近未来SFメカアクションシューティングゲーム『Mecha BREAK』リリース前開発者合同インタビューで語られた、本作における壮大な野望。メカゲーとしてもeスポーツとしてもどデカいスケールプロジェクト

Amazing Seasun Gamesは『MechaBREAK』のイベント「グローバル先駆者開拓戦」を3月13日から3月16日まで開催した。イベントは中国・珠海(チューハイ)市にあるAmazing Seasun Games本社にて、開催。弊誌は今回、Amazing Seasun GamesのCEOであり、本作のプロデューサーであるKris Kwok氏に対し、インタビューを行った。

デベロッパーのAmazing Seasun Gamesは、メカアクションシューティングゲーム『MechaBREAK』のイベント「グローバル先駆者開拓戦」を3月13日から3月16日まで開催した。イベントは中国・珠海(チューハイ)市にあるAmazing Seasun Games本社にて、開催。イベントでは、日本・中国・アメリカの3か国から集まったさまざまなチームが出場した。

Mecha BREAK』は、未来の世界を舞台にSFメカを操縦して戦うメカアクションシューティングゲームだ。本作の対応プラットフォームは、PC(Steam)/Xbox Series X|Sで、リリースは2025年を予定している。本作にてプレイヤーは、攻撃型・格闘型・狙撃型・支援型などさまざまな種類の機体「メカブレイク(以下、MB)」を操縦する。3vs3、もしくは6vs6での対戦、PvPvEモードなど3つのモードを楽しむことができる。「チカラ!スピード!一斉砲火!」をテーマとしており、火力全開でスピード感のあるバトルが楽しめるのが本作の魅力だ。

今回行われた「グローバル先駆者開拓戦」は、リリースを控えた本作の国際的な交流を目的とした大型の大会だ。出場するのは日本・中国・アメリカの異なるリージョンで結成された6人チームたち。チームには、あらゆるゲームのプロプレイヤーや、ストリーマー、一般プレイヤーなどが揃っており、通常では交えることがないようなチームたち計16チームがそろい踏み。それぞれのチームは、本作のメインモードとなる6対6の対戦モード「境界戦場」にて対戦。試合はトーナメント制にて行われた。

本イベントの大きな注目ポイントは、リリース前にも関わらず、多くの出場者を呼ぶような大型の大会を開いたということだろう。今回弊誌はデベロッパーのAmazing Seasun Gamesより、イベントへ招待させていただいた。筆者は会場に付いてさっそく、本イベントへの力の入れように驚いた。

イベントが開催されたAmazing Seasun Games本社では、イベント期間中、社内の至る所を『MechaBREAK』一色に装飾。外側からでも大会の盛り上がりが十二分に伝わるつくりとなっていた。また、イベントに出場する16チームは本社内にあるホテルで宿泊。出場前はそれぞれのチーム分PCやゲーミングチェアなどが用意された巨大な練習場にてのびのびと練習することができるなど、出場者にとってはこの上ない環境が用意されていた。

どうしてリリース前なのにも関わらずこれほどの規模感かつコストのかかった大型イベントを開催できるのだろうか。今回、Amazing Seasun GamesのCEOであり、本作のプロデューサーであるKris Kwok(以下、Kris)氏に対し、複数メディア合同のインタビューが行われた。インタビュー会場となったAmazing Seasun Games本社の取材室では、壁一面にあらゆるロボット・SF作品のフィギュアやグッズが飾られており、どうやらKris氏のコレクションの一部だという。

インタビューではここまでの規模の大型イベントを行った理由や、開発に時間とコストをふんだんに要する理由。Kris氏のメカ愛感じる制作秘話などを訊いた。

Kris氏

――すごい規模の大会ですね!発売前からこういう大きい大会をやるにはどういった理由があるんでしょうか

Kris Kwok(以下、Kris)氏:
公式大会は初めてですが、大会自体は過去にも行われていました。去年の8月のベータテスト中には、コミュニティ内で大きなeスポーツ大会を開催されました。 また、内部でも4年にもわたる開発期間の中で大きさは違えど何度か大会を行ったこともあります。それでちょうど奇遇といいますか、去年の年末、社内の執務スペースが足りなくなり、社内を大きく改装する必要がでてきました。この出来事をきっかけに、素人判断ですがこの階層の半分をeスポーツ会場にいたしました。これによって、内部での大会も活発化されました。

