『リーグ・オブ・レジェンド』2016シーズン世界大会がついに決着。世界王者と止まらないプロシーン

世界最強の座を奪い合うのは、最強地域韓国から厳しい戦いをくぐり抜けた「Samsung Galaxy」と「SK Telecom T1」の2チームだ。今年の世界大会では韓国からの参加チームたちが、例年にましてハイレベルな試合を見せてくれている。栄光をつかんだのは果たしてどちらだったのだろうか。

『リーグ・オブ・レジェンド』2016シーズンの「World Championship(Worlds)」世界大会もいよいよフィナーレ。世界最強の座を奪い合うのは、最強地域韓国から厳しい戦いをくぐり抜けた「Samsung Galaxy」と「SK Telecom T1」の2チームだ。今年の世界大会では韓国からの参加チームたちが、例年にましてハイレベルな試合を見せてくれている。栄光をつかんだのは果たしてどちらだったのだろうか。

前夜祭として行われた「Worldsリーグフェスティバル」では、ゲームやこれまでのイベントを彩ってきた音楽の生演奏コンサートが約50分にわたって繰り広げられ、翌日の決勝戦開始までのオープニングカウントダウンで幕を閉じた。決勝戦のオープニングセレモニーもまた、昨年の不評を受けて盛大なパフォーマンスが開催された。

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決勝戦前夜、弊誌では優勝予想アンケートをTwitterで行った。

8割以上がSKT優勝を予想。「決勝に強いSKT」というジンクスもあるが、三度目の優勝にして二連覇という史上初の偉業への期待も大きいことがうかがえる。

※試合結果についてのネタバレを含みます

 

第一試合:王者の貫禄

第一試合は青側がSSG、赤側がSKTの配置で開始された。SSGが最初のピックでザイラを選択すると、SKTは移動妨害に強いオラフと、ザイラの射程を遙かに上回るジンを選択。以降もSKTがSSGに対して有利なチャンピオンを選択し続けた。試合もBengi選手のオラフが試合序盤からSSG側を含めたジャングルをコントロールし、常にリードを取り続けることに成功。SSGもなんとか耐えはしたが、2度目のエルダードラゴンをSKTが獲得したところでついに力尽き、まずはSKTが1勝目を手にした。

こういった節目の試合では、チーム内ボイスチャットの声がかき消されてしまうこともあるほど観客席の歓声も盛り上がる。今年は大スクリーンの盗み見対策も兼ねた半ブース方式となったようだ。画像出典:Riot eSports Flickr
こういった節目の試合では、チーム内ボイスチャットの声がかき消されてしまうこともあるほど観客席の歓声も盛り上がる。今年は大スクリーンの盗み見対策も兼ねた半ブース方式となったようだ。画像出典:Riot eSports Flickr

 

第二試合:魔王の本領

この試合について特にコメントは必要ないだろう。「Faker選手がライズをピックした」というだけでなにが起きたかを察することもできるほどだ。昨年Worlds 2015の決勝戦、第四試合でキル関与率100%・0デスという悪夢のような強さを発揮したFaker選手の操るライズは、リメイクによってその性質を変えながらも、その性能を十全に発揮し、SSGをバラバラに引き裂いてしまった。SSGが前線を構築できる耐久性を備えたチャンピオンをピックできなかった点も問題ではあったが、結果としてSKTが一方的なリードで2勝目を挙げることになった。

 

第三試合:死闘

先行して2勝を挙げ、世界王者を目前としたSKTともはや後のないSSG。第三試合は一見してSKTが主導し、ゴールドにおいても常にリードを取り続ける様相を見せた。しかしSSGはひたすらに耐え、時に窮地に陥りながらも本陣のインヒビター前タワーを死守しつづける。そして最後に試合を決定付けたのはSSGのAmbition選手が操るリー・シンによるエルダードラゴン・スティールだった。十分にHPを削ったと判断し、ドラゴンとバロンにSKTがメンバーを分けた一瞬のスキをついてエルダードラゴンによるバフを得たSSGが反撃、70分超という死闘を制したのだった。

背水の陣であろうとも、まだ負けたわけではない。SKTの猛攻をはねのけた末に勝ち取った試合を喜ぶSSGのメンバーたち。画像出典:Riot eSports Flickr
背水の陣であろうとも、まだ負けたわけではない。SKTの猛攻をはねのけた末に勝ち取った試合を喜ぶSSGのメンバーたち。画像出典:Riot eSports Flickr

 

