Paradox Interactive内のレーベルParadox Arcは9月27日、Game Riverが手がける『Mechabellum』を正式リリースした。『Mechabellum』は、メカ軍団を指揮して戦う、オンライン対戦対応のオートバトル・戦略ゲーム。対応プラットフォームはPC(Steam)。ゲーム内は日本語表示に対応している。
本作の舞台となるのは植民地化が始まったはるか遠い星、ファー・アウェイ。プレイヤーは小型メカや戦車、空中戦艦などさまざまなユニットで自軍を結成。指揮官となり、1対1、もしくは2対2で、敵プレイヤーとの戦闘に挑むこととなる。
本作はいわゆる「オートバトラー」と呼ばれるジャンルのゲームとなる。ラウンドごとにプレイヤーは、自陣にてユニットの配置やアップグレードをしながら、相手プレイヤーと戦闘を行なう。戦闘は自動で進行。一方のユニットが全滅すると1ラウンドが終了となる。残存ユニットに応じて相手のHPにダメージが与えられ、新たなラウンドへ移行。そうしてどちらかのHPがゼロになるまでラウンドを繰り返していく。
筆者は以前、早期アクセス配信中の『Mechabellum』をプレイし、本作の持ち味を紹介した(該当記事)。記事では、相手の構成を読み取り、カウンターを取り合う楽しさや、対戦だけに留まらない幅広い楽しみ方について解説した。その後の本作の大きな変化として、正式リリース時のアップデートでランクシステムが追加された。このランクシステムでは、クイックマッチの勝敗で「戦闘力」という数値が上下に変動。約3か月間の1シーズンでどれだけ勝利を重ね、戦闘力を上げることができるかを競うシステムとなっている。
また、戦闘力は一定数上がるごとに、シーズンポイントなどのアイテムを入手することができる。集めたシーズンポイントは、シーズン限定のエモートやスキンと交換が可能。普段はほかのゲームでもランクマッチなどの競技性のあるモードをあまり遊ばない筆者。とはいえ本作は友人と一緒に遊ぶことが多いため、「かっこいいスキンをみんなに見せつけて自慢してやろう」といった軽い気持ちで、クイックマッチを始めることにした。早期アクセス配信から遊んでいたこともあり、腕前にもある程度自信はあった。しかし筆者はすぐさまそんな思い上がりを打ち砕かれることになった。ただ、険しく乗り越えるべき壁だらけの道の末に、これまでにないほど“ランクマッチ”にのめり込む自分を見つけた。
ユニットの理解力=強さ
筆者もクイックマッチを始めたてのころは、難なく勝利を重ねることができた。本作のクイックマッチは戦闘力の近いもの同士がマッチするシステムとなっているので、序盤は自然と初心者プレイヤーと当たりやすい。筆者は戦闘力こそ低いものの、正式リリース前からソロで遊んだりフレンドとプレイしたりしていたので最低限戦闘のイロハはわかっていた……つもりであった。
ところが、少し対戦を重ねるとあっという間に連敗し、その認識を改めた。今まで自分が本作をいかにカジュアルに遊んでいたかを気づかされたのだ。最初に直面した自身の弱さが「ユニットに対する理解の乏しさ」である。本作は盤面や直前の戦闘を観察して、強いユニットを理解することが必要となる。勝利している場合は強いユニットを活かし、敗北している場合は相手の強いユニットへの対抗策を考えるゲームだ。しかし今になって思い返すと、筆者はいちど強いと感じたユニットは、状況に関わらずついひいきして何度も使ってしまいがちであった。ひいきユニットへの対策を取られるだけで、後はあっさりと敗北に繋がっていた。
筆者がお気に入りだった“愚策”の一例を挙げよう。本作には低コストで購入でき、試合序盤からも使うことになるユニットとして、「マークスマン」と「アークライト」の2体が存在する。どちらも遠距離からの攻撃を得意とするユニットだが、マークスマンは攻撃力が高く一撃が強烈。2〜3体配備すれば試合後半に出ることになる大型ユニットにも有利を取れるほどには強い。なので筆者はアークライトには目もくれずマークスマンをいたく気に入った。手っ取り早くて高火力。負ける気がしない。
また、本作のユニットには経験値があり、ユニットを倒すごとに経験値がもらえ、一定に達するとコストを支払ってステータスを上げる「昇格(レベルアップ)」が可能となる。試合後半に敵が強力なユニットをバンバン出してくるのを見越して、マークスマンを序盤からしっかり育てるべく筆者は序盤からマークスマンをどんどんと配置していった。戦いとは、常に二手三手先を読んで行うものだ。
しかし、マークスマンは攻撃力こそ高いものの、攻撃速度は遅く、加えて単体に対してしか攻撃が出来ない。大量に配備したマークスマンは、「クローラー」や「ファング」といった複数体で隊列を組む小型ユニットにあっさり取り囲まれ、溶けていった。そして上手く対策もとれず、試合序盤の采配ミスにより、試合後半までズルズルとダメージを与えられていった。
