中世オープンワールドARPG『キングダムカム・デリバランス II』は“遊びやすさとロールプレイ”にさらに磨きがかかる。先行プレイで感じた、前作らしさと確かな進化

来月2月5日に発売を控える『キングダムカム・デリバランス II(Kingdom Come: Deliverance II)』。このたび本作の一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、本稿で内容を紹介していきたい。

オープンワールドARPG『キングダムカム・デリバランス』の続編となる『キングダムカム・デリバランス II(Kingdom Come: Deliverance II)』が来月2月5日に発売を控える。チェコを拠点とするWarhorse Studiosが手がけるシリーズだ。AUTOMATONではこのたび『キングダムカム・デリバランス II』の一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、本稿で内容を紹介していきたい。

なお、シリーズ2作目となる本作では2018年に発売された前作『キングダムカム・デリバランス』のストーリーの続きが描かれるが、前作について何も知らない、今作が初めてというプレイヤーも安心してプレイできる設計になっている。

ドラゴンも魔法もない、生活感が漂う中世騎士道物語

『キングダムカム・デリバランス』は、Warhorse Studiosが手がける中世ボヘミアを舞台としたオープンワールドアクションRPGだ。プレイヤーは、故郷と家族を失った男ヘンリーとなり、復讐を果たすために騎士見習いとして1400年代初頭のボヘミアを奔走する。ハードコアなゲームスタイルや史実をベースにした没入感あるストーリー、一癖も二癖もあるクエストシナリオなどが評価され、世界で累計800万本を超える売上を達成している。


『キングダムカム・デリバランス』にはドラゴンや魔法などファンタジーな要素は登場せず、むしろ作中には中世のリアルな生活感が漂っている。鍛冶屋の息子として平凡に暮らしてきた主人公ヘンリーは、中世の庶民らしく文字も読めなければ剣もろくに振れない。しかし、素寒貧では盗賊にすら負けてしまうため、鍛冶職人と値段交渉をしながら少しずつ装備を揃え、ポーションのレシピを読み解くために隣町の学者に高いお金を払って文字を学ぶ。宿代を稼ぐために街の人々の問題を解決しては、酒場のダイスゲームで大金を失い、破天荒な神父と飲み明かして二日酔いのままミサで説教をする。そうした泥臭い人間の日々の生き様や、それがもたらす没入感がこのゲームの最大の特徴と言っても過言ではないだろう。

そうした評価を念頭に置きながら、今回プレビューとして遊べる範囲で筆者が抱いた『キングダムカム・デリバランス II』の感想を本稿では紹介したい。

いきなりの窮地、一般兵としてのデビュー戦

プレビュー版では、唐突な攻城戦(防衛戦)のシーンからゲームが始まる。銃火器を用いて攻め立てる敵兵士、投石機によって一部が倒壊する味方の砦……ど迫力のムービーはまるで映画の一シーンだ。かなり情勢は悪そうであり、主人公ヘンリーの姿も見当たらない。

ムービーが終わると、戦闘は継続したまま、とある神父を操作出来るようになる。神父ではあるが、敵兵を倒すことを期待されているようだ。クロスボウを持たされ急かされるままに、いざ城壁の上へ。

城壁の上では、ちょうど敵兵が梯子を登ってきたところだった。急いでチュートリアルの指示に従いボルトを装填し、打ち込む。「味方がよくやった!」と声をかけてくれるが一人を倒したところで大勢に変化はなさそうだ。外の囲いはすでに敵に占領されており、小部隊がこちらの正門に突貫しようとしている。あちこちで怒号が飛び交い、息をつく暇もない。

右も左もわからないうちに状況がますます変化し「とにかく防衛しないと」という使命感だけで眼の前の敵を倒す。一人称視点で緊迫した雰囲気がそのまま伝わってくるからか、実際に一兵士として戦場にいるかのような緊張感だ。

