動物愛護団体PETA、『パルワールド』で「パルを食べずにプレイしたい」と要望。いつもの団体、今回はちょっとマイルドクレーム
動物愛護団体PETAの英国支部にて要職を務めるスタッフが、海外メディアを通じて声明を発表。『パルワールド』にて「パルの肉を食べずに遊ぶためのガイド」を用意してほしいとの要望を伝えた。PETAはこれまでさまざまなゲームに抗議して活動や理念を周知する“パフォーマンス”をおこなっており、今回の声明もその一環と見られる。
PETAは、1980年に米国ノーフォークにて設立された、動物の権利運動および動物保護などをおこなう団体だ。正式名称はPeople for the Ethical Treatment of Animals(動物の倫理的扱いを求める人々の会)。アジア太平洋地域を含む複数の国・地域に支部をもち、動物保護団体としては世界最大規模とされる。
『あつまれ どうぶつの森』や『ファークライ6』などさまざま人気ゲームに向けて抗議をおこなってきたことで知られるPETA。今回、英国PETAの関係者が『パルワールド』に向けた“要望”を伝えたことが海外メディアInsider Gamingなどで報じられている。なお『パルワールド』は1月20日に早期アクセス配信開始されたオープンワールドサバイバルクラフトゲームだ。不思議な生き物パルたちが暮らすパルパゴス島にて、プレイヤーはパルをさまざまなかたちで利用しながら冒険と生活を繰り広げる。
Insider Gamingが伝えたのは、英国PETAにてプログラム・運営部門バイス・プレジデントを務めるElisa Allen氏の声明だ。同氏は「多くの『パルワールド』ファンはパルを食べることに興味がなく、ヴィーガン向けガイドが要望されている」との見解を説明。つまり『パルワールド』をプレイするうえで、ヴィーガン(完全菜食主義者)も気兼ねなく遊べるような取り組みを要望しているかたちだろう。
なお『パルワールド』では特定のパルを倒したり捕まえたりした際に「肉」を獲得可能。これらを調理して食べることもできる。ただし木の実や小麦、小麦のみで調理可能なパンなど肉以外の食品も存在する。食事に限っては菜食主義を貫くことも可能といえそうだ。
一方で布を入手するためにはパルから羊毛を手に入れる必要がある。布はさまざまなアイテムのクラフトに用いるため、現時点ではパル由来の製品をまったく利用せずプレイすることは難しいといえる。また本作ではパルたちが拠点内で労働するシステムも存在。パルが働きすぎて身体を壊すといったブラックな要素も用意されている。こうした点はヴィーガンとしてのライフスタイルからすると問題視される要素かもしれないものの、Elisa氏はこちらについては今回の声明では特に言及しなかったようだ。
なお先述のとおり、PETAはさまざまなゲームに抗議をおこなってきた。たとえば『あつまれ どうぶつの森』における釣りや昆虫採集を問題視したり、狩猟ゲーム『Hunting Simulator 2』で銃器をカメラに変えて動物を撮影するゲームにしてほしいと要望したりといった活動が見られた(関連記事1、関連記事2)。
そしてPETAは、米国本部の公式サイト上でそうした物議を醸す活動内容についての狙いを説明している。説明によるとPETAには、動物が苦しんでいるという実態を取り上げても人々の十分に関心を引けないとの見解があるという。あえて物議を醸すような活動をおこない、メディアを通じて「動物に優しくする」といったメッセージを世界中に周知することを目指しているそうだ。
つまり上述したようなゲームへの“いちゃもん”は、作品の表現の批判というより団体のパフォーマンスとしておこなわれてきたかたちだ。ちなみに『あつまれ どうぶつの森』への抗議では「タヌキは狩猟の被害者なのでたぬきちには優しくすべき」といった独自の観点で切り込んでおり、どこかシュールな笑いも誘う内容であった。また文面からちゃっかり同作を遊びまくっている様子もにじみ出ており、作品自体は楽しんでいたようである。
今回『パルワールド』に向けて海外メディアを通じて明かされたElisa氏の声明も、そうしたパフォーマンスの一環とみられる。過去の抗議と違ってPETA公式サイト上に掲載されたわけではなく、パルの労働要素に言及されていない点などは、作品ファンに“本気”の抗議と受け取られないようにする配慮かもしれない。いずれにせよ、いちゃもん芸で動物愛護の理念を広めるPETAの方針は健在なのだろう。