アメリカの議員ら、日本ゲーム市場の“ソニー独占状態”に懸念示す。“ハイエンド限定”がゆえに任天堂は無視

アメリカ合衆国議会にて、日本のハイエンドゲーム市場はソニー・インタラクティブエンタテインメントの独占状態にあるとの懸念が与野党から示されているという。

アメリカ合衆国議会(以下、米国議会)にて、日本のハイエンドゲーム市場はソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の独占状態にあるとの懸念が与野党から示されているという。与野党議員らは、日米デジタル貿易協定に反する状態にあると主張しており、米国通商代表(USTR)に対し日本政府との協議を求めているとのこと。海外メディアAxiosが伝えている。


米国議会の与野党の下院議員らにより3月23日、米国通商代表(USTR)を務めるKatherine Tai氏に対して2通の書簡が送付された。Marilyn Strickland氏ら民主党議員6名が送付した書簡の中では、マイクロソフトは2002年に日本でXboxを発売して以来約20年にわたって投資を続けたものの、日本のハイエンドゲーム市場でのシェアが2%にとどまることを指摘。一方、SIEは同市場で98%のシェアを占めているほか、サードパーティのパブリッシャーに対してお金を支払い、Xboxでのコンテンツ提供を妨げているとの報道があった点にも言及された(関連記事)。

書簡では、そうしたビデオゲーム市場の不均衡な状態を日本政府が容認していると主張。さらにビデオゲーム産業がワシントン州で生み出しうる雇用や、全米の業界雇用に影響を及ぼす可能性があるとの懸念も示されている。そして日米デジタル貿易協定において、日本政府は米国のデジタル製品に対して公平な待遇を約していると指摘。同協定に基づいて市場の公正さを促すために日本政府との協議をおこなうよう、Tai氏に求めている。

2通の書簡のうち、Carol D. Miller氏ら共和党議員4名が送付した書簡においても同様の主張がなされている。またこちらの書簡では、インド太平洋経済枠組み(IPEF)における交渉についても言及。IPEFの交渉において日本は重要な参加国であると述べられている。しかし日本政府が、日本市場においてソニーのハイエンドゲーム機独占状態に対処したうえでこそ、IPEFの交渉は意味をもつと同書簡は主張。こちらでも日米デジタル貿易協定に基づいて、市場の公正さを促すために日本政府との協議をおこなうよう、Tai氏に求めている。

ほか、米国議会上院においても財政委員会の公聴会にて、Maria Cantwell民主党議員が日本のハイエンドゲーム市場はソニーの独占状態にあると指摘(POLITICO Pro)。日本の公正取引委員会がソニーによる“排除的行為”を調査できていないとの主張がなされたという。Cantwell氏はTai氏に、(IPEFの交渉に際して)公平な競争条件を整えるための対応策を説明するよう求めたとされる。Tai氏はソニーに関して明確に言及しなかったものの、デジタル製品に関する競争問題への対処は(米国政府が)かならず取り組むべき課題であるとの返答がなされたとのこと。


マイクロソフトは2022年1月18日、総額687億ドル(約9兆円・現在のレート)というゲーム業界最大規模の金額にて、Activision Blizzard(以下、AB)を買収することで両社間で合意したと発表。業界大手メーカーを傘下に収める巨額買収となることから、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れなどについて、各国規制当局による審査が進められている。SIEなど買収に反対する立場の企業は、マイクロソフトおよびABのプラットフォームやタイトルの優位性を強調するような言論を展開。両陣営が真っ向から衝突する様相を呈している。

マイクロソフトによるAB買収に懸念を示す政府機関もある一方、今回は米国の議員らによって日本のハイエンドゲーム市場においてSIEの独占ともいえる状態があるとの見解が示されたかたち。SIE傘下スタジオの作品にはPS版発売から一定期間を経てPC版が発売される作品もあるものの、Microsoft StoreやXboxでは発売されない作品も多い。また『Ghost of Tsushima』や『The Last of Us Part II』、今年6月22日発売予定の『ファイナルファンタジー16』など、PS独占の人気作・注目作も多い状況だ(関連記事)。一方のマイクロソフトも傘下スタジオの一部作品がXbox/PC独占となる予定を強調している(関連記事)。

なお、今回米国議会与野党議員らが示した書簡のなかでは、任天堂については触れられていない。日本のゲーム市場で任天堂は高いシェアを占めており、日本におけるゲーム市場を論じる上では当然外せない存在である(ファミ通)。今回米国議員らが示した懸念においては“ハイエンドゲーム市場”と限定されており、任天堂の存在が考慮されていない点には留意すべきだろう。今後USTRが日本政府と協議をおこなうのかどうか、また今後ゲーム市場がどのような変化を見せるのかが注目されるところだろう。

【UPDATE 2023/3/28 12:16】
記事初版にて、タイトルを「アメリカの議員ら、日本ゲーム市場の“ソニー独占状態”に懸念示す。なぜか任天堂は無視」としておりましたが、内容を正しく伝えるためにタイトルを「アメリカの議員ら、日本ゲーム市場の“ソニー独占状態”に懸念示す。“ハイエンド限定”がゆえに任天堂は無視」へと変更いたしました。あわせて本文の一部を修正いたしました。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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