バレンシアCFが『LoL』に参入、ほぼスペイン人のみで構成されたチームを発表。スペインプロリーグ機構もe-Sportsリーグ設立を計画中


先月e-Sports部門を立ち上げたサッカークラブ「バレンシアCF」は、7月13日に『League of Legends』(以下、LoL)チーム「Valencia CF eSports」のメンバーを発表し、『LoL』シーンへの参入を表明した。バレンシアCFは1919年に創立された、スペインのリーガ・エスパニョーラ1部リーグに所属する名門サッカークラブのひとつ。先月の部門立ち上げ時には『ハースストーン』『Rocket League』の所属選手を発表していた。また、スペインのプロサッカーリーグ運営組織「リーガ・デ・フトボル・プロフェシオナル」が、e-Sportsリーグの立ち上げを計画しているとの報道もあり、スペインのe-Sportsシーンは急速な加熱を見せつつある。

チーム「Valencia CF eSports」設立

発表された「Valencia CF eSports」のチームメンバーおよびスタッフは以下のとおり。

・Top: Francisco Javier “Moryo” Madero Heredia
・Jungle: Ignacio “Itsi” Garcia Vinas
・Mid: Isaac “xPePii” Flores Alvarado
・ADC: Adrian “Adryh” Perez Gonzalez
・Support: Javier “Reaper” Lopez Campos
・Jungle (Sub): Cesar “Fenec” Bautista Garcia
・Mid (Sub): Melvin “StoMe” Spaan
・ADC (Sub): Andre Marinho “Lastwolf” Falcao Ramos Costa
・ヘッドコーチ: Victor “Ukelele” Santamaria

MidのxPePii選手、ADCのAdryh選手はともにスペインのLCSチーム「Giants Gaming」にかつて所属していた選手だ。Giants Gamingは2015年春にEU LCSへと昇格したスペインのチームで、昇格時の立役者であった彼らは、今年のSpring Splitのチーム不振を受けて他チームへ放出されたり、補欠に下げられたりしていた。ジャングラーを務めるItsi選手は、スペインのプロバスケットボール組織「サスキ・バスコニア」が抱えていた『LoL』チーム「Baskonia eSports」(現在は解散状態)で活躍していたことのある名選手。Moryo選手・Reaper選手・Fenec選手・StoMe選手・Lastwolf選手は、スペインのChallengerチーム「wSystem e-Sports Club」のメンバーがそのままValencia CF eSportsに加入した形となっている。資料(PDFファイル注意)等を参照すると、StoMe選手はオランダ出身、Lastwolf選手はポルトガル出身だが、その他のメンバーはスタッフ含めて全員がスペイン出身であり、「スペインのチーム」というカラーを前面に出していることがうかがえる。

発表の中でバレンシアCF・e-Sports部門統括のSergio Benet氏は「Pepii選手やAdryh選手といった、LVP(スペイン最大の大会)やLCSへの昇格戦を勝ち抜いた実績のある選手たち、そして2015年のFinal CupでMVPを受賞したItsi選手といった面々のおかげで、私たちはとてもしっかりしたチームを作り上げられました。堅実な組織と経験豊かなテクニカルチームも擁しています」とコメント。またヘッドコーチであるVictor Santamaria氏は「バレンシアCFのカラーのもとに栄光をもぎ取る、素晴らしいチームを作ることができました。e-Sportsへと手を伸ばしたチームを代表するという、重大な責任を感じています」と語った。

現在のLCSレベル、ワールドクラスのチームには必ずといっていいほど外国人選手、特に韓国人選手の姿が見られる。この「ほぼスペイン人」チームがどこまで勝ち上がることができるかという点については、その点で若干の疑問が感じられる。しかし、プロスポーツ組織の手になるチーム運営で「どこまで勝てるのか」については、大きな興味をそそられるところだ。この夏よりドイツの「シャルケ04」傘下となりブランド名を背負うことになったEU LCS参加チーム旧名「Elements」は、大きな組織の後ろ盾を得て、下位チーム常連から中堅チームへとのしあがりつつある

完全新規のチームがLCSに参加するためには、まずスペイン国内の大会であるLVPを優勝しなければならない。優勝すればChallenger Seriesへの選抜大会資格を獲得し、この選抜を勝ち抜けばChallenger Seriesへと参加できる。そして1ヶ月にわたるリーグ戦およびプレイオフを勝ち抜き、ここまで来てようやくEU LCS下位チームとの入れ替え戦への参加資格を得ることができる。Valencia CF eSportsの勇姿をEU LCSで見られるのは、最速で来年の夏からになるだろう。新しく名前が出てきた選手たちも注目点ではあるが、しばらくの間プロシーンから遠ざかっていた選手たちが帰ってこられるかどうかにも注目したい。

スペインでのe-Sportsリーグ立ち上げの噂

さらに、Vandal eSportsの報道によれば、スペインのプロサッカーリーグ運営組織「リーガ・デ・フトボル・プロフェシオナル」が、e-Sportsリーグの立ち上げを準備中であるという。

記事内の「プロジェクトに近い情報筋」の話では、具体的な採用タイトルやリーグの正式設立時期は未定。しかしながら、2017年中頃~後半にスペイン国内を対象とした一国規模のe-Sportsリーグが立ち上がると見られている。

にわかに加熱しだしたスペインのe-Sportsシーン。国家そのものがe-Sportsに取り組んでいる韓国とはちがった動きだが、配信が盛んな北米などともまた違ったゲーミング文化を醸成しつつあるようだ。

近年のプロスポーツ組織e-Sports参入の動き
2015年1月 – 「Beşiktaş e-Sports Club」(トルコ)が『LoL』チームと契約
2015年4月 – 『LoL』International Wildcard InvitationalにてBeşiktaş e-Sports Clubが優勝、つづく国際大会MSIではグループステージ最下位
2016年1月 – 「サスキ・バスコニア」(スペイン)が『LoL』チーム「Baskonia eSports」を結成
2016年2月 – 「VfLヴォルフスブルク」が『FIFA』のプロ選手を2名獲得
2016年5月 – 「ウェストハム・ユナイテッド」が『FIFA』プロ選手と契約
2016年5月 – 「シャルケ04」がEU LCS参加チーム「Elements」を傘下に編入
2016年6月 – 「バレンシアCF」がe-Sports部門を創立
2016年6月 – ゲーミング組織「Fnatic」とマンチェスター・ユナイテッドが『オーバーウォッチ』プロチームの獲得争いをしているとの報道
2016年7月 – 「マンチェスター・シティFC」が『FIFA』若手プロと契約
2016年7月 – 「バレンシアCF」がe-Sports部門に『LoL』チームを結成