城壁にかかった梯子を落とすと、再びカットシーンに。矢が刺さり悪態をつくヘンリーの友人、ハンス・カポン卿。「こんなことになるなんて……」と予想外の事態であることを滲ませるが、彼らはどうしてこの戦場にいるのか。このあと彼らはどうなってしまうのか。そして、主人公ヘンリーはどこで何をしているのか。前作を凌駕する大規模な戦闘に期待が膨らみつつ、先の展開が気になってしまう。

護衛隊長ヘンリー、説得によって難を逃れる

アクションゲームらしさを伝える緊迫した攻城戦のシーンから一転、「数週間前」の様子として、草原を爽やかに駆ける主人公一行。先程までとは打って変わって和気あいあいとした雰囲気の中、「貴族であるカポン卿の護衛隊長としてヘンリーが同行している」「トロスキー城に重要な手紙を届けに行く」といったこれまでの物語の経緯を、会話の中の自然な流れで知ることが出来た。

道中、一行はトロスキーに所属する一隊に包囲される。どうにか相手の隊長を説得しないと盗賊と勘違いされたまま制圧されてしまいそうだ。ここはヘンリーの護衛隊長としての腕の見せどころ。

前作と同じく本作でも会話が重要視されているようで、NPCとの会話の中でも多様な選択肢が用意されていることがある。選んだ会話によっては相手に与える印象が変化し、状況が良くも悪くも変化する。人の生死に影響が出ることもあり選択には慎重を期す必要があるが、十分なステータスと論理的な整合性があれば、相手も納得してくれることが多い。今回も無事に相手を説得することに成功し、争いを避けることが出来た。

池のほとりで野宿をすることになった一行はダイスゲームに興じたり、愛犬マットの世話をしたり、残してきた恋人の話をするなどして穏やかな時間を過ごす。ヘンリーとカポン卿は汗を流すべく池で水浴びをすることに。近くで聞こえた女たちの歌声に興奮を隠しきれないカポン卿を諌めつつ、忍び足で覗き見をしようとする二人。ところが、ここから事態は急転する。

裸一貫で逃げ出す二人、ゼロからの再出発

響く剣戟と馬のいななき。先程まで二人がいたキャンプがなんと盗賊たちに襲撃されている。盗賊の中にはヘンリーの両親の仇であるトートのような後ろ姿も……。数で勝る盗賊たちに次々とやられていく護衛隊の面々。裸一貫のままなすすべなく見守る二人の前で、なんとトロスキーに届ける予定だった大事な手紙まで奪われてしまう。

すべてを失った二人。命だけは守ろうと茂みに隠れるカポン卿だったが、暴漢に乱暴されそうになっている女性を助けようと大声をあげたヘンリーによってその策も御破算に。我らが主人公は裸だというのに相変わらずの無鉄砲さを誇っているようだ。

なんとか女性を逃がすことは出来たものの、今度は二人が大ピンチに。対岸に泳いで渡る二人だったが、ヘンリーの肩には盗賊が放った矢が。その後も追っ手から隠れながら逃走劇は続くのだが、少しでも気を抜くと盗賊に斬りつけられゲームオーバーになってしまうので注意が必要だ。忍び足とダッシュのタイミングがキーになる。

結局追手の一人と取っ組み合いの末に崖から転落し、ヘンリーは重傷を負ってしまう。意識が朦朧とする中、故郷が襲撃され滅んだ頃の記憶が幻影として登場し、ヘンリーを苦しめる。それでも度々カポン卿に助けられながら、森の中に居を構える薬草師の下に転がり込み、ヘンリーとカポン卿は一命を取り留める。

九死に一生を得たヘンリーだったが、大怪我のせいでせっかく積み上げてきたステータスのほとんどを失ってしまう。盗賊の奇襲で騎士見習いとしての装備一式も失い、まさにゼロからの再出発だ。