第四試合:SSGの逆襲

ここまでの長時間の試合による疲労を受けてか、SKTはジャングルを控えのBlank選手に交代して臨んだ第四試合。SKTのジャングルであるザックが精彩を欠き、またトップの組み合わせが有利なためにケネンを育てることに成功したSSGが、徐々に試合を引き寄せていった。最終的に試合の流れを決定付けたのは30分ごろからのバロン周辺の視界を巡る戦闘。ここでBlank選手のザックが単身SSG側に飛び込むミスから、数的に不利な状況での戦闘を余儀なくされるSKT。さらに背後からケネンの突入が綺麗に決まり、SKTは有効な反撃が不可能となってしまう。その流れでバロンを獲得したSSGが2勝目を獲得、ゲームをイーブンに戻した。

 

第五試合:最後の戦い

最後の一勝を賭けた、世界王者の座を賭けた試合は、世界大会開始当初のような陣容によるぶつかり合いとなった。ミッドレーンの強チャンピオンと強力なサポートであるザイラ、カルマをバンしたため、タンクタイプのサポートが選択肢となったためだ。ジャングルをBengi選手に戻したSKTは、ドラゴンやオブジェクトのコントロールで有利を作ろうとするが、SSG側も戦闘力の高いオラフがジンと共同でボットレーンを制圧し、容易にリードすることを許さない。一進一退の均衡がついに破れたのは、36分頃のミッドレーンを巡る攻防。一度SSGがミッドレーンを押し込んだのだが、Bengi選手のリー・シンから側面を突かれて後退。さらにその後の追撃戦でFaker選手のビクターにチームを半壊させられてしまったSSGはバロンを失い、試合の流れを決定付けられてしまった。かくして、SKTが2年連続、三度目の世界王者の座を手にしたのだ。

誇らしげな表情でサモナーズカップを掲げるSKTのメンバーたち。チームの選手とスタッフが一丸となって勝ち取った優勝カップだ。画像出典:Riot eSports Flickr
誇らしげな表情でサモナーズカップを掲げるSKTのメンバーたち。チームの選手とスタッフが一丸となって勝ち取った優勝カップだ。画像出典:Riot eSports Flickr

以上、Worlds 2016決勝戦の試合録画は公式YouTubeチャンネルにて視聴可能となっている。

 

覇者決定、しかしプロシーンは止まらない

SKTは三度目の世界大会制覇、そして連覇という形で初の王座防衛に成功したチームとなった。さらにシーズンを通して行われた国際大会すべてにおいて優勝を果たしたチームという形でも記録を残すことに成功した。特に三度サモナーズカップに触れたFaker選手、Bengi選手、コーチのkkOma氏は伝説を刻んだと言っても過言ではないだろう。そうなると気になってくるのは彼らの去就だ。昨年はSKTが世界大会に優勝した後、新たに挑戦する場を求めて自らチームを去った選手もいる。Faker選手については、毎年他チームによる巨額のオファーが噂されるのも恒例となりつつある。2017シーズンに向けて彼らの次なる目標がどうなるのか、ファンとしても期待と不安が入り混じったオフシーズンになりそうだ。

他チームの選手には既に動きが見られている。準決勝に進出した中国チーム「EDward Gaming」からは、2年前に加入した韓国人のPawn選手とDeft選手が脱退を発表。グループステージで敗退した北米チーム「Team SoloMid」ではADCのDoublelift選手が少なくとも半期の休養を表明している。EDG同様準決勝進出の「H2k-Gaming」では、Worlds期間中ADCとしてプレイしたFORG1VEN選手がフリーエージェントとなり新しいチームを探しているとFacebookにて表明している。単に「技量が優れている選手」を入れただけでは、世界を狙えるチームは作れない。そのことは、ここ数年でチームのインフラの強固さを見せ続けてきた韓国チームこそが立証している。今大会で大きな声援を受けつつも結果が振るわなかった北米や台湾といった地域も、巻き返しを図って着実な運営改善を行うはずだ。今シーズンを戦い抜いたチームたちに拍手を送り、来シーズンも素晴らしい試合を見せてくれることを期待したい。

[執筆協力: ユラガワ@Wired-Lynx]

Sawako Yamaguchi
Sawako Yamaguchi

雑食性のライトゲーマー。幼少の頃からテレビゲームに親しむが、プレイの腕前は下の下。一時期国内外のTRPGに親しんでいたこともあり、あらゆるゲームは人を楽しませるだけでなく、そのものが出発点となって人と人を結びつけ、新しい物語を作る力を持っていると信じている。2012年から始めた『League of Legends』について、個人ブログやTwitterにて日本語で情報発信を続けている。

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