ゲームの価格設定は「雰囲気で決める」こともよくある、と著名アナリストが裏側明かす。理屈では決めきれないから、直感を信じる
ゲーム業界アナリストのMat Piscatella氏は、“8ドルは実質5ドル理論”への理解を示した。

人気協力ゲーム『PEAK』の開発元Aggro Crabの共同設立者であるNick Kaman氏は先日、同作の値付けをおこなった意外な方法を共有。これに対する業界アナリストのコメントが注目を集めている。
Kaman氏は1月9日、海外メディアGame Fileのインタビューの中で、インディーゲームの価格設定に言及していた。同氏いわく、12ドルは10ドルと同じであり、13ドルは15ドルに、そして8ドルは5ドルに見えるという。すなわちプレイヤーの目には、価格がある閾値を境に階層(tier)のようにざっくりと映るとの持論を展開した。とはいえこの階層には、四捨五入するというような明確な基準があるわけではなく、感覚に基づいたあいまいな法則の模様。Kaman氏によれば、『PEAK』の定価を約8ドルに設定したのは、実際の価格と感覚的な価格の差が最大になるポイントだとスタジオが考えたからだそうだ。

これに対して、市場調査会社Circanaのゲーム業界アナリストであるMat Piscatella氏が、2月5日に公開されたGamesRadar+のインタビューで自身の考えを語っている。Piscatella氏は約20年にわたる業界経験をもつベテランで、過去にはWarner Bros. GamesやActivision Blizzardなどで事業計画・分析を担当。『Call of Duty』や『LEGO』などの多数の人気シリーズのパブリッシングにも携わってきた人物だ。
同氏によれば、物理的な流通網の減少、すなわちデジタル販売が普及したことにより、近年ではプロモーションの規模や頻度、ゲームの価格にはばらつきがあるとのこと。特に価格については、市場の状況やメーカーが達成したいことにあわせて、ピンからキリまで柔軟に設定できるようになってきているという。そうしたなかでは、ゲームにとって適切な価格帯を見つけることが重要であり、「You can’t science it all(すべてを理屈で決めることはできない)」として、“8ドルは実質5ドル理論”への理解を示した。そしてPiscatella氏によると、意外にも業界では『PEAK』の例のような「vibes pricing(雰囲気価格設定)」がよく起きているという。
一方で、価格の決定方法についてはより“統計的”なアプローチを推奨する意見も存在する。多数の高評価インディーゲームを手がけた経験をもつゲームデザイナーのTom Francis氏は、ゲームをテストプレイしてもらったユーザーに対して「いくらなら妥当であるか」をアンケートで尋ね、もっとも多くの票を得た価格に決める方法をアドバイスしている(関連記事)。ユーザーから好意的に受け止められる適正価格がどこにあるのか実際に測ることができるという意味で、理にかなったアイデアといえる。

ところで、過去にはObsidian Entertainmentが昨年10月30日に発売した『The Outer Worlds 2』が、約80ドル(日本向け価格で9900円)の価格設定に対して生じたユーザーの反発を受けて、発売前に10ドル(日本では1000円)の値下げをおこなっていた(関連記事)。この背景として、同年6月に発売された『マリオカート ワールド』に79.99ドル(日本向けにはダウンロード版が8980円、パッケージ版は9980円)という価格が設定されていた。このことで、『The Outer Worlds 2』が80ドルの価格設定をし、従来70ドルが基準となっていた、フルプライス作品の業界水準が引き上げられるのではないかとの懸念も浮上。任天堂が新たな“基準”を提示し、『The Outer Worlds 2』がそれに追従したとする推測が寄せられていたわけだ。前述した『PEAK』の価格設定のアプローチを踏まえると、価格がどのようにユーザーに受け止められるかという観点は、さまざまな要因の中でも特に重要な尺度の一つなのだろう。
今回業界を長年見つめてきたアナリストが放ったコメントからは、価格設定が思いのほかフィーリングでおこなわれるケースが往々にしてあることもうかがえる。プロジェクトの成否に直接響くという点で重要な作業である価格設定だが、さまざまな要因が絡んでいるがゆえに正解を見つけることは難しい。だからこそ、最終的には作り手の直感が重要となるのかもしれない。
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