PS4サバイバルゲーム『Rust』初見プレイの放浪記。サボテン踏んだら死んで、作った家は経年劣化で壊れる、自由で過酷な世界

Facepunch Studiosによって開発された、マルチプレイを主体としたオープンワールドサバイバルゲーム『Rust』。最近になりPS4/Xbox One版が発売された『Rust』の初見プレイの放浪記をお届けする。

文明が崩壊し、自分ひとりが生き残ったら、はたしてどうするだろうか。荒れ果てた線路をあてもなく歩いてみるとか、廃屋を拠点に籠城生活してみるとか、乗り捨てられたヨットを勝手気ままに動かしてみるとか、いろいろと妄想したことがあるだろう。文明崩壊後の荒廃した世界“ポストアポカリプス”を題材にした作品は数多く、媒体を問わず人気の作品がいくつも思いつく。『Rust』もその一つで、文明の残り香を感じながら、圧倒的な自由度の中で、迫りくる死に抗う物語をプレイヤー自身が描いていく。本稿では、完全初見の筆者が戸惑いながら“生きる”術とその喜びを学んでいく様をレポートする。


『Rust』とは、Facepunch Studiosによって開発された、マルチプレイを主体としたオープンワールドサバイバルゲームだ。2013年に早期アクセスが開始され、2018年に正式リリースを迎えた長寿タイトルながら、今年の1月にはSteamにて過去最大の接続数を記録するなど(関連記事)、リリースから時間が経ってもなお人気の作品として名を聞くことが多い。これまではPCのみでリリースされていた本作だが、6月24日に国内PS4/Xbox One向けに『Rust Console Edition』として発売された。プラットフォームがネックとなっていたファンにとっては待望のリリースとなるだろう(公式サイトはこちら。パッケージ/ダウンロード版の各種ストア情報を確認できる)。

本作を実際にプレイすると、戸惑いの中から目標がおぼろげに見えてくる。まずサーバーに入ると、記憶喪失の主人公よろしく、海岸線で目を覚ます。特にイベントが起きるわけでも、チュートリアルが示されるわけでもない。「方向キー下でインベントリを開く」といった最低限の操作説明がなされ、岩とトーチ(たいまつ)だけを持って荒野をさまようことになる。


体力や喉の乾きを表しているゲージは、なにかしらの飲食物を摂取して回復する必要がありそうだとか、岩はなにかを攻撃するのに使えそうだとか、その程度の想像はつく。しかしながら、目覚めた場所の周囲には草と岩しかないため、何をすればいいのか皆目検討がつかない。草ですらそれほど生えていない。とりあえず付近の草や岩にインタラクトできないか試したり、トーチで木を殴ってみたりしたが、トーチが壊れただけだった。なるほど、物は壊れる。

フラフラしていると棄てられた発電所のような施設が見えたので向かってみるも、ガイガーカウンターが反応を示すような音と共に、体力が削れていく。厚手の洋服や防護服のようなものがない限り、放射性物質に近づくのはご法度のようだ。そうこうしていると日が沈み、辺りは暗くなっていった。目覚めた後のキャラクターは衣服すら身に着けていない。夜になると気温が下がるようで、寒さによってHPが削られていく。この世界にはさまざまな危険が潜んでいる。それにしても夜はとても暗い。足元はおろか数メートル先にあるオブジェクトも視認できない。暗闇で途方に暮れていると、人の声が聞こえてきた。

人の声は、暗がりに浮かぶ火の方面から聞こえてくるようだ


どこかの家屋から漏れ聞こえるラジオの音か、死を迎える演出かと思ったらそうではないらしい、本物の人の声だ。第一村人発見だ。ドラム缶を利用した焚き火の前で、2人のプレイヤーが談笑しているようだ。しゃがみと立ちを繰り返してコミュニケーションを図ると、なにやら英語で話しかけてきてくれた。火と人間のぬくもりに言語の壁は存在しない。断片的な会話しかできなかったが、どうやら家に招待してくれるようだ。第一村人は海を超えた遠い国からこの世界にアクセスしているようで、ラグを感じつつついていくと、ザシュッという痛々しい音を最後に画面がゆっくりと暗転した。私は突然死んだのだ。