社員が大会に参加するようになると、よりいろいろと問題が発見できるようになり、積極的なデバッグや今後のゲームの方向性などを考えることができるようになりましたね。社内の勤務環境自体をeスポーツ向けにすることによって、社員のやる気がアップしたのです。仕事ありきのテストプレイではなく、大会で勝ちたいからよりゲームプレイを積極的に行っていく。大会に勝った社員にはボーナスなどのインセンティブを出すようにしたのもやる気に繋がっていると思います。

また、ユーザー内ではコミュニティ大会も行われており、実際この大会でもコミュニティ大会で優秀な成績を残したプレイヤーを招待しています。ほかにも、eスポーツの実際のプロチームも招待して、観戦していただくことで、ゲームのさまざまな可能性を模索していっていますね。なので大会を開くことで、作品の可能性をさらに広げられるのではないかと考えています。

――では、今後もこういった各国を巻き込んだ大型の大会は行っていく予定なのでしょうか。

Kris氏:
もちろんです!が、リリースされてからはすぐに「シーズン0」として、プレイヤーがゲームを理解していく過程に時間を割かせる予定です。そこからコミュニティ大会などの民間的な大会が行われていき、その中で得たゲームのフィードバックをもとにシーズン1を迎える予定です。そこから初めて公式から正式なゲームランクを改めて発表し、eスポーツとして盛り上げていこうと考えています。

また、このイベントをきっかけに実際のプロプレイヤーやプロチームの識者に話を聞いて、どうやって長期的にeスポーツの運営をやっていけばいいのかといろいろと討論しました。イベントの全体的な改善点や構成・ルールの話などはまだできませんが、アイデアとしては今までのeスポーツの大会とは違うものになるところはあると思います。恒例のトップランカーが参加者の全体を占めているような大会の構成ではなく、新しいチームや新たなチーム構成が出てくるようなものにしたい。そのために全体的な部分からいろいろと考えていく予定です。

会場内にある練習場

トップランカーがどの試合でも勝ち続けて、ずっと同じ顔ぶれが優勝し続けている現象は既存のeスポーツ大会でも起きていますよね。それだと観客は疲労してしまう。これを変えたいなと思ったわけです。私はゲームだけではなく、現実のスポーツファンでもあるのですが、スポーツ業界を見ていると常に新しい選手や新しい顔ぶれが出てきます。特に自分は日本のバスケ業界に注目していて、毎年新しい選手が入ってきて、それにみんな歓迎している。このようになるのが理想なのですが、それにどうやってあやかるかは現在も考えています。

今回の大会でもそれは意識されていて、有名なプロゲーミングチームもいれば、インフルエンサーチームもいて、さらにはゲーム配信もやったことのない一般プレイヤーから構成されたチームもいます。一般プレイヤーチームでいうと、中国のチームも日本のチームもかなり強く、大会を勝ち進んでいきましたね。こういった潜在されたポテンシャルを引き出すような、新しいeスポーツの環境を作りたく、試行錯誤を続けています。

――開発に4年もの歳月をかけたとおっしゃっていましたが、『MechaBREAK』をリリースするにあたって、どういった経緯があったのでしょうか。

Kris氏:
まず、本作を作ることになったきっかけからお話しますが、もうインタビュアーのみなさんはご存知かと思いますが、社内には私の個人的なコレクションの一部が飾られています。ロボット作品をはじめにさまざまなSF作品のフィギュアやプラモデルをコレクションしています。日本のものでいえば、幼いころから素晴らしいSF作品に触れてきました。例えば最初期のものでは「鉄腕アトム」からですね。私の年がバレそうですが(笑)

子供心として、かっこいいスポーツカーやヘリコプターを見たら運転したいと思うように、かっこいいメカを見たらいつかは操りたいなと思いますよね。でも大人になるとなんとこれらのメカは実在しなかったという事実を知ってしまいます。私は幸いゲームを作る側の人間だったので、子供の頃の夢を「ゲームを作る」というかたちで叶えたいと思ったのです。ゲーム業界に飛び込んだのは20数年前です。もちろんメカゲームを作る夢も頭の中にはあったのですが、実現するのはかなり難しいという現実を目の当たりにしました。

まず中国のゲーム業界自体にメカのゲームという概念がなかった。ご存知かと思いますが中国のゲーム業界で主流のジャンルはRPGやMMOだったのですね。そして私自身メカがどういう構造で作られているのか、テクスチャーをどういじればかっこよくなるのかに関しても全くの知識がなかった。そうした現実を前にして、一度夢が破れてしまい。私は大人しく武侠ゲーム制作の道に進みました。

