Nintendo Switch新作メトロイドヴァニア『棄海:忘れられた深海都市』は、水中と探索をまじえた遊びやすさがすごい探索アクションだった

『棄海:忘れられた深海都市』が、Nintendo Switchで発売された。海の中を舞台としたアクションゲームだ。感想としては、遊びやすさがすごい探索アクションだった。

棄海:忘れられた深海都市』は、台湾のインディースタジオ18Light Gameが手がける、海の中を舞台としたアクションゲームだ。Steam版は既に発売済みで、Nintendo Switch版が3月7日(火)にダウンロード専用ソフトとして発売する。また、世界中の面白いインディーゲームを日本・アジアに向けて発信するハピネットのゲームレーベル「Happinet Indie Collection」の第6弾タイトルでもある。Steam版は高い評価を獲得しており、前評判高くNintendo Switchにて登場するわけだ。


「水の中」と聞いて、何を想像するだろう。筆者は遠泳で長距離を泳いだり、プールで潜水をしたりと、学生時代に水泳部だったことを思い出す。水はさまざまな魅力を持っている。水の中で抵抗を受けながら押し進む気持ちの良い感覚や、鈍くなった音で外界からゆるやかに遮断されているような感覚など、地上では感じることのない独特な雰囲気だ。その雄大さや、時間の流れすらどこか違うような特別な時間は、水族館などで感じたことがある方も多いのではないだろうか。

その一方で、海を泳いだ経験がある方なら頷いてくれると思うが、突然水が冷たくなったり、海藻か生物か、足になにかが触れて鳥肌がぞわっと立ったりと、その先になにがあるかわからない漠然とした不安もあるだろう。

そんな水の中で感じる心地よさと不安感を、コントローラーを通じて体感できるのが『棄海:忘れられた深海都市』だ。本作を一通りプレイしてまず思うのは「水の中って気持ちよくて怖い」ということだ。


プレイヤーは、深海のガーディアン・プランティーとなり、相棒である“メカジキ”ロボットのブラントと共に、2Dで表現された美しい海の中を自由に探索しながらマップを開放し、海底に潜むモンスターたちを倒していく。いわゆるメトロイドヴァニアスタイルの2Dアクションゲームだ。詳しくは後述するが、アクションの感覚はシューティングゲームのエッセンスをもち、それでいてジャンルとして遊びやすい機能が盛り込まれ、配慮が行き届いている印象を受ける。ジャンルに対する苦手意識を持っている人や、アクションが苦手ながら水中散歩をしてみたい人にもおすすめできる作品だ。

打ち棄てられた美しく、怪しい海

本作の舞台は、2487年の海の中。海中での生活を確立した人類であったが、海洋投棄物の影響で凶暴化したモンスターに襲われるところから物語は始まる。「海に沈んだ街」はいつの世もロマンに溢れている。デパートのような建物や、かつて人々を乗せて運んでいたであろう高速鉄道の跡地など、時が止まったような空気感を持つステージのビジュアルは、今は使われていないがかつての営みをそこに感じる。


また、なんと言っても海中の表現はとても心地よい。ぽこぽこと湧き立つ泡の音や、ピアノの音色が心地よいBGMなど、海の中を演出するサウンドも魅力的だ。

そして、その海の中を自由に泳ぐことができるのが本作の特徴のひとつだ。メトロイドヴァニアといえば、足場を渡っていくアクションが求められる作品も多いが、本作で操るプランティーは人魚(あるいはタコ?)のような生き物であり、上下左右・自由自在に泳ぐことができる。ふわふわと海の中を海中散歩できるというわけだ。ダッシュなどの挙動は、水の抵抗を感じるようなものになっているのも、水中ならではだ。

一方で、海洋投棄などの海洋保全もテーマのひとつに掲げられているようで、海底にゴミが蓄積している場所や、石油やガスが漏れ出している不気味なステージなど、社会派な一面もある。人間たちが好き放題した結果を表現しているのかもしれない。


