カルト的人気ゲーム『ファタモルガーナの館』、中国の大都会に“ファンメイド広告”が突如出現。ファンの強火応援に、開発者はビビりつつ感激

NOVECTが手がける『ファタモルガーナの館』について、作中のキャラの「ファンアート」が、中国・上海の大都市のビル看板に掲出された。ファンが自費で広告出稿したとみられ、開発者の縹けいか氏は驚きと感激を伝えている。

本作は、謎の館を巡るヴィジュアルノベルゲームだ。本作の主人公は、ある時気がつくと古ぼけた屋敷にいた。翡翠の目をした女中は主人公を旦那さまと呼ぶが、彼女のことはおろか自分自身についてすら思い出せない。そんな記憶喪失の主人公に対し、女中は屋敷で起こった数々の悲劇を見せる。プレイヤーは主人公の視点から、時代や登場人物の異なる4つの悲劇を目撃。館の謎も交えつつ、悲劇と絶望の西洋浪漫サスペンスホラーが描かれていく。

本作を手がけたのはNOVECT（旧Novectacle）。本作のシナリオ・ディレクションを務めた縹けいか氏が代表を務めるレーベルだ。今回同氏はXアカウントにて、中国のSNSユーザーが報告したとみられるイラストと写真を紹介。イラストの方はファンアートだそうで、写真を見るとこのファンアートが大きな看板となって掲出されていることがわかる。

縹けいか氏によれば上海の商業施設「百联ZX」の屋外看板だそうで、なんとファンが自費で出稿したようだ。あわせて同氏はパブリッシャーから教えてもらった情報として、百联ZXを別の角度から確認できる写真を紹介。こちらはアトラスが手がける『メタファー：リファンタジオ』の発売当時の写真となっており、同作の広告が上述のファンアートが掲出された看板に出稿されていたことがわかる。

ちなみに百联ZXは、上海市のランドマークである南京路歩行街に位置する、アニメ・コミック・ゲーム・小説（ACGN）の文化を特色とするショッピングモールとのこと（上海国際サービス）。Web上では“オタクビル”といった俗称やその規模の大きさを紹介するユーザー投稿も散見され、ゲームの宣伝場所として一等地といえそうだ。基本的には企業向けの広告枠とみられ、出稿には値が張ることだろう。

そんな百联ZXに掲出されたファンアートは、『ファタモルガーナの館』の登場人物であるモルガーナの誕生日を祝うイラストだ。モルガーナは1月7日が誕生日であり、昨日掲出されたのだろう。掲出の知らせはすぐさま開発者である縹けいか氏のもとに届き、同氏に大きな驚きをもたらした様子だ。同氏は、ファンによる“推し応援としての広告出稿”が稀におこなわれることは知っていたそうだが、「まさか自作品で起こるとは！」と驚愕と感激を綴っている。

なお『ファタモルガーナの館』といえば、2023年11月にSteamだけで売上が10万本を突破したことが報告されていた（関連記事）。この際に縹けいか氏は、熱意ある口コミが徐々に広がり、ボランティアとして翻訳してくれるファンによって対応言語が増え、世界中で親しまれていることが大台達成に繋がったと述べていた。日本語だけでなくグローバルにファンからの熱い支持を受けていることが、今回の中国での“ファンメイド広告出稿”のような不思議な現象の背景としてあるのだろう。

ちなみに縹けいか氏が述べるように、ファンが自費で広告を打ち出すという一風変わった応援は過去にも存在。特に韓国や日本ではアイドルの応援広告について、ファンが単独あるいは団体で出稿する事例は多く見られる。またゲームにおいては昨年、『シェンムー』シリーズの新作開発を後押ししたいという狙いから、ファンコミュニティがアメリカ・ニューヨークのタイムズスクエアに広告を出稿し、話題を博したことがあった（関連記事）。今回の『ファタモルガーナの館』を含め、ゲームにおいてもファンの並々ならぬ情熱が開発元・販売元にサプライズをもたらすケースはあるようだ。

『ファタモルガーナの館』はPC（Steam/GOG.com/DLsite）向けに配信中だ。また外伝などを収録した『ファタモルガーナの館 -DREAMS OF THE REVENANTS EDITION-』が、PS4/Nintendo Switchに向けて発売されている。

またNOVECTでは完全新作『プロジェクトコード“M”』が開発中（関連記事）。引き続き、こちらの続報にも注目したい。