この敗北を受け、筆者は考えを改めた。このゲーム、マークスマンを並べるだけでは勝てない。そうして集団の小型メカに対応できるユニットをいろいろ試した時、以前は眼中になかったアークライトがひときわ輝いた。アークライトは攻撃力こそそこまで高くないものの、攻撃速度が早いうえ、一撃が範囲攻撃になっているのだ。なので集団で動き体力の少ない小型メカをあっさりと吹き飛ばしてくれる。そしてコストがゲーム内でも一番低いクラスなので、正面端や、自陣横からの不意の攻撃を受けた際に安価で対応しやすいという強みもある。火力の高さで試合終盤までじっくりと活躍できるマークスマン。スピードと安さで試合序盤から中盤に汎用性が高いアークライト。この2体を戦況を通して使い分けることで、試合序盤の有利を少し上手に取れるようになっていた。
戦闘前の準備も大事
ようやくユニットごとの特性や強みを理解しはじめ、試合を少しコントロールできるようになってきた筆者。気持ちに余裕も出てきて、本作の別のシステムにも目を向け、理解を深めることとなった。それがテックのアップグレードだ。ユニットにはステータスが上がる昇格だけでなく、特性を強化、もしくは改造できるアップグレードが可能。たとえば先ほど挙げたマークスマンとアークライトには、射程距離を上げたり、攻撃がヒットすると相手のステータスを一時的に下げたりといったアップグレードが可能。そしてこのアップグレードはコストさえ払えば経験値を積み立てる必要もない上、そのユニット全機に適応される。なのでたくさん配置したユニットほど、テックの恩恵を受けやすいというわけだ。
また、テックは単なる強化だけでなく、ユニットの特性自体を大きく変えるものも存在する。例を挙げると、チャージしたキャノン砲を発射する「スコーピオン」には、包囲戦モードなるテックが存在。これを適用すると攻撃力が低くなる代わりに射程が大幅に伸び、かなりの遠距離からキャノンを発射することができるのだ。このように強化や、特性の変更までさまざまなタイプが存在するテックだが、特に「ライノ」はその影響で戦い方が大きく変わるユニットといえる。
ライノは近接攻撃を得意とする単体ユニットで、移動力と攻撃速度の速さを強みとしている。複数ユニットや瞬間火力の高い攻撃には弱いものの、体力の高い単体ユニットには大きな打撃を与えることができるほか、破壊すると相手のステータスを一定時間下降させられる「タワー」の攻撃にも向いている。相手ユニットが少ない場所に設置すれば、盤面を大きくかき乱してくれるのだ。しかし、不意打ちが決まれば強いものの、設置場所がバレればライノの行く先に複数ユニットや高火力ユニットを配置されあっさりと対策されてしまうという弱点もある。
場所がバレたライノは容易に倒されてしまうが、使わずに腐らせるのも勿体ない。そのため、一度設置したライノの運用方法に筆者は頭を悩ませた。ここで目についたのがライノのテックだ。試合中にアップグレードできるテックは最大4つまでなのだが、テックはユニットごとさまざまなものが用意されており、試合前に自由に付け替えが可能となっている。
早速ライノのテックを吟味しはじめたが、装備していないテックの中に「ファイナルブリッツ」というものを見つけた。このテックはライノが破壊される間際に相手のユニットごと巻き込んだ緊急爆破を行うというもの。随分物騒なテックだが、ものは試しにと装備をさせ、試合に臨んだ。
早速相手の隙をついた配置を行い、盤面を荒らしてもらう。数ターンしてくると、相手が対策にライノ周辺にユニットを配備してくる。普段だったらここで、あっさりライノが倒され、何事もなかったように戦闘が進むが、ファイナルブリッツを装備したライノは違う。ライノが行く先に近寄ってくるユニットたち、猛攻を喰らいながら、目標へ近づくライノ。その歩みもこれまでと思ったその時、ライノが大爆破。爆破に巻き込まれる周囲のユニット。ライノの周りにいた強力なユニットたちはその爆破でライノごと跡形もなく消えてしまった。
これにより、相手の盤面に大きなダメージを与えることとなり、無事勝利を収めることができた。このようにラウンドの進行で使い所がないと思ったユニットも、試合前のテックの選択やアップグレード次第で新たな方向での活躍の機会を作ることができる。ユニットの選択や戦闘中の采配だけでなく、戦闘の振り返りや戦闘前の準備も本作の魅力のひとつ。筆者は、ライノのテックを皮切りにさまざまなユニットのテックを見直し、新たな戦術を考える楽しみにハマっていった。
“最弱ユニット”も使いよう
ユニットの理解度もかなり高くなり、少しずつ勝利を重ねられるようになってきたが、そのぶん対戦相手も強くなる。対人戦に慣れた相手との戦いが増えてきたころに、またひとつ大きな壁が立ちふさがる。それが特大級対ユニットロボット「メルティングポイント」の存在だ。メルティングポイントは、遠距離からレーザー光線を敵に投射する単体ユニットである。
このユニットの恐ろしいところは、レーザー光線が照射されている間少しずつ攻撃力が上がり、最終的にはかなりの火力になるところ。一度そのレーザーのターゲットにされたユニットはどれだけ体力があろうとも、対抗できなければ一気に削られ破壊されてしまう。また、地上だけでなく空にも攻撃が可能なため、空中ユニットでも対策もできない。
そして、もうひとつの恐ろしいところがテックの強力さ。レーザーを当てている間与えたダメージ分体力が回復する「エネルギー吸収」や、レーザーの数を5本にし、複数攻撃を可能にする「エネルギー回析」など、強力なテックが揃いも揃っている。また、レーザーを当てている間は経験値も大きく得ることができるので、昇格もしやすく、置かれただけで圧倒的プレッシャーを与えてくるかなり危険なユニットなのである。
メルティングポイントはプレイヤー間で常に効率のいい倒し方が研究されており、多くのプレイヤーにとっての要注意ユニットといえる。筆者ももれなくその壁にぶち当たった。そんな時、あるユニットが打破のきっかけとなった。それが本作で一番低コストで弱いユニットとされる「クローラー」だ。
普段のクローラーを言い表すなら、「素早く動き回る小さい虫たち」だ。常に複数で素早く移動し、相手にぶつかっていく。しかし、コストも低く移動力も高い分、単体の攻撃力と体力は低めに設定されているため、対策もすぐに取りやすい。試合序盤では範囲攻撃を受けながらも敵ユニットに体当たりといった運用は可能。しかし試合も進むと、敵に到達する前にで気づかぬウチに全滅していることもざらにある。あっさりとやられてしまうのに、敵陣に向かう様子はけなげにも感じられるほど弱々しいユニットだ。
一方でメルティングポイント相手だと話は変わる。このクローラー、複数ユニットで移動が可能かつ移動力も高く、メルティングポイントのレーザーに当たりながらも、懐に潜り込むことができ、かく乱が可能。また、テック「アシッドインプロージョン」をアップグレードすれば、クローラーが倒れたところに酸が発生し、継続でダメージを与えることができる。またクローラーの体力が低いという弱みさえ、先述したメルティングポイントの「エネルギー吸収」の体力回復が微量になるという利点がある。結果として、酸で回復分以上のダメージを削ることができるというわけだ。
筆者はこの作戦を思いつき、早速メルティングポイントの周辺にクローラーを配置。クローラーの後ろには、大きくダメージを与えることができるスコーピオンを配置し、クローラーにターゲットが向いている間に一気に体力を削る作戦だ。この作戦は功を奏し、クローラーにターゲットが向いたメルティングポイントは少しずつ体力が削られ、スコーピオンの数撃で体力が削れ破壊されていった。小型ユニットが特大ユニットを破壊するまさしくジャイアントキリングな作戦が成功したのである。
最弱ユニットかと思いきや、使い方次第で強ユニットへの対策になる。思いもよらないユニットの相性や組み合わせが、意外な成功を生むのが本作の面白いところだ。とはいえ、自分の立てた戦法が、いつも上手くいくとは限らない。対戦相手が強くなるほどフラストレーションもたまる一方、トライアルアンドエラーでその壁を打ち破るのは、かなりの快感がある。
ひとりで悩まなくてもいい
メルティングポイントの壁を乗り越えて以降、本作がさらに楽しくなった。当初の目標であったスキンが取れるほどシーズンポイントは貯められていないが、それでも少しずつ戦闘力をあげ、さらなる強敵と立ち向かっている。また長らく本作をプレイしていると、ゲームコミュニティがかなり盛り上がっていることに気づく。
というのも、筆者は基本的に昼間や深夜など、アジア圏ではあまり人がいないと思われる時間帯にプレイすることが多いが、それでもクイックマッチは30秒以内にマッチを遊べる。また、グローバルチャットでは常にさまざまな国のユーザーがゲームに対して議論しており、ユニットの対策や戦術の共有などが常に行われている。ゲームの機能で言語の翻訳機能も用意されているため、言語の違うユーザー間で議論がおこなわれることもある。まさにグローバルにゲームコミュニティが広がっている点も、魅力のひとつだろう。このほか観戦も気軽にできるシステムとなっており、強い戦術やユニット選びは、チャットや観戦で学ぶことも可能。ぶち当たる壁も多い本作だが、かならずしもひとりで悩みこまなくてもいい。
対戦ゲームでは勝利も楽しいが、敗北の末に成長していくところに面白みがある、と筆者は考えている。さまざまなゲームを遊んできたが、本作で筆者は数多くの「敗北」を通してそんな自分の好みに気づかされた。ギリギリまで追い詰めたと思ったら思わぬ作戦で大逆転負け。お互い体力が3ケタになるほど拮抗した果ての敗北。1ダメージを与えられずに完封されたこともある。そういった敗北はもちろん悔しいが、振り返れば成長するヒントが隠されている。戦闘時はもちろん、戦闘後、そして次の戦闘の前にも成長のチャンスがある。勝ち負けも大事だが、筆者は自分の成長に常に目を向けられる『Mechabellum』が好きだ。今後もたくさん壁に当たることもあるだろうが、その度に発生する成長の機会を見逃さずにいたい。『MechaBellum』はそう思える作品であった。
『Mechabellum』はPC(Steam)向けに配信中だ。