アドベンチャー『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』は、まさに王道ジュブナイルである。大人も少年の頃の気持ちになれるのは、主人公が古墳だから
『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』は、古墳が主人公な王道ジュブナイルである。どういうこと?

死体を見つければ有名になれる。かの有名な映画で少年たちがひと夏の冒険に出かけたのは、そんな好奇心ゆえだった。今回ご紹介するゲーム『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』でも、死体探しの冒険が描かれている。ただし、冒険の理由はまったく異なる。
本作は弊社アクティブゲーミングメディアのパブリッシングブランドPLAYISMが配信している、PC(Steam)/Nintendo Switch/PS5/PS4向けのアドベンチャーゲームである。本作の主人公「こふんくん」は、自分自身を古墳であると認識している男の子で、将来は立派な古墳になることを目指している。立派な古墳になるために、弔われる死体が必要なのだ。……この説明を読んで、思わず「何それ?」「どういうこと?」と思ったかたは、どうかその不思議な思いを抱いたまま、続きをお読みいただきたい。

本作は「アドベンチャーゲーム」である。このジャンルに分類されるゲームの内容はさまざまあるが、本作は文字通りの「冒険」を味わうことができる作品だ。それも、大人になってからはなかなか機会のない、わくわくと少しの不安が混ざったような少年時代の冒険である。本作にはそうした気持ちの冒険を体験できる仕掛けが満載なのだ。
好奇心、忘れていませんか
本作は3Dのマップ内を探索するシステムとなっている。調べられるポイントにはマークがついており、特定の場所を調べることで物語が進んでいく、ポイント&クリックゲームに近い仕組みが採用されている。いわゆる正解のポイントだけを調べれば、物語は足早に進んでいくだろう。
ところがゲーム序盤で探索することになる公園で、プレイヤーは必ず複数の遊具を回ることになる。どれを調べてもただちにゲームが進むことはなく、ひとつのポイントを調べるたびに、主人公こふんくんが毎回その時の気持ちを述べるとともにアクションポイント(ActPt)を獲得することになる。溜めたポイントは次に何をすれば良いかのヒントを見たり、新たなスキルを獲得したりといった用途に使うことができる。どの場所を調べても無駄になってしまうことはなく、ポイント集めという着実な成果が得られるとわかるのだ。

また、こふんくんのセリフは同じ場所を複数回調べると変化することが多い。すでに調べた場所にすら、チェックする楽しみが残されているわけだ。こうした仕組みに乗せられて、筆者はいつの間にか「どこを調べたら進むのか」ではなく、「まだ調べきれていない場所はないか」という思いでこふんくんを操作していることに気がついた。
どこを調べてもおもしろい。本作はプレイヤーの好奇心を巧みに刺激して、調べたいから調べるという行動に導く。なんだか日々に刺激がないと感じている人でも、ちょっとしたことに目を向けると見方が変わるのだと思い出せるかもしれない。
王道ジュブナイルアドベンチャーとは
ここで物語に目を向けてみよう。本作は「王道ジュブナイルアドベンチャーゲーム」と称されている。いやいや、ちょっと待ってほしい。王道ジュブナイルアドベンチャーゲームの主人公が古墳だって?王道とはいったい何なのか。筆者は思わず「王道」の意味を調べ直した。

主人公こふんくんが果たしていかなる存在なのか、何の説明もなく物語は始まる。わかるのは彼が自分のことを古墳だと思っていることだけで、その正体についてはまったくの不明だ。見た目は前方後円墳から手足が生えたような姿だが、サイズは小さな子ども程度。前面は草に覆われ、後ろ姿は土の色だ。喋り方はいかにも純朴な少年といった感じだが、どこかの家に住んでいるということもなく、なかよし公園という小さな公園でひとりで暮らしている。なぜかその公園の一部には、魔除けのお札のようなものがびっしりと貼られているのも見えるが、ゲーム序盤では特に説明されない。ゲームを進めていくうちにこふんくんについての情報は増えるものの、核心的な部分はまるでわからず、逆に謎が深まっていく。
そんなこふんくんが公園で遊んでいたある日、ハニワくんという少年が公園を訪れる。彼についても最初は何の説明もないが、古墳が動いていることに比べれば、人を模した土器が動くのはまだ理解しやすい。ハニワくんは元気いっぱいのわんぱくな少年で、考えるのは少し苦手なガキ大将タイプである。公園で寂しい思いをしていたこふんくんは彼と一緒に遊び、もしも断られたらどうしようという不安を胸に秘めつつ、勇気を出してまた一緒に遊びたい気持ちを伝える。なんともいじらしい少年の葛藤と、勇気の第一歩。登場人物は古墳と埴輪なのだが、展開そのものはまさにジュブナイルである。

やがてハニワくんと打ち解けたこふんくんは「立派な古墳になりたい」という夢を語る。しかし、立派な古墳には欠かせない「弔われる死体」がない。そうしてこふんくんは、今まで勇気が出なくて踏み出せなかった公園の外への冒険に、ハニワくんと一緒に繰り出すことになる。夢のために友達と一緒に勇気を出して冒険する王道の展開と、そのために死体が必要という言葉のギャップで不思議な気持ちにさせられる物語だ。
ゲームを進行していくとハニワくんは「埴輪族」という種族であり、本作の世界には命を得た土器が人間と共存していることがわかる。その後も少しずつ世界についていろいろなことが明らかになっていくものの、それに伴い新たな謎も生まれ、こふんくんの正体はわからないまま物語は進んでいく。

いつまでも心に疑問を抱いたままプレイしていて、筆者ははたと気がついた。本作の主人公が古墳であるのは、まさにこうした疑問を抱かせるためなのだと。
かつての冒険を再現するには
人は大人になるにつれ、良かれ悪しかれ多くのことを知る。子どもの頃は新鮮で驚きに満ちていた町はどこも知っている場所になり、訪れたことのない場所でも、どのようにすれば良いかのテンプレートを人それぞれ自分の中に持っているだろう。
そんな大人になったゲーマーに「あの頃の大冒険」を追体験させるには、ただ子どもの冒険を描くだけでは足りない。それでは懐かしい気持ちを味わわせることはできても、子どもの頃に持っていた“わくわく”や“未知のものに対する不安”は再現できないのだ。

本作はまず主人公こふんくんの存在そのものの謎、公園で暮らしているという状況の謎、動いている埴輪のようなハニワくんの謎と、まるで掴みどころのない世界そのものの謎で畳み掛けてくる。そこへいろんな場所を調べたくなるゲームシステムと、「死体探し」という不穏な言葉が加わることで、ゲーム全体として“わくわく”と、“未知のものへの好奇心と不安”が演出される。本作には王道ジュブナイルアドベンチャーな展開に、少年時代の気持ちを大人になった心に再現する仕掛けが巧妙に施されているわけだ。
さて、本稿で「主人公がなぜ古墳なのか」については解釈のひとつを提示できたものの、肝心の「こふんくんっていったい何なの?」という疑問は残されたままである。好奇心に浮かされて冒険したい方はぜひとも、本作を手にとって確かめていただきたい。
『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』は、PC(Steam)/Nintendo Switch/PS5/PS4向けに配信中だ。
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