『仁王2』体験レポート。仁王が目指す場所は「変化」ではなく「進化」の先にあり【TGS2019】

 

今月9月12日~9月15日にかけて幕張メッセにて開催されている東京ゲームショウ2019(以下、TGS2019)。その一角にあるコーエーテクモブースのブースでは、かつてゲーマー達を賑わせた“戦国死にゲー”『仁王』の続編である『仁王2』の試遊体験が行われている。

かつて最初のボスから何度も苦戦し、やがて麻痺に泣き、居合に悶え、数々の艱難辛苦を超えた先にあるハクスラの快感に身を震わせた筆者としては、このたび世界初となる試遊は千載一遇の好機。早速プレイしてきたので、その模様をお届けしたい。

【追記 2019/09/17 19:05】
『仁王2』プロデューサー兼ディレクター安田文彦氏インタビュー記事はこちら

『仁王2』は魑魅魍魎あふれる戦国時代を舞台に据えたアクションRPG。妖怪の力をその身に宿す主人公と、不思議な力を持つ鉱石「霊石」を売り歩く商人「藤吉郎」。美濃国にてひょんなことから出会った両者が、やがて時の一大権力者「秀吉」へと成り上がっていく物語が描かれる。

俗に「死にゲー」と呼ばれる、何度もリトライを繰り返して攻略を進展させていくゲームコンセプト。そして一つ一つが微妙に異なるステータスを持った装備品を収集、装備し、自由に調整可能なステータス要素と合わせながら、個々人オリジナルのビルドを作り上げていくシステムが特徴である。

目指す場所は「変化」ではなく「進化」───そう銘打たれた『仁王2』のゲームシステムは、その大枠こそ「変化」していないものの、着実にその歩みを「前進」させる内容となっていた。

試遊体験はまず自らの分身を作成していくところから始まる。キャラクターの性別を選択し、その後顔や表情をデザインしていく。今回はあくまで試遊ということで、数種類ある既存のプリセットからの選択となったが、操作不可能であった項目を見るに、製品版であれば頭髪や体型、声などさまざまな部分に手を入れることができるようだ。また、キャラクターの姿に関してはゲーム中に再変更が可能であり、「お歯黒」など、時代特有のファッションを取り入れることもできることが判明している。

前作の主人公はウィリアム・アダムス(三浦按針)という元海賊のイギリス人。彼というキャラクターに没入できるかによって、ゲームプレイそれ自体の楽しさに個々人の差が生まれていた。しかし今回導入されたキャラクターメイキングの要素は、愛着という形でその不安を払拭するものであり、前作から進化した点であると言ってもいいだろう。

メイキングを終えるとそこは桜が目に美しい美濃国にあるステージのスタート地点。プレイを開始すると早速見慣れない妖怪が登場し、簡単なチュートリアルが発生する。

『仁王2』の基本的な操作方法は前作とほぼ変わっていない。□ボタンで弱攻撃、△ボタンで強攻撃、✕ボタンで回避、タイミングよくR1ボタンを押すとスタミナを一定量回復させる「残心」ができる。この他にもR1ボタンを弱攻撃にするなど、2タイプの操作方法が用意されているので、個々人の好みに合わせて切り替えてほしい。ではどこが「進化」したのだと問われれば、半妖という主人公の設定よろしく、妖怪の力を振るう「妖怪技」、敵の大技の返し手となる「特技」、そして九十九武器の強化版となる「妖怪化」のシステムが追加されたこと。そして新たな武器種や成長項目、旅のお供となる義刃塚の存在である。

プレイヤーは妖怪を倒すことで「魂代」を入手、社で浄化した後に専用スロットに装備することで倒した妖怪が使用する技の一部を発動することができる。これが「妖怪技」だ(試遊版では2種類の妖怪技を使うことができた)。妖怪技の発動にはスタミナゲージの下に新たに追加された「妖力ゲージ」を消費する必要があり、むやみやたらに連続で使用することはできない。しかし、当てるたびに敵のスタミナの最大値が一時的に減少するという大きなリターンを得ることができるため、積極的に使用していきたいところだ。

また強大な敵と相対していると、周囲に赤いオーラをまとった後、大ダメージ不可避の大技を放ってくることがある。そんな時に役立つのが「特技」だ。大技中の各タイミングで特技をぶつけることができれば、敵を一時的に無防備な状態にすることができる。特技の内容は後述する妖怪化と同様、装備する守護霊に依存しており、筆者が装備していた「幻」の特技は、瞬間的に攻撃を回避してカウンターを見舞うというものだった(試遊版ではこのほか「猛」「迅」の計三種類の守護霊が用意されていた)。

そしてプレイヤーが発動できる最大の大技が「アムリタゲージ」を全消費して発動する妖怪化である。発動に伴って専用ゲージが出現し、ゲージが無くなるまでの一定時間、主人公の姿のみならず攻撃・回避方法までもが装備した守護霊独自のものに変化する。その中でも筆者が使用した「幻」の妖怪化は回避がさらに高速化し、回避しやすくなるというもの。「こんなゲームスピードだったか」と錯覚するほどフィールドを自在に動き回れるようになる爽快さがあった。

なお、スキルツリーの強化項目を確認してみると、主に妖怪の能力に関連する「半妖」が追加されていた。上記3つのシステムの内容にまつわる強化は、ここから行っていくものと考えられる。

新たな力は妖怪のものだけではなく、武器やNPCとしても登場する。試遊版では新武器のひとつ「手斧」と非同期型協力プレイ「義刃塚」が実装されていた。手斧は手に持った2本の小さな斧で眼前の敵を切り刻むだけでなく、遠方に向け投擲することで牽制にもなる、遠近両用の武器種である。義刃塚は専用アイテムを消費することでNPCを召喚、喚び出したステージ攻略中に限り仲間として連れ歩くことのできるシステムである。試遊版ではかのシブサワ・コウの名を冠するNPCを召喚することができた。

しかし以上の新要素は、戦いを有利に運ぶことはあれど、戦局の決定打になりうることは無い。あくまで「できること」を増やしただけであり、最終的に勝利の鍵となるのはプレイヤーの腕そのものである。新たな手段を提示しつつ、プレイスキルを重視する旧来のあり方を尊重するその姿勢は、まさに「正当進化」であると言っていいだろう。

中ボスを降しステージの奥へ進むと、試遊の目玉となる大ボス「馬頭鬼」が待ち受けていた。広範囲の攻撃と防御不可能な投げを組合わせ攻撃してくる難敵であるが、特に注意したいのは、現世を常世に塗り替え、自身を強化するフィールドを全面的に一定時間発生させる「常闇」の発動。モーションが強化されるほか、被ダメージが大幅に上昇するため、有利な状況が一瞬でひっくり返る危険性を孕んでいる。ちなみに筆者はこの常闇状態を乗り越えられずクリアできなかった。妖怪を強化する常闇状態にはこちらも妖怪化で迎え撃つのがオススメということなので、製品版を購入した際には是非活用したいところである。

今回の試遊体験では、以前ダークホースと呼ばれた『仁王』というタイトルが、決して駆け足ではなく着実に一歩ずつ前進し続けていることを確認することができた。とどまることを知らない彼の歩みは、一体何処へたどり着くのだろうか。2020年初頭の発売日が待ち遠しい限りだ。