その後さまざまな出来事に恵まれ2016年、私は会社のCEOとなりました。そんな折にイギリスのあるゲーム展に参加したのですが、そこではさまざまなゲームが展示されており、私はその中にあるSFシューティング作品に感動しました。その作品は3Dの宇宙船ででかい戦艦と戦うといった作品だったのですが、それを目にして奥底に眠っていた夢がもう一度目覚めました。私は即決、その作品を作っているチームに投資しました。これをきっかけに『MechaBREAK』が作られることとなったわけです。

それから2021年までの5年間は失敗の繰り返しでしたね。投資の失敗や制作上の失敗、合計4回ほど大きな失敗をしました。いろいろ失敗しながらも自分なりに経験値を積み上げ、今日まできたというかたちです。2021年の時は「もうこれ以上失敗はできない」と一度プロジェクトを辞めるか、それとも自分の会社で開発をするかと悩みました。今まで私はただ試作をしているだけで実際には開発に参加をしていなかったのです。いろいろ考えた結果、やっぱり幼い頃見たメカの夢を叶えたいと思い、諦めず自分の会社で開発することに決めました。それが2021年の11月ですね。そうして、いろいろな社員を引っ張り込んで5度目の再スタートに挑戦したということになります。

――長年の時間をかけてようやくリリースにいたったのですね……。では、リリースを目前に最後のテストとなる「Global Storm オープンベータテスト」ではどういったフィードバックを受けたのでしょうか。

Kris氏:
そうですね。調整しないといけない部分は結構ありますが、大まかに分けると2つほど大きな問題があります。ひとつは機体のアップグレードパーツ。もうひとつは機体の入手に必要なゲームのプレイ時間ですね。

まず、パーツについてですがユーザーからさまざまな意見をいただいております。まず、6対6の対戦モード「境界戦場」にてパーツの入手が困難だという意見があります。それに伴って、そもそも対戦モード自体にパーツというシステムを入れるべきではないのではないかというフィードバックをいただきました。まだ最終的な結論は出ていませんが、「境界戦場」はeスポーツとして競技シーンに向かわせていきたいと考えておりますので、6対6対戦ではパーツ自体を取り除くような方向には進んでおります。

機体の入手に関しても、最初期に使える機体が少なく、現状出ている12機すべてを揃えるにはかなりのゲームプレイ時間を要します。なので、ゲーム初期ではプレイヤーが5、6機しか持っていなくて使いたい機体が被ったりすることで、フレンドとのマルチプレイがしにくいというフィードバックを受けました。これを受け、ゲームリリース時には現状出ている12機はすべて無料で開放するという方向に考えています。将来的には格納庫に入れる様になった時点で、13機すべてで遊ぶことができるというかたちですね。

――今出ている12機すべて!?ではまだまだ新機体のストックがあるということですか?

Kris氏:
そうですね!今のところは全部のストックは20機ぐらいがありましてこれからは3か月ごとに変わるシーズンの中で、1シーズンで3機体を徐々にリリースする予定です。

――かなりハイペースで増えていくんですね。

Kris氏:
これには理由がありまして、「機体の役割」を増やしたいのです。たとえば、近接戦を得意とするタンクのような機体となると現状では赤霄だけになってしまい、ゲーム内でも赤霄の搭乗率が非常に高い。なので、これからは赤霄と同じ役割の機体を早いペースで出して近接戦に特化して遊びたいプレイヤーにたくさんの選択肢を与えていきたいと考えています。これにより、プレイヤーだけでなく、観戦しているプレイヤーもより楽しくなるのではないかと思います。

現状、防御機は3機、近接機が2機、空中機が2機、タンクのような役割ができるのが赤霄のみとなっております。これらの機体はかなり役割が特定的なので、これからは機体を増やして、役割の選択肢も増やしていきたいと考えています。

――本作はメカ作品に登場するようなかっこいい機体を操縦できるゲームでありながらeスポーツを意識されている作品として、機体を追加する際はどのような調整を心がけているのでしょうか

Kris氏:
メカアニメやゲームだと、敵機体を一撃で破壊できるようなかっこいい兵器を持ったメカがたくさん登場しますよね。そういった機体を出したい気持ちもありますが、実際にゲームで実装したら調整はかなり大変になると思います。

攻撃が当たりやすいようにしたら、多くのプレイヤーが蹂躙されることでしょう。では逆に避けやすいように作ったらせっかく強い兵器を作った意味がないですよね。実際にゲームを作る時もそのバランス感覚は意識しています。本作の兵器はロックオン機能も多く、当たりやすいようにできていますが、実は頑張ればしっかりと回避することができます。簡単に強力な兵器を使えるような機体が低ランク帯では猛威を振るい、高ランク帯ではみんなに避けられて使い物にならないというのはあってはならない。弱すぎる兵器だと戦っている感じはしないし、強すぎたらそれはそれで面白くないですよね。

――なるほど。しっかりと避けられる余白を与えてプレイヤーがエースパイロットであるような感覚を味あわせたいと。

Kris氏:
そうですね!なので超強力な兵器を持った機体を出す、というのはかなり時間と検討を要すると思います。実際にメカアニメでも強すぎる兵器やパイロットがあまり出てこないなんてこともありますし(笑)。

――PvPvEモードである「マシュマーク」はリリース後、ライブサービス型のゲームのように、新マップの登場やマップの改修などが行われるのでしょうか?

