、しゃべり方には癖がありますが、発明品により巨万の富を得ています。ところがある日、謎のドロボウの犯行により、レオの財宝は一瞬のうちに盗み去られてしまいます。プレイヤーはレオを操作して、この謎めいたドロボウの正体を明かしお宝を取り戻すため、冒険に出ることになります。ゲームプレイはジャンプアクションとなっており、物理ベースのパズルを解いたり、トラップを避けたりしながら冒険します。深い森や砂漠、雪の降る山など、美しい環境での冒険が楽しめます。
『Star Trek: Legends』:
本作は人気作「スター・トレック」を原作とするゲーム作品です。Tilting Pointが制作を手がけています。 Nintendo Switch/PS/Xbox向けに、昨年12月25日に配信開始いたしました。本作はチームベースRPGで、プレイヤーはシリーズおなじみのキャラクターたちでチームを結成し、ときに同盟を築き、また戦術的な選択を行うなどして、広大で危険な銀河を冒険します。「スター・トレック」シリーズのファンから新規ユーザーまで、幅広い方に楽しんでいただける作品です。
『ホール io』:
本作は成長するブラックホールを操作して、あらゆるものを飲み込みながら巨大化していくアクションゲームです。シンプルながら中毒性のあるゲームプレイにより、本作はすでに世界中のプレイヤーの心をつかんでいます。コンソール版はオリジナル版よりさらに進化しており、より洗練された楽しい体験を日本のゲーマーにお届けできることを大変嬉しく思っています。
収益性と手に取りやすさのバランス
──旧作の移植を専門に手がけるというのは、興味深い戦略です。それぞれのゲームは価格も安いですが、どのように利益をあげているのでしょうか。
Warzycha氏:
旧作を最新コンソールへ移植して新たな層のプレイヤーに届けるというのは、当社の戦略のカギとなる考え方です。我々はすでに人気を獲得し、その魅力が証明されているタイトルを選び、それぞれの機種に最適化してユーザーに届けることに集中しています。
販売する際に価格を手ごろな水準としているのは、より幅広い層のプレイヤーに作品を届けることで、安定した収益を得ることを目指しているからです。重要なのは、価格をプレイヤーと当社のビジネス双方にとって最良の利益を生むように設定すると同時に、すべての人がゲームにアクセスできるようにすることです。開発と移植のプロセスを合理化し、業界パートナーの広範なネットワークを活用することで、そうした収益性と手に取りやすさのバランスを取っています。
──ほかのパブリッシャーとはまた異なるやり方をされていますが、どういった考えから戦略を展開しているのでしょうか。
Warzycha氏:
当社の戦略は、それぞれ創造的でプレイヤーの体験を重視している、多彩なタイトルを展開することです。ラインナップにおいては量より質を重視しており、リリースするすべてのタイトルが当社の価値観である「楽しさ」「アクセシビリティ」「革新的」に合致していることを確認しています。
また業界内のパートナーシップも重視しており、才能あるデベロッパーや他のパブリッシャーと協力することで、ユーザー層を広げています。レトロな名作や新しいインディーズ作品、ニッチなジャンルなどさまざまな作品を打ち出すことで、当社のブランド・アイデンティティを維持しながら、幅広い層のプレイヤーへリーチしています。
──これまで150作以上のパブリッシュを手がけてきたそうですね。カジュアルゲームを中心に非常に多くの作品を手がけていらっしゃいますが、販売するタイトルはどのように探しているのでしょうか。またデベロッパーとはどのように関係を築いていらっしゃいますか。
Warzycha氏:
たとえば現在当社より発売中のタイトルには、ゲームイベントでの偶然の出会いをきっかけに始まったものもあれば、開発者コミュニティ内で紹介されたことから始まったものもあります。我々は常に、創造性にあふれ人気を集める、優れた作品を探しています。イベントに参加して直接スカウトしたり、こちらからデベロッパーへ働きかけたり、あるいは向こうから問い合わせが来たりと、作品ごとに販売へ至る経緯はさまざまです。
我々のネットワークは、開発者との相互尊重の上に築かれており、小規模なチームやインディーズのクリエイターと提携して、彼らのビジョンを実現することも少なくありません。パブリッシュや移植というのは開発元との共同作業であるため、その過程で築き上げる信頼関係を大切にしています。
──モバイルゲームとコンソールなど他のプラットフォーム間で市場の傾向の違いなどは感じますか。各プラットフォーム向けに販売する際は、それぞれ販売戦略を変えているのでしょうか。
Warzycha氏:
そうですね、各プラットフォームには大きな違いがあります。たとえばモバイルゲーム市場では、一回のゲームプレイが短時間で終わる、手軽な作品であることが重視される傾向にあります。対してコンソールやPCのタイトルには深い没入感が求められ、よりニッチな層や熱心なゲーマーがターゲットになっていることが多いです。
各市場の傾向の違いに基づき、マーケティング戦略も大きく変わってきます。モバイルゲームの場合はアプリストアでの露出が鍵となり、ストアランキングなどパフォーマンスベースのマーケティングに適合する必要があります。一方コンソールやPC市場の場合は、ファンコミュニティやインフルエンサーといった存在がより重要になり、作品の価値を高めるブランディング戦略が求められます。各プラットフォームには独自の強みがあるため、我々はそれぞれのユーザーの期待に沿うように、アプローチを調整しています。