原因としては、サボテンを踏んで死んだらしい。確かに、サボテンは踏むと痛い。でも死ぬのか?死ぬらしい。『Rust』ではサボテンを踏むと死ぬ。この世界の人間の儚さを感じる。

本作では、特定のアイテムを持たずに倒れると、ランダムな海岸線で目覚めることになる。先程の第一村人との別れが強制されたほか、インベントリにあった手持ちのアイテムは、岩とトーチを除いてすべて失われる。もう失うものがないのならと散歩をしてみると、港だった場所や、グロサリーストア(食料雑貨店)の残骸、ガレージのようなものなどが見つかった。実際に入れる建物も多く、荒れ果てた内装は味があるし、僅かに残された物資なども得られ、歩き甲斐がある。建物だけでなく、岬にそびえる灯台や、沈みかかった船なども用意されていて、ポストアポカリプスを扱った作品のファンであれば、心くすぐられるシチュエーションがあるはずだ。好奇心の赴くままに島を歩き回っていると、この世界にあるものを理解し、何ができるのかを想像するようになっていった。


本作は一つの島(サーバー)に、最大100人のプレイヤーが接続できる。ただし島はとてつもなく広いというわけではないので、ほかのプレイヤーに出会うことは珍しくない。一瞬止まって睨み合ったり、屈伸して敵意がないことを確認したり、目が合うや否や全力で逃げ出したり、プレイヤーの個性が見えて面白い。

ある時、食料(カボチャ)調達に勤しんでいた最中、道端で出会ったプレイヤーとジャンプでコミュニケーションを取っていたらチームに招待された。チームは、ゲーム内で分隊を組んで、位置の共有などができるシステムだ。フレンドや出会った仲間と一緒に遊ぶうえで便利な機能だろう。招待してきたプレイヤーもパンツ一丁で、動きでコミュニケーションを取りつつ、謎の建物へ導かれた。するとそこには重火器で武装した人間がいたようだ。気付いたら後ろから殴られて死んでいた。

チームに誘ってきたプレイヤーの策略なのか、それともたまたま行った先で襲われただけなのか。知る由はないし、たくさん集めたカボチャは返ってこない。ポストアポカリプスを扱った映像作品で、助けを求める美女に駆け寄ったら、武装した男たちに囲まれ、実は罠だったことに気づくシーンを見たことがあるが、そんな気分だった。簡単に人間を信じてはいけないのだ。


このゲームは、プレイヤーを導いてはくれない。ガイドや目的表示もなければ、懇切丁寧なチュートリアルもない。「何をするゲームなんだ」と慌ててパッケージを裏返すと「RUSTでの君の目的はただ一つ、生き残ること」と書いてあった。この世界で「生きる」こと自体が目的だという。趣深い。本作はゲーム側から明確な目標が提示されるわけではなく、謎の島を舞台に自由にやってくれという、いわゆるサンドボックス型のゲームなのだ。

生きるためには知識がいることに薄々気づきつつあった。そこで今得られる情報を手に入れようと、インベントリと「作成」のタブを熟読してみる。「作成」はいわゆる“クラフト”だ。本作は最初からある程度のレシピは開放されていて、素材さえ手に入れれば作ることができる。レシピには作成したアイテムの効果も記されていて、「寝袋」を作ればそこからリスポーンすることができるという。これまでは見知らぬ海岸で目覚めていたが、任意の地点から再出発できるならば、作成はマストだろう。また、アイテムを保存しておける木箱も作ることができるので、最低でも寝袋と木箱があれば、今回死んだとしても特定のアイテムを次の自分へ持ち越すことができそうだ。さらに、「建築計画書」を作成すると、素材を消費して建築ができるらしい。