といっても、本当にすべてが失われたわけではない。鍛冶屋の息子として平凡に暮らしていた頃と異なり、今作のヘンリーはなんと最初から文字が読めるし、剣も多少は振るうことが出来る。多くのものを失ったうえでの再出発ではありながらも、前作と比べると確かな成長を感じるのも事実。ゲームでは続編で前作での成長が唐突に“なかったこと”になりがちながら、本作では自然な導入になっていると感じた。

その後、回復した二人はトロスキー城に向かうも酒場でのささいな口論がきっかけで乱闘騒ぎとなり、結局二人はさらし台行きとなってしまう。我慢の限界に達したカポン卿は別行動を開始し、ヘンリーはまた一人で行動をすることに……。オープンワールドARPGとして自由な探索が出来るようになるのもこの時点からだ。果たしてヘンリーは与えられた任務を全うすることが出来るのか、新作でも中世騎士道珍道中はまたしても笑いあり涙あり二日酔いありの展開になりそうだ。

クセはそのままに、各要素がブラッシュアップされ遊びやすく

新作でのゲームプレイについても紹介していこう。前作では戦闘や操作に独特のクセがあるという評価もみられたが、新作では全般的に遊びやすくなったという印象だ。

一人称視点が固定なのは変わらないが、近接戦闘では以前までの五方向の入力から「上」「右」「左」「下(突き)」の四方向の入力に変更され、直感的に攻撃が出来るようになっている。クロスボウや弓矢も前作と比較すると扱いやすくなった。また、弓術のパーク(スキル)も新たに登場している。

前作で課題の一つとなっていたセーブについても改善が見られる。手動セーブに必要とされていたアイテム「救世のシュナップス」の市場での取引価格が大幅に下落したほか、調合に必要な材料が記されたレシピについても早い段階で入手できるようになっている。選んだ会話次第では展開が大幅に変わる本作だからこそ、より小まめにセーブできるのは嬉しい変化だ。

グラフィック面も強化されている。特に月夜に照らされる森は美しく、その暗さは独特の畏れを抱かせる。UI面でも、キャラクター情報やクエスト情報、マップなども可読性が増し、必要な情報にアクセスしやすくなっていた。

一方で、クエストの目標が大まかにしか表示されない点は前作と同様。情報を収集することで目星をつけることが出来るロールプレイ的な楽しさはあるものの、具体的にどこに行けば良いのかわからない点には不便さもあるだろう。

とはいえ、ロールプレイ要素は不便なものばかりではない。筆者としては、ヘンリーの人物設定に根差した新要素は新作の注目点だと思えた。本作では愛犬であるマットに餌をやったり撫でたりするだけでなく、指示を出して戦闘に参加させたり、特定のクエストでは臭いを嗅がせて追跡させることも可能。そして新たに追加された鍛冶では、地味な鍛冶作業を必要とするものの、素材とレシピさえ揃えることが出来れば、自分で武具やアイテムを製作することが出来るようになった。鍛冶職人としての才能を伸ばしていけば、製作した武具の劣化が遅くなるなど特殊な効果が付与されるようになる。ロールプレイ的な没入感もありつつ、新鮮さを感じられる要素となっていた。

『キングダムカム・デリバランス』らしさはそのままに、さまざまな要素がブラッシュアップされ、遊びやすくなった新作『キングダムカム・デリバランス II』。再び全てを失ったヘンリーが、中世ボヘミアの大森林を舞台にどのように足掻き、泥臭く生き抜いていくのか。今後の展開が気になるところだ。

キングダムカム・デリバランス II(Kingdom Come: Deliverance II)』はPC(Steam)/PS5/Xbox Series X|S向けに2月5日発売予定。

Akira Tabata
Akira Tabata

離島に暮らす雑食ゲーマー。物語性の高いゲームが特に好き。『League of Legends』はシーズン3からプレイ。学生時代を棒に振った。歴史ストラテジーゲームが好物です。

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