それゆえに、すべてのステージが海の美しい様子だけを映しているわけではない。海洋投棄されたゴミによって変異したモンスターたちは、元は海の生物であるような形をしており、プランティーを見つけると執拗に追いかけて攻撃してくる。得体の知れない新しく出会う敵や、進める場所かどうかもわからない場所で進んでいく不安感もある。

カートゥーン調のビジュアルも魅力的であり、要所で豊かな表情を見せる可愛らしいプランティーにはとても愛着が湧く。また、海洋生物が変異した敵キャラクターも、実際の海洋生物のビジュアルをベースに、機械的な人工物が融合してしまったようなデザインは非常に魅力的だ。

しっかりと地に足がついたアクション

基本的な操作は、Lスティックで自由にプランティーの位置を調節しながら移動し、Rスティックで照準を合わせ、ZRボタンでメカジキロボット・ブランドに攻撃する対象を指示する、ツインスティックシューターのような感覚だ。まれに弾幕のような避けることに徹するシーンもあるので、シューティングのような性格をもち合わせているのが本作のアクションにおける特徴である。なお、ブラントはダメージを受けない。


ZRボタンで繰り出す攻撃が基本とはなるが、そのほかにZRボタンを長押しすることで一時的に無敵になるガード・パワークラッシュや、そこから派生する強力な攻撃「パワーアタック」もある。強力な攻撃は長時間使うとオーバーヒートしてしまうので、使いどころを考えて使う必要がある。

また、プランティーの動きは水中的な抵抗を感じるような挙動である一方で、ブラントは直感的な動きを見せる。レスポンスが良いというイメージだ。このため、水中特有のふわふわとしたプランティーの挙動を楽しみながらも、攻撃アクションは地に足がついたものになっている。どうしても水中のアクションは野暮ったさが伴う印象を持たれがちだが、攻撃をブラントに指示するというスタイルを採ることで問題を解決している。


そして、前述の水中散歩のようなゆったりした時間とは一転、アクションは激し目で忙しい。敵はこちらを見つけたら近寄ってくる(もしくは遠距離攻撃をしかけてくる)ものが多いため、戦闘は原則として避けられない。敵に発見された瞬間に、周囲にプランティーが動ける範囲がどれだけあるのか、攻撃する隙はどれほどあるのかなどを考える必要がある。

筆者がもっとも気に入ったのはダッシュを使うことで、回避を起点に攻撃のチャンスを生み出せる点だ。ダッシュで敵に触れることで、敵をマーキングすることができる。マーキングした敵には大きなダメージを与えることができるのだ。

プランティーが敵に向かっていき、ブラントがカバーするように連携するアクションが視覚的に楽しいことはもちろんだが、あえて敵と近い距離に身を置くことで有利になるシステムはスリリングで、“映えるプレイ”を生み出してくれる。また、ヒットストップの細かな違いによって、マーキングした敵への攻撃や、パワーアタックなどの爽快感は、通常攻撃と比較して増している。

ゆったりとした水中散歩を楽しめる探索要素と、地に足がついた忙しいアクションのコントラストはゲームプレイに緩急を与えてくれるもので、ただの雰囲気ゲーム/アクションゲームに留まらないぞという心意気を感じる。本作を表すジャンル名を新たに作るとしたら、水中散歩ツインスティックシューターアクションだ。


余談だが、プランティーとブラントの関係性も良い。導いてくれる存在であるブラントは、チュートリアルでよく喋るし、世界観の説明もしてくれる。それに対してプランティーはうなずいたり疑問を示したりと、可愛く、豊かな表情で応えている。深海でも孤独を感じさせない「相棒」がいることは、とても心強い。