今得られる情報――もっとも、本作ではこれがすべてだろうが――を得たので、このゲームで初めての目標を立てた。ふらふらと荒野をさまよう刹那的な生き方をやめ、まず家を作ってそこを拠点にすることにした。人生ではじめてまともな生き方を選んだ瞬間だ。すると少し遠くで木が倒れるのが見えた。近づいてみるとパンツ一丁の男が木を岩で一心不乱に殴っていた。なるほど、こうやって木材を得るのか。手伝ってあげようと同じ木を殴ってみたら、そのまま男に殴られて殺された。本作では殴るたびに素材が手に入るようで、筆者の行為は物資の横取りに近いものだったというわけだ。無知は罪だ。

家を建てるだけであれば、さほど時間はかからない。建築計画書と素材さえあれば、想像力次第でさまざまな形の建物が作れるだろう。散歩をしていると現代美術館的な建物や、オーシャンビューの家も見られた。筆者は古めかしい家が好みなので、三角屋根の小さな家を作ってみた。場所にも少しこだわってみる。小高い丘の中腹あたりで、周辺には他プレイヤーのものと思われる家々もあり、キノコや鉱石がとれる。少し離れた場所には物資が残っていそうな廃屋郡がある。手軽に廃屋郡へ探索しにいける拠点としてもバッチリだ。

建築の合間にカボチャを食べたら種を得たので、家の周りに植えてみる。庭付き一軒家のような装いになった。だんだん自分がこの世界に適応していく感覚が嬉しい。家を完成させたところで日が暮れてきたので、焚き火を作成して設置する。焚き火のそばでは“快適”という状態になり、HPが回復していく。この日初めて、文字通り快適な夜を過ごすことができた。翌日は家の周りをもっと探索してみようか、なんてことを考えながらモニターの前でカップ麺をすすりながら夜が更けていった。

翌朝、少し遠くへ足を伸ばして散歩していると、他プレイヤーの家を見かけた。ちょっと覗いてみると、付近の岩場からジャンプして中に入れるではないか。家の中にはアイテムを保管しておける大型の木箱があり、中にはどうやって手に入れるかもわからないアイテムや物資が大量に入っていた。もしかしてこれ、盗める?

「荒っぽい略奪行為をするのも、このゲームでは自由です。というフレーズが頭をよぎる。本作にて定められた“行動規範”に目を通した際に読んだ一文だ。行動規範はタイトルメニューのエクストラから確認することができるので、本作でやっていいことの明確な線引きを確認するためにも、最初に読んでおくことをお勧めする。

「盗める場所に置いておくやつが悪い」「これは生きるためなんだ」と自分に言い聞かせながらアイテムをインベントリに移していく。初めて見るアサルトライフルや見知らぬアイテムを自分の家に持ち帰る。ボワッと身体が熱くなるような高揚感が身を包み、生を実感する。初めての窃盗だ。今思えば、行動規範で認められているのだから堂々と盗めばよかった。

しかし、事件が起こったのはその夜だった。焚き火のそばで黄昏ていると、突然バラバラと音を立てて家が半壊した。せっせと集めた木材が、塵になった。本作では建築した一部のものが劣化するシステムが導入されており、我が家は経年劣化でバラバラと崩れていってしまった。焦りっぷりがわかる動画を見てほしい。


こりゃまいった。せっせと集めた木材で作り上げた安寧が突然消え去った。窃盗が原因ではないにしろ、謎の罪悪感は拭いきれなかった。

絶望の夜が明けたところで、現実世界では出勤する必要があることを思い出した。この世界はたとえゲームを起動していなくても動き続け、その間に物資が奪われてしまう可能性があるので、「隠し袋」を作成してみる。これにアイテムを入れて地面に隠しておけば、ほかのプレイヤーに盗まれる心配はない。昨日盗んだものをそこに入れて隠しておく。インベントリから移し替えながら、どうしても元の持ち主の気持ちを考えてしまう。あの家には寝袋が2つあったから、フレンドと2人でプレイしていたのかだとか、本当は厳重な家だったけど経年劣化で屋根だけなくなってしまったのではないかだとか、彼らがインしたらどう思うかとか、罪悪感に目を背けながら、袋に土をかぶせていく。

