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子どもの五感と好奇心、そして行動で世界を見つめ直す。“自分なりの答え”を持つ大切さを教えてくれる、平成レトロ団地ADV『Danchi Days』をもう遊んだか
『Danchi Days』は、日々の生活の中で大事な「感じて、想像して、行動する」ことを、そしてその面白さを再び提示してくれる。

Steamでは日々数多くのゲームがリリースされている一方で、個人や少人数チームによる国産タイトルには大作の話題に隠れながらも、独創的なアイデアや強いこだわりを持つ作品が少なくない。本連載「見逃してない? 国産Steamタイトル発掘録」では、同人・インディーゲームを中心に、国産Steamタイトルを毎回1本ずつピックアップして魅力を伝えていきたい。
団地を歩き、暮らす人々を知る
連載第16回となる本稿では、インディーゲーム制作チームgingham gamesが手がけた、平成レトロな団地アドベンチャーゲーム『Danchi Days』を紹介。日本在住のシナリオライター・sandy powder氏、東京を拠点に活動するMelos Han-Tani氏、イラストレーターのmogumu氏のチームで、日本の団地で暮らしてきた経験をもとに構想を練り上げ、人々との出会いや普段は見過ごしてしまいそうな景色を、捉え直す視点が息づいているのが特徴。
本作には、住民との交流や探索のほかにも、さまざまなミニゲームや2000年代のインターネットを思わせる仕組みが用意されている。『さくらももこのウキウキカーニバル』に影響を受けたという懐かしい雰囲気も特徴だが、筆者が特に興味を惹かれたのは、主人公ホシノが身の回りにあるものへ関心を向け、自分なりに考えて行動していく姿だった。

筆者は社会福祉士の資格を持ち、ゲームライターになる以前は医療福祉分野で働いていた。その経験もあってか、本作で描かれる人々との関わり方には興味を惹かれるものがある。誰かを理解するためには、まず相手に関心を向け、何を感じているのか、どんな事情を抱えているのかを想像しなければならない。理解しようとするだけで終わらず、自分にできることを考えて行動する。『Danchi Days』は、そんな世界との向き合い方を、子どもの視点でプレイヤーに体験させてくれる作品だった。
本作の基本的な遊びは、団地を自由に歩き回り、住民たちと交流することだ。夏祭りを復活させるためには、団地の人々を招待する必要がある。ホシノは住民たちから依頼を受け、必要なものを探したり、別の人物に話を聞いたりしながら、少しずつ準備を進めていく。団地にはさまざまな趣味や考えを持つ住民たちが暮らしており、一見すると奇妙なこだわりを持っている人物もいれば、他人にはなかなか理解されない事情を抱えている人物もいる。依頼をこなすだけなら、指定された場所へ行き、必要なものを手に入れればよい。しかし、住民たちとの会話を重ねることで、彼らが何を考え、何を大切にしているのかが少しずつ見えてくる。
日常のなかにあるものを、面白がるということ
『Danchi Days』には、住民との交流や探索以外にも、さまざまなミニゲームが用意されている。そのなかでも特徴的なのが、五感を使って身近なものに意識を向ける「五感ゲーム」だ。木の匂いを嗅いだり、水たまりで泥だんごを作ったり、鳥のさえずりに耳をすませたりと、普段なら何気なく通り過ぎてしまうような出来事が遊びになる。
こうした遊びは、ゲームのなかで何かを達成するためだけに存在しているわけではない。身の回りにあるものを注意深く感じ取ることで、普段とは違った面白さを見つけることができる。いつも見ている景色でも、意識を向ける対象を変えれば、新たな発見があるかもしれない。五感ゲームは、そういった日常に対する好奇心を、プレイヤー自身が体験するための仕組みになっている。

さらに、この感覚はホシノの行動にも通じており、彼女は団地の住民たちと交流するときも、何かを感じ取ることから始めている。相手の言葉や振る舞いを受け止め、何を考えているのかを想像し、自分なりに行動する。五感ゲームで身近なものに意識を向けることと、住民たちの事情を理解しようとすることは、どちらも世界に対して関心を持つという点でつながっている。
感じることは、世界を知るための入口になる。だが感じ取っただけでは、相手のことも目の前にある問題も理解できない。想像を膨らませ、自分なりに考え、実際に動いてみることで、初めて何かが変わっていく。『Danchi Days』は、そんな当たり前の営みを、子どもの日常を通して描いているのではないだろうか。
誰かを理解しようとすること、その先にある行動
ホシノが夏祭りの復活を目指す理由には、認知症のおばあちゃんの存在がある。彼女のために祭りをもう一度開こうとするホシノは、団地の住民たちに協力を求め、準備を進めていく。だが団地の人々が抱えている問題は、子どもの力だけですべて解決できるようなものではない。おばあちゃんの記憶や、住民たちの生活や団地を取り巻く事情など、ホシノにはどうすることもできない現実も存在する。
以前、医療福祉分野で働いていた筆者にとって、認知症のおばあちゃんを物語の中心に据えた本作は、単にゲームの設定として眺めるだけではない題材だ。認知症という言葉から、症状や介護の問題ばかりを考えてしまうこともあるが、当事者にとってはそれだけが生活のすべてではない。本人が何を大切にしてきたのか、誰と関わり、どんな時間を過ごしてきたのかという、その人自身の人生がある。

本作では、おばあちゃんのために夏祭りを復活させようとするホシノの行動を通じて、彼女が団地の人々と築いてきた関係が少しずつ見えてくる。ホシノはおばあちゃんの記憶を取り戻すために何かをするのではなく、彼女が大切にしていたものを、自分なりに受け止めようとする。当然ホシノの行動によってすべてが思いどおりになるわけではない。大人たちが抱えている問題を、子どもが簡単に解決できるわけでもない。それでも目の前にいる人のために何かをしようとすることには意味がある。相手の事情を想像し、自分にできることを考え、実際に行動へ移す積み重ねが、団地の人々との関係を少しずつ変えていくのだ。
感じて、想像して、行動する
『Danchi Days』を遊んでいると、団地の探索や住民との交流、五感ゲームといった異なる遊びが、主人公ホシノの行動を通してひとつにつながっていることに気づく。身の回りにあるものを感じ取り、誰かの言葉から事情を想像し、自分なりに考えて行動する。そうした姿勢が、夏祭りの復活を目指す物語を動かしているのだ。
ゲームのなかでプレイヤーが行うのは、住民たちの依頼をこなし、団地を探索し、さまざまな遊びを体験することだ。だが普段なら気にも留めないようなものに意識を向けたり、相手の立場を考えたりする機会が生まれ、ホシノの冒険を追いかけることは、彼女の世界の見方をプレイヤー自身が体験することでもある。

感じて、想像して、行動する。言葉にすれば当たり前のことだが、日々の生活のなかで、私たちはどれほどそれを実践できているだろうか。目の前にあるものを見過ごし、誰かの事情を知ろうともせず、何かをする前から諦めてしまうこともある。『Danchi Days』はそのような日常に対して、もう少し関心を向けてみることの面白さを伝えてくれる。懐かしい団地を歩く子どもの夏休みは、やがて身近な世界を見つめ直す冒険へと変わっていく。『Danchi Days』は、日常のなかにある小さな発見と、それを自分なりに受け止めることの意味を描いた作品だ。
『Danchi Days』は、PC(Steam)向けに配信中だ。
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