“ゲーミングドメイン”「.esports」、Googleスタッフから「SEO効果はない」とあっさり斬られる。eスポーツチームにうってつけと宣伝してたのに
「.esports」ドメイン販売者がSEO効果などを謳う宣伝を実施したところ、Googleのスタッフから直接「そんな効果はない」と断言されている。

Web3ドメイン事業をおこなうKookyは、2月17日までに「.esports」なるトップレベルドメイン(TLD)を含むドメインを販売。SEO効果などを謳う宣伝を実施したところ、Googleのスタッフから直接「そんな効果はない」と断言され、宣伝アカウントなどが削除されるに至り注目されている。また、そもそもの「.esports」ドメイン自体も、有用性に疑問のあるものとなっている。Search Engine Roundtableが伝えている。
TLDとは、普段ユーザーが目にするドメイン名の「.jp」や「.com」といった右端にあたる部分のこと。こうした一般的なTLDについては、管理団体ICANN主導のもと各組織に委任されて維持管理されている。たとえば、弊誌URLである「automaton-media.com」といったドメイン名も、そうした団体の管理のもとで取得し利用されているわけだ。
またドメインについてはブランディングのほか、含まれるワードにSEO(検索エンジン最適化)効果もしばしば期待される。たとえば、「Hotels.com」といったドメインであれば、ホテルに関する検索で上位表示が期待できるといったかたち。そうした商業的価値のありそうなドメイン名については高額で取引されることもあり、上述の「Hotels.com」といったドメインを含め、日本円にして十数億円という多額で売買なされた例がある。

今回注目が寄せられたのは、Kookyが運用する「.esports」なるTLDだ。同ドメインについてKookyは、ゲーミング分野やeスポーツチームなどにうってつけのドメインであると広告。「.esports」TLDをもつドメイン名の購入をすすめているほか、ほかの運用ドメインとあわせて「ブロックチェーン技術の発達した未来(onchain future)では、検索エンジンはコンテンツを軽視し、ドメインを重視する」とSNS上にて豪語している。
また、Kookyは先日には「.esportsドメインで目立とう、信頼を築こう、SEO効果をブーストしよう!」との宣伝ポストを、Bluesky上で展開していたようだ。つまり、「同ドメインを利用すれば、検索エンジン上でページが上位に表示されたりする」といった効果を謳う売り込みだ。ところが、Googleのスタッフ自ら同ポストにリプライを投じ、SEO効果を否定することとなった。また「.esports」ドメインそのものも、一般的なトップレベルドメインとは“別物”となっている。

SEO効果を否定するリプライを投じたのは、Googleにて検索アドボケイトなどを務めるJohn Mueller氏。Mueller氏は、SEOやGoogle検索について、Google側とサイト作成・運営者との橋渡しなどを担う人物だ。同氏はKookyによる前述の「SEO効果」を謳うポストに対し、「There’s no positive SEO effect from a TLD like that.(そうしたTLDによるポジティブなSEO効果はない)」ときっぱり断言。“中の人”からSEO効果がバッサリ否定されたわけだ。
このリプライを受けてか本稿執筆現在では、該当の宣伝ポストを含め、BlueskyおよびX上に存在した「.esports」ドメイン公式アカウントは消失。同ドメイン公式サイトである「esports-domains.com」についても消え、Kookyのドメイン販売サイトにリダイレクトされるかたちになっている。
さらに、「.esports」TLDの有効性についても疑問が残る。というのも、同ドメインは前述の「.jp」「.com」といった通常のTLDではなく、Web3ドメイン(NFTドメイン)と呼ばれる、ブロックチェーン技術を利用したドメインだからだ。
このWeb3ドメインを利用したウェブサイトは、現状Braveといったブラウザがサポートしている。一方で、Chromeといった主流ブラウザではサードパーティの拡張機能などを導入しなければ利用できない。Web全体で見れば限定的な普及にとどまっており、そもそもGoogle検索自体がこうしたWeb3ドメインを利用したウェブサイトの検索をサポートしていないと見られる。つまり、「SEOといえばGoogle検索対策」との現状があるいま、Web3ドメインの「SEO効果」を謳うのは不適切だろう。
なお、Web3ドメイン「.esports」を含むドメイン名は、本稿執筆現在もKookyのウェブサイトおよびWeb3ドメイン販売サイトfreenameを通じて販売中。ほかのWeb3ドメインも展開されている。少なくとも現状では価値に大きな疑問が残るこうしたWeb3ドメインが、どのように扱われるのか注視したい。