そして数日後、再びインすると拠点ではない場所で眠りこけていた。ふたたびランダムリスポーンになったのだろう。寝袋は壊されたのか、自然消滅したのか、隠し袋の位置もわからず振り出しに戻された。家もアイテムも失ったことで、再び放浪の旅に出てみる。このタイミングで、リリースから初の週末を迎え、多くのプレイヤーと出会うことになった。つたない英語でコミュニケーションを取っていた相手が実は日本人だっただとか、気が合う人に出会ったと思ったらNPCに倒されて二度と会えなくなっただとか、周りにプレイヤーがいると、より多くのドラマが生まれる。使いやすいラジオチャット機能も実装されていて、「お前は友好的か?」といった挨拶に加え、ある素材が必要だとか、細かい意思疎通も可能だ。


ただ、心を開いてくれる人は少ない。相手にも相手の「生活」があるわけだ。フラフラと近づいただけでクロスボウで射抜かれたり、チャットで助けを求めても頑なに家のドアを開けてくれなかったり、むやみやたらと警戒されたり、人間同士の付き合いというのは極めて難しい。

放浪の旅を繰り返したすえ、なんだかんだで数日生き延び、物資がそこそこ揃ってきた。守るべきものが増えると身動きが取りにくくなるもので、ここらで居を構えることにした。他プレイヤーが建てたと思われる、半壊した家の跡地を再利用(横取り)し、立派な石造りの家を完成させた。ただしドアが木造のため、守りはまだ弱い。かまどで金属を錬成することにより鍵付きの強固なドアや拠点を築くこともできるそうだ。守りを強固にしていくのも良いし、領地を拡張しても良い。明確な終わりがない分、際限なく目標が更新され続けていく。

本作はさまざまな“生き方”を許容してくれる。楽器や家具のような文化的なアイテムでハッピーな家を作っても良いし、他プレイヤーの素材を奪う攻撃に特化した戦闘民族になるのも良い。それを下支えするのは、サンドボックスゲームの本質的な楽しさである“作り上げていく感覚”だ。ミニチュアやジオラマのように、一つ一つのパーツは小さくても、それらが集まることで形になっていく様が楽しい。カボチャの種も一つ植えるだけではただのシュールな光景だが、群生させると畑になるし、そのそばに家があれば立派な庭付き一軒家だ。最初はなにもない家の中も、木箱や寝袋が置かれることで生活感が増す。それを自分の手で積み重ねていって、ふと全体を見ると最初と比べて大きく変化していることに嬉しくなる。生き方の自由度と世界のリアリティが組み合わさっていて、長い年月愛されるタイトルになっている理由が少し理解できた。


また、最大100人のプレイヤーと世界を共有し、島にそれぞれの生活が存在しているというのもポイントだ。他プレイヤーの動きを真似して家を建てるという目標を定めてみたり、自分より物資を持っていそうなプレイヤーにコミュニケーションを図ってみたり、互いに影響を与え合う関係は独特だ。また、攻撃に対するペナルティがないため、他人の出方を伺う必要があるというのも刺激的で楽しい。

本作はPCで早期アクセス配信開始されてから時間が経っていることもあり、ネット上にはさまざまな情報が転がっている。わからないことも調べればすぐにたどり着けるが、筆者としては一度なにも情報がない状態で遊んでみることをお勧めしたい。よくわからない中で未知のものと出会う楽しさや驚き、戸惑いを感じられることだろう。

また、生存時間が延びるに連れて慎重さが求められるようになる。コツコツと素材を集め、拠点を作り、財産を管理し守っていくことは一朝一夕では叶わない。それを奪いにくる荒くれ者に襲われたり、追い返したり。自分の積み上げてきた時間や物資を守る難しさと緊張感、達成感を味わっていると、生きていること自体がスリルになっていく。『Rust』のただ一つの目的である“生き残ること”とはこういうことなのだろう。謎の島を舞台に、圧倒的な自由を謳歌しつつ、自分だけの“生”を実感してみてはいかがだろうか。

『Rust Console Edition』はPS4/Xbox One向けに発売中だ。各販売ストアは、公式サイトより確認できる。

Sakutaro Okano
Sakutaro Okano

フッ軽ゲームライター。生きている実感を得るため、FPSを中心にド派手なハリウッド的アクションゲームを貪って生きている。

記事本文: 42