Kris氏:
そうですね。そもそも「マシュマーク」というモード自体、まだ30%ほどのコンテンツが未完成となっております。未完成のコンテンツとしては、シナリオミッションというキーコードを入手することによって挑戦できるシナリオ付きの新しいエリアですね。あとは、実際にプレイするとわかるのですが、マップ上のあらゆるところに閉じた門が置かれているのですが、こちらもアップデートで内部に入れるようになります。中に入るとPvE仕様のボスステージが始まりまして、チームを組んでいないと挑戦できないような仕組みとなっています。

――そもそも「マシュマーク」や「格納庫巡回」など対戦モードとは異なるモードにもかなりコストをかけて制作しているのが『MechaBREAK』のひとつの特徴ですよね。これにはどういった狙いがあるのでしょうか。

Kris氏:
まずは「マシュマーク」を作った目的としては、そもそも6対6の対戦モード自体eスポーツに向けて制作したモードとなっていまして、そうなると多くの一般プレイヤーはある程度プレイしたら躓いてしまいますよね。

そうなるとゲームプレイが消極的になるのではないかという心配がありまして、PvEに重点を置いたPvPvEモードを制作することで多くのプレイヤーが本作を重要視するのではないか。eスポーツとは違う解になるのではないか、とマシュマークが開発されました。なので、マシュマークはチームプレイだけでなくソロモードも存在しており、よりカジュアルにプレイできるモードになるように意識して開発しましたね。

「格納庫巡回」については、『MechaBREAK』をプレイするうえで、我々が1番プレイヤーに伝えたいのは、「操作するのはメカではなく、メカを操縦している1人のパイロット」であることを意識させたかったのです。メカとして撃墜されるよりも、1人のパイロットが操縦するメカが撃墜された方がずっと重く感じますし、撃墜したらより熱いですよね。プレイヤーが自分のパイロットを作り込むことによって、ゲームへの満足感も湧くのではないかという風に考えています。

また、このモードのもうひとつの目的としては、ゲームの全体的な世界観、シナリオをどうプレイヤーに伝えるかというところで、格納庫を通じてゲームを理解してもらうように設計しました。格納庫をプレイヤーが探索して、コンテンツやコンテキストを見ることによって、自分の中でシナリオを理解できるようになる。情報の欠片を獲得することで、物語の筋書きを自分で組み立てていくことができることを目的としました。

――なるほど。こだわりにはそういった理由があるのですね。主体となるゲームプレイ以外にも注力するという部分では、今度本作の機体であるファルコンのフィギュアが出ますよね。今後もこのようにゲームだけではないマルチメディアでの展開は予定しているのでしょうか。

Kris氏:
いい質問ですね!フィギュアのような立体物はもちろんのこと、ショートアニメの制作も行っております。今後はユニークなパイロットが搭乗しているカスタム機体を押し出したいなと考えていて、トレイラー的な短いアニメーションにてそのストーリーが語られる予定です。アニメーションの数が増えたらプレイヤー内でも好きなパイロットができると思います。そこから人気のパイロットを長いエピソードで見せる。場合によっては映画なんかでみなさんに見せられたらいいですよね。

――最後に正式リリースを心待ちにしている日本のプレイヤーにメッセージをお願いします。

Kris氏:
テストプレイに参加してくれたプレイヤーのみなさまには本当に感謝しかありません。いただいたご意見やご感想などは大変参考になりました。『MechaBREAK』という作品を最高のかたちにしてお届けしたいと思います。長期的な運営を続けるにはプレイヤーの皆様がいなければいけないと考えておりますので、みなさまは『MechaBREAK』1番の宝だと思っておりますので、これからもプレイヤーを大事にする運営を心がけます。

――ありがとうございました。

『Mecha BREAK』は、PC(Steam)/Xbox Series X|S向けに、2025年にリリース予定だ。

Tamio Kimura
Tamio Kimura

エンタメ大好き系ゲーマー。COOPゲームが大好き、クライム系だったらなおよし。

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