『Fallout』など手がけたベテラン開発者いわく「大型RPGがどれも暴力メインなのは、売れるから」。開発しやすく売りやすい

『Fallout』などを手がけたゲームクリエイターのTimothy Cain氏が「大型RPGゲームに暴力要素がよく含まれるのは、よく売れるからである」との見解を示し、注目が集まっている。

ゲームクリエイターのTimothy Cain氏は1月1日、自身のYouTubeチャンネルにて動画を公開。そのなかで、「大型RPGゲームに暴力要素がよく含まれるのは、よく売れるからである」との見解が示され、注目が集まっている。海外メディアPC Gamerなどが伝えている。

Cain氏は、米国を拠点とするゲーム開発者だ。同氏はRPG『Fallout』を生み出した主要開発者たちのひとりとして知られる。過去にはInterplay EntertainmentやObsidian Entertainmentなどで『Pillars of Eternity』『The Outer Worlds』といった作品を手がけた、RPG開発の専門家ともいえる人物である。

Cain氏は今年1月1日、「Violence As The Default In AAA RPGs(AAA級RPGにおける、“お決まり”としての暴力要素)」と題した動画を、自身のYouTubeチャンネルにて公開した。この動画は、視聴者からの「大型RPGは、“主人公が暴力を介して世界と関わることが普通”な現状から、進歩していくのだろうか」との質問に触発されて作られたとのこと。

Cain氏はまず、同動画ではあくまでも小規模なインディーRPGではなく、多額の予算がかかったRPGについて語ると前置き。また、過去に同じような質問に回答した際には批判も受けたとしつつ、持論を述べ始めた。

『Fallout』

Cain氏は、暴力要素が含まれた作品が作られるのは「それが売れるからである」との結論から語った。企業として同じ予算やリソースをかけて作るなら、10万本しか売れない作品より、数百万本売れる作品を作るだろう、との見解だ。同氏によれば、アクションRPGは、ターン制などを採用したクラシックなRPGよりもよく売れる傾向があるという。またCain氏は、アクションというジャンルは多くの人にとってそのまま「暴力」に直結すると語っている。

そして、そういった暴力要素を含む作品は、ゲームメーカーにおいて多くの人が好む、つまり「売上が立てやすい」と考えられており、マーケティングもしやすいとのこと。たとえばトレイラーにおいては、飛んだり撃ったり殴ったり、といった要素はプレイヤーにも見た目に理解しやすい。一方で、たった15から30秒程度の映像で「よい物語」や「素晴らしい文章」を伝えるのは至難の業だそうだ。たとえば、『The Outer Worlds』のマーケティングでは「暴力以外にも自由にさまざまな手段が取れる」ということを伝えるために苦心したという。

『The Outer Worlds』

Cain氏は、プレイヤーによる暴力要素を含まないヒット作品についても言及。『Myst』『The Witness』『Life is Strange』などを例示しつつ、そうした作品も継続的に作られる程度には売れていると補足した。しかし、Steamでの売上上位作品を見ればわかるように、暴力要素を中心とした作品が売れやすいのは明白だとしている。

また、RPG開発における「暴力以外の選択肢」の実装の難しさもあるようだ。Cain氏は、「ステルスでやり過ごす」といった要素を“サブの選択肢”とは捉えておらず、暴力もステルスもそのほかも正当な選択肢だと考えているそうだ。同氏は、自身が開発するゲームにおいてあらゆるビルドやプレイスタイルでクリアまで行けるように設計しているとのこと。初代『Fallout』も暴力的なゲームと思われがちなものの、実際にはさまざまな手段でクリアできる作りになっているという。

そしてCain氏は『Fallout』開発当時の思い出として、「全NPCをとりあえず撃つテストプレイヤー」が重要NPCを殺し、ゲームが進行不能になってしまった経験を述懐した。Cain氏によれば、同氏が志向するような、あらゆるプレイスタイルを許容する作りのゲームは、バグ修正の手間などにより時間と資金が多くかかるという。一方で、メインと思われがちな「暴力」以外の要素を削っても、さほど売上には影響しないそうだ。そうしてコスト削減などが重視された結果として、暴力要素メインのRPGが出来上がりやすい、といった傾向があるのだろう。

『Fallout』

Cain氏としては、そうした“主流”から離れた珍しい作品の方が好ましいと感じているようだ。また、こうした「売れるから暴力要素が入る」といった流れは、RPGだけでなく映画・テレビ番組・書籍などあらゆるメディアに共通していると指摘している。

他方でCain氏は、動画内で「ユーザーの購買傾向が、メーカーの意識の変化にも繋がる」との旨も語っている。暴力要素に頼らないゲームをユーザーが買い支えれば、そうした作品が増えるとの見解だ。「自分好みのゲーム」を世の中に増やすためには、そうした作品をどんどん購入して遊ぶことが、地道ながら近道なのかもしれない。

Sayoko Narita
Sayoko Narita

貪欲な雑食ゲーマーです。物語性の強いゲームを与えると喜びますが、シューターとハクスラも反復横とびしています。

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