オープンワールド乗り物ゲーム『テラテック・ワールド』は「効率化のジレンマ」に悩まされ続けるサバイバルクラフトゲームだった。どこを重視して乗り物作るか

4Divinityは3月23日、オープンワールド・サバイバル乗り物クラフト『TerraTech Worlds (テラテック・ワールド)』の早期アクセス配信を開始した。本稿では、本作のサバイバル要素とクラフト要素の楽しさについて紹介していく。

パブリッシャーの4DivinityとデベロッパーのPayload Studiosは3月23日、『TerraTech Worlds (テラテック・ワールド)』の早期アクセス配信を開始した。対応プラットフォームはPC(Steam)。早期アクセス版の価格は税込3960円となっている。


『TerraTech Worlds』は未開の惑星を舞台とした、オープンワールド・サバイバル乗り物クラフトゲームだ。本作はソロプレイのほか、最大6人のマルチプレイに対応している。プレイヤーはフリーランスの採鉱家として、自由にカスタマイズ可能な乗り物「テック」を操縦し、惑星を探索する。惑星には鉄や銅、カーボンといった天然資源や、危険な自生植物、惑星内を自走する敵対テックが存在。危険な惑星の資源を収集するために、豊富なパーツでテックをカスタマイズ。さらには素材を加工しアイテムを作れる拠点を制作し、探索を有利に進めるのだ。

本作は2018年に正式リリースされた前作『TerraTech』を根本から再構築している作品だという。『TerraTech Worlds』は惑星で資源を集め、工夫を凝らし、オリジナルのテックを作り上げるという基本的なゲームの流れこそ『TerraTech』と同じ。しかし、本作は、『TerraTech』のキモとなるテックを用いて、本作ならではのサバイバルクラフトゲームとして楽しさに磨きをかけた作品だと感じた。本稿では『TerraTech Worlds』ならではの楽しさをサバイバル要素とクラフト要素に分け、紹介していきたいと思う。


テックなのにサバイバル

本作の最大の魅力は、カスタマイズ可能な車両、「テック」。そしてその存在をサバイバルクラフトゲームのシステムに落とし込んだところにあるだろう。ストーリー上では、プレイヤーはフリーランスの炭鉱家、いわゆる人間だ。しかし、本作には人間の存在は一切登場しない。実質の主人公は、テックそのものだと言っていい。


プレイヤー自身がテックであるため、本作は「プレイヤーが人間のサバイバルクラフトゲーム」とは違うつくりとなっている。まず、本作には体力や空腹といった概念がなく、体力ゲージや空腹ゲージといったものが存在しないのだ。プレイヤーが機械なので当然といえば当然だが、サバイバルというワードを聞くと真っ先に浮かぶような要素がないというのは驚きだ。そのかわり、サバイバルという要素を本作ならではのかたちで思い起こさせてくれた。

本作において、体力の代わりとなるのが、テックに装着されるパーツたち。パーツはレーザーなどの武器、タイヤ、接続パーツなどさまざま。それを自由に組み合わせて思い思いのテックを作り上げることができるのだが、パーツにはそれぞれ耐久度が存在する。敵対するテックなどから攻撃を受け続ければそのパーツは破壊されてしまうのだ。なので、どれだけ屈強なテックを作り出そうが、タイヤや武器が破壊されてしまえば、そのテックは移動も攻撃もできないただの巨大な箱と化してしまう。逆もまた然りで、敵対するテックたちも武器さえ破壊すれば攻撃もできず、ただ周囲を走り回る機械と化すのだ。


パーツは破壊されてしまうとはいえ、回数制限アリで修復が可能となっている。回数制限も、テックヤード(リスポーン地点)にさえ戻ればリセットされるので、せっかく頑張ってカスタムしたテックが二度と戻らないなんてことはないので安心していただきたい。