──ゲームを他のプラットフォームに移植する際に、特に配慮している点を教えてください。
Warzycha氏:
ゲームを異なるプラットフォームへ移植する際は、まず作品をそれぞれの媒体の操作方法に適応させる必要があります。ユーザーインターフェースや操作性を向上するためには、才能ある開発チームとの協力体制や、プレイヤーからのフィードバックが欠かせません。パフォーマンスを最適化し、洗練された体験を保証することも重要です。
またモバイルゲームをコンソールへ移植する際に重要なのは、プレイヤーに始めからコンソール向けに作られたゲームのようだと感じてもらえるようにすることです。そのためにはたとえば少額課金要素のような、モバイルゲームらしさを醸し出す要素はできるだけ排除する必要があります。
──QubicGamesはUntold Talesなど、ほかのパブリッシャーらとグループを組んでいるそうですね。パブリッシャー同士がグループを結成するメリットはどんなものがあるのでしょうか。
Warzycha氏:
他社と協力関係を築くことにより、我々は各社のリソースや専門知識を共有し、ユーザー層を拡大することができます。各社の独自のアイデンティティを維持しながら、Untold Talesのような他のパブリッシャーと協力することで、我々は異なる市場、ジャンル、開発ラインの活用が可能となっています。
グループ内の各社にはそれぞれ得意分野が存在し、たとえばUntold Talesはストーリー重視のゲームに重点を置いています。一方当社QubicGamesはカジュアルで楽しく、ファミリー向けのゲームを得意としています。当社の主な強みは、移植からオリジナルタイトルの開発まで多様なプロジェクトを請け負うことができ、一貫して高いクオリティの作品を提供できる汎用性にあります。各社が団結することでシナジーが生まれ、プレイヤーや、ひいてはゲーム業界全体の利益になっていくと考えています。
日本市場は、とても刺激的な地域
──ラインナップには日本向けに販売されている作品とそうでない作品がありますが、ローカライズするタイトルはどのように決めていらっしゃるのでしょうか。
Warzycha氏:
ローカライズ実施の決断は、そのゲームのジャンルや文化的な関連性、市場の需要などに基づいています。判断の際はタイトルが日本のユーザーにとって魅力的かどうかを注意深く分析し、プレイヤーの嗜好やトレンドに合致しているかを確認します。ローカライズのコストを正当化するような、有意義なリターンを期待できるかどうかが判断基準です。言語の壁を越えた、普遍的なテーマやゲームプレイのメカニズムがあれば、ローカライズの有力な候補となります。いざローカライズの実施が決まれば、ただ単にテキストを翻訳するだけでなく、現地のプレイヤーに深く響くようなゲームに仕上げます。その際はクオリティの担保が鍵となります。
──QubicGamesが過去に手がけたゲームの中で、日本で特に人気だったものはなんですか。また日本のゲーマーにオススメしたいタイトルもありましたら教えてください。
Warzycha氏:
サイバーパンク・アクションRPG『Dex』は、その魅力的なストーリーと重厚な世界観により、日本でも熱狂的なファンを獲得しています。格闘ゲームファンには、ミニマルながら独特の雰囲気で高度な駆け引きを体験できる、和風一撃死対戦アクション『One Strike一騎打ち』がおすすめです。また近未来の日本を舞台にしたアクションゲーム『アカネ』では、無限に現れるヤクザの敵に立ち向かう、激しいバトルが楽しめます。これらのタイトルは当社のカタログの多様性を示すものであり、ユニークな体験を求める日本のゲーマーに最適です。
──日本市場にはどのような印象をお持ちですか。今後日本向けに力を入れていく予定はあるのでしょうか。
Warzycha氏:
日本市場はゲームに対して非常に情熱的で目が肥えており、クリエイティビティとディテールへの深い理解があると感じています。日本のゲーマーは、ハイクオリティなゲームプレイと、ユニークで芸術的な表現の両方を高く評価するため、我々にとっても刺激的な地域です。
今後当社は過去の人気作から新作まで、日本人の嗜好に合ったタイトルをより多くリリースすることで、日本市場における当社のプレゼンスを拡大していきたいと考えています。また日本のデベロッパーとのコラボレーションも模索しており、当社のグローバルな視点と、彼らの文化的な専門知識を融合させたゲームの制作も目標のひとつです。
──日本のプレイヤーに向けてメッセージをお願いします。
Warzycha氏:
豊かなゲーム文化と熱狂的なプレイヤーを有する日本市場に、私たちのゲームをお届けできることを大変嬉しく思います。私たちの目標は、皆様の心に響くゲームを提供し、ジャンルを超えて思い出に残る体験を提供することです。あたたかい歓迎に感謝すると同時に、皆さまに私たちの作品を楽しんでいただけることを願っております!
また日本市場への本格参入を記念して、Nintendo Switch向けの多くのゲームを大幅割引価格で提供する特別プロモーションを開始しています。詳しくはqubicgames.com/jpをご覧ください。ぜひ当社のカタログをご覧いただき、お気に入りのゲームを見つけてください。この機会をお見逃しなく!
──ありがとうございました。