探索の動機も豊富

前述の通り、基本的なゲームプレイは、マップを探索していくことにある。道中の敵を倒しつつ、一時的な拠点となるアウトポストを見つけ、エリアを押し広げていくことで物語が進んでいく。物語を進めることで入手するアクションを使ってさらに探索範囲を広げたり、プランティーの身体を小さくして狭い通路を進んだりと、できることが増えるに比例して、行ける場所も増えていくというゲームデザインだ。

アウトポストでは体力の回復や、回復アイテムの補充などができるほか、ほかのアウトポストとのショートカットも作成することができるので、見つけたら積極的に開放していくと良いだろう。

また、アウトポストではメモリーボードを装備することもできる。メモリーボードとは能力や特別なスキルのようなもので、プランティーやブラントの能力を上げてくれるという代物だ。たとえば「敵のHPを可視化する」や「敵が落としたものを自動で入手する」といったユーティリティのようなものから、「敵にダッシュして触れることでダメージを与える」ものや「パワークラッシュのチャージ時間を短くする」といったバトルに関わるものが用意されている。


メモリーボードの枠に好みで組み込むことができるので、好きな攻撃や防衛をバフしたり、自分が苦手なアクションをカバーしたりと、プレイヤー自身の好みに合わせて付け替えていける。メモリーボードはマップ内に落ちているものもあれば、特別なショップのような場所で購入することもできる。

メモリーボードのほか、探索では記録文書やポスターも入手することができる。この世界をより深掘りするものが中心で、ひとつひとつの内容が濃いため、探索の楽しさをグッと高めてくれる。近未来ポストアポカリプスな世界を探検する側面もあるわけだ。


細かい難易度調節

そして、なにより本作は“遊びやすい”。ベースとなる難易度は、新兵・ガーディアン・軍曹の3段階。加えて、細かく難易度を調節することが可能だ。具体的にはダメージ軽減率・スタミナ消耗率・ヒートリミット上昇率を、10段階でカスタムできる(ヒートリミット上昇率を下げることで、敵からの攻撃を守ってくれるパワークラッシュを長時間使用した時にオーバーヒートしにくくなる)。筆者はダッシュを多用しがちだったので、スタミナ消耗率を下げることで難易度を下げて調節していた。苦手な分野に合わせてプレイヤーだけの難易度を生み出せる。


ダメージ軽減率は100%にしてしまえば無敵状態にもなる。取り逃したアイテムがあったり、まだ見ぬ通路を確認したり、探索に集中したい場面はとても多い。メトロイドヴァニアの醍醐味ではあるが、どうしても面倒に感じてしまうという人にはとても助かる機能だ。どんな場面でもストレスを感じずに水中散歩することができるのはかなり嬉しい。

また、マップはYボタンで常時確認することができるほか、マーカーを置くことで探索の目印をつけることもできる。遊びやすさを助ける機能はかなり充実していると言えるだろう。かくいう筆者も絶望的なまでに方向音痴であり、新たなステージに進むたび「あれ、ここ来たっけ……」と何度つぶやいたかわからなかったので、とても助かった。

述べてきた通り、「打ち棄てられた海」という魅力をメトロイドヴァニア形式で探索しながら、ツインスティックシューティングのようなアクションを楽しめるという、尖ったデザインが特徴的だ。その両方どちらも楽しめる自由自在な難易度調節で、ジャンルに自信がなくても安心してプレイすることができるのが嬉しい。

難易度を下げることで海中散歩や探索に特化させ、その世界観を存分に味わうのも良いし、上げることで忙しいアクションに挑戦するのも良い。もちろん両方楽しむのも良い。どんな遊び方をするプレイヤーにとっても、各々の欲する楽しさを見つけることができるだろう。

『棄海:忘れられた深海都市』は、Nintendo Switch向けにダウンロード専用で3月7日(火)発売予定。価格は税込1860円だ。

Sakutaro Okano
Sakutaro Okano

フッ軽ゲームライター。生きている実感を得るため、FPSを中心にド派手なハリウッド的アクションゲームを貪って生きている。

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