また、テックはどこでもカスタマイズ可能なため、探索中で拾ったパーツもすぐに着けることができるのも面白いポイントだ。筆者は途中、敵テックからの猛烈な襲撃を受け、パーツのほとんどを破損。タイヤも壊れていたため、逃げるにも逃げられない状態だった。が、ふと、インベントリに敵テックから奪った大量のパーツがあったことを思い出し、その場でテックを再開発。立て直すことに成功し、無事逃亡できた。こうした咄嗟の切り返しで生きながらえることがあるのも本作の面白いところだ。

しかしひとつだけ、絶対に破壊されてはいけないパーツが存在する。それはナビゲーターキャブだ。ナビゲーターキャブとはいわゆるコクピットのようなパーツで、テックを作る際には必ずこれを装着させないといけない。人間でいうところの心臓、もしくは脳のようなパーツだ。どれだけ強い装備を装着しようが、タイヤをいくらつけていようが、このナビゲーターキャブが破壊された時点でテックの機能が停止する。

先頭についた青いパーツがナビゲーターキャブ

それは敵対するテックも同じ。加えて接合部位が破壊、もしくはテックが機能を停止すると、破壊されずに残っていたパーツを入手することができるのだ。つまり、タイヤや武器を破壊すれば、攻撃や移動を止め、倒しやすくはなるものの、そのパーツ自体は手に入らない。ジレンマだ。

そのため、カスタマイズではコクピットをどうやって守るかを考え、戦闘ではいかに被弾を減らし、相手のコクピットにダメージを与えることができるのかが重要となる。この身(パーツたち)が滅ぼうとも、コクピットさえ滅ばなければいい。敵のパーツを奪い、それを取り入れて自分のテックを強くしていく……。このシステム、下手したら人間よりもサバイバルしているかもしれない。


テックだから楽しい、けど悩ましいクラフト

ここからは本作のクラフト要素について紹介していく。本作はテックのカスタマイズだけでなく、探索拠点を作り上げる要素も存在する。前作『TerraTech』でも拠点を作り上げる要素は存在したが、本作はそれをさらに拡大。基地建築ゲームのような拠点づくりが可能となっている。それを支援するように段階を踏んで進められる目標システムがゲーム内にもあるため、それに従えば、自然と拠点は発展していくだろう。

しかし、拠点を発展させるためには、莫大な資源が必要。少しでも効率よく回収したいと思った時に、真っ先に考えられるのはテックのカスタマイズだ。ゲームスタート時のテックには資源回収と攻撃が可能なビームが1つ装備されている。となると、このビームが2つなったら、単純な計算で、倍の効率で資源を回収できるはず。また、タイヤの数を増やしたり、タイヤのサイズを大きくすれば、山道が登りやすく、より探索しやすくなる。そうなると、敵テックからパーツを回収し、自分のテックを強化してから資源を回収したほうが、より効率的となる。

レーザー1つだと攻撃力も素材回収も心もとない

筆者もその考えで、敵地に潜り込み、テックを撃破しパーツを回収。新たなタイヤやレーザーを手に入れ、早速装備させて資源回収に向かった。確かに効率はよくなり、資源が回収しやすくなった。が、当初思っていたほど……2倍の効率では回収できなかった。なぜなら、本作にはレーザーや武器などの装備を使うと消費されていくバッテリーが存在するからだ。バッテリーは負担が多いほど消費も激しくなるので、レーザーを2つにすれば、確かに資源回収スピードは2倍になるものの、バッテリーの消費も2倍となる。そう簡単に効率よく回収させてくれないというわけだ。

となると、欲しくなるのはバッテリー。バッテリーは拠点で作ることができるため、さらなる拠点の発展を目指す。そうなると欲しくなるのは資源。多少よくなった効率で資源を回収しつつ、バッテリーを作成し、早速テックに装備した。これによって当初考えていた2倍の効率で資源回収が可能になった。が、そうなると欲しくなるのはさらなるレーザー。もうひとつ増やせば、さらに効率があがるはず。筆者は早速敵地へと潜り、パーツ回収業務へ。レーザーを手に入れ装備するところだが……。同じ轍は踏まない。事前に大量のバッテリーを作りあげ、テックに大量搭載。レーザーを3つ積んでも耐えられるような状態へと仕上げたのだ。


