『ウマ娘』のスピード狂プレイ「バクシン教」が世界に羽ばたく。“絶望”した海外勢に響きわたるスピード崇拝

Cygamesは6月26日、『ウマ娘 プリティーダービー』の日本語版および英語版をPC(Steam)向けにリリース。英語版ユーザー間では、「バクシン教」がにわかに流行りはじめているようだ。

Cygamesは6月26日、『ウマ娘 プリティーダービー』の日本語版および英語版をPC(Steam)向けにリリースした。英語版はこれまで本作をプレイすることができなかった地域でもプレイできるとあって、連日盛り上がりを見せている。そんな中、英語版ユーザーの間に「Bakushin」と呼ばれる育成が流行の兆しを見せている。

『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)は、実在する競走馬たちの名前や魂を受け継いだウマ娘たちの物語を描くクロスメディアコンテンツである。ゲームでは、プレイヤーはウマ娘を育成するトレーナーとなり、トゥインクル・シリーズと呼ばれる約3年間の競争生活をともに歩むことになる。

本作は、2021年2月24日に日本国内でiOS/Android向けにリリースされた。それ以降、韓国・台湾・香港・マカオ・中国本土と、順次グローバルな展開を続けてきた。2025年6月に英語版が出たことで、北米・ヨーロッパ向けには実に4年越しにリリースされたかたちだ。

Image Credit: Maleficent_Tailor992 on Reddit

待望のリリースということもあり連日賑わっている英語版『ウマ娘』だが、海外ユーザーの間で「Bakushin」と呼ばれる育成方法がにわかに流行してきている。日本国内でもサービス初期に流行した、短距離レースで無類の強さを発揮するウマ娘「サクラバクシンオー」を、とにかくスピード重視で育成する手法のことだ。

ウマ娘にはそれぞれ、育成中に達成すべき目標となるレースが設定されている。サクラバクシンオーの目標レースのほとんどは短距離レースであり、スタミナなどの他のステータスを度外視して育成しても勝利しやすい。育成方針のわかりやすさと、サクラバクシンオーに設定されている目標とがうまく噛み合って、初心者でも勝ちやすいのだ。国内でも一部ユーザー間で“バクシン教”として、ネットミーム的に愛されてきたプレイスタイルとなっている。

さらに英語版ユーザーの間では、育成を有利にする「サポートカード」をすべてスピードタイプで揃える「スピード6枚編成」が流行している様子だ。海外掲示板Redditの『ウマ娘』コミュニティを覗いてみると、サポートカードすべてをスピードタイプで揃えているユーザーの姿を何人も確認することができる。サポートカードはスピード・スタミナ・根性のようにタイプが分かれており、同じタイプのカードばかりを使うとステータスが偏ってしまうことが多い。しかし「Bakushin」ではスピード以外は必要ないため、とことんまで特化しようというわけだ。

そんな「Bakushin」にすっかり心酔しているユーザーが多いのか、『ウマ娘』のゲーム中に存在する「ジュークボックス」機能で、サクラバクシンオーが歌う「バクシンバクシンバクシンシン」までもが流行している。本稿執筆時点の英語版『ウマ娘』のプレイスタイルは、「Bakushin」かそれ以外かといった様相を呈している。

本作は実は英語版では日本国内とはアップデート事情が異なり、育成シナリオは「新設!URAファイナルズ」のみ、実装済みのウマ娘もまだ少ない状況だ。海