レーザーを3つ搭載し、いざ資源回収へ向かったのだが、なぜか効率が上がらない。それどころか、二門の時よりも大幅に効率が下がっているような気もする。これはおかしい……と思ってテックを確認。すると、テックにはリアクターキャパシティ、そして温度と重量といったステータスが存在していたことが判明したのだ。

このステータスは、テックに装備を積み込めば積み込むほど上がっていく。接続パーツ程度であればテックにそこまでの負荷はかからないものの、レーザーや銃パーツとなると与えられる負荷は上昇する。筆者のテックにはレーザーが3つ搭載されていることに加え、大量のバッテリーを積み込んだことにより重量が大幅アップ。そのため、少しレーザーを照射すればテックの温度が急激に上昇。オーバーヒートを起こし、回収効率を一気にダウンさせることとなったのだ。

画面左下の温度計が照射し続けるたびに上昇していく。

これに気がついた筆者はすぐさまテックをカスタマイズ。一度レーザーとバッテリーを減らし、温度と重量を下げ、余分なタイヤを減らし、全体的なパーツも減らしながら……。中には装備の消費バッテリーを減らすパーツや、資源を大きく消費するがスピードの上がるパーツなどもあり、それを使いこなせるような新たなカスタマイズを考えねばならない。パーツや資源を回収してはカスタマイズし、また回収してはカスタマイズ……。あまりにもテックの改造に集中していたため、プレイ後見た夢の中でもカスタマイズしていた(これは本当)。それほどまでにテックを見つめて調整している時間は悩ましい。だけどもそれが非常に楽しく、どこか心地いい。

お気に入りのテックはこのように保存し、いつでもクラフトし直せる

さらに拠点拡大していけば、新たなテックパーツも作れるようになる。インベントリを拡大するパーツや、テックのステータスを上げるものもあるため、より良いテックが作りたいのならば、拠点も拡大しなきゃいけない。資源回収、拠点開発、テック改造、また資源回収……。この循環が、悩ましつつも本作らしい楽しさを生み出している。また、テックをアップグレードすればさらなるエリアに向かえるし、そこには新たな資源や強力なパーツを持ったテックもいる。また、カスタマイズした自分の考える最強のテックをマルチプレイで友人とワイワイ見せつけ合ったり、Steamワークショップを介して保存したテックをみんなに公開したりするのもよいだろう。

このテックを軸としたゲームづくりが磨き上げられているのが、サバイバルクラフトゲームとしての『TerraTech Worlds』ならではの楽しさなのだ。

巨大生産拠点を作るのもたのしい


今後もさらに磨き上げられる

前作以上にサバイバルクラフトとして磨きがかかった本作ではあるが、それでも未成熟に感じる部分もある。たとえばチュートリアルが十分に用意されていないことや、序盤がかなりシビアなところ。特定の資源の場所がわかりにくいなど、バランス調整などは若干の粗さを感じる。デベロッパーのPayload Studiosもこれを理解しており、リリース後すぐのアップデートでゲーム序盤のバランスを調整。ユーザーからのフィードバックをすぐに受け止め、改善していくなど、サポートに徹底していることがうかがえる。

また、今後約数年にわたるロードマップも公開。新たな惑星やバイオームの追加、水上テックや飛行テックの追加。さらには新たな技術や生物の追加まで予定されている。Payload Studiosは、前作『TerraTech』も2015年の早期アクセス版リリースから、長年サポートを行ってきた企業。本作のサポートにも期待が持てそう。今後もさらに磨き上げられる『TerraTech Worlds』がすでに楽しみだ。


『TerraTech Worlds (テラテック・ワールド)』はPC(Steam)向けに早期アクセス配信中だ。現時点での価格は税込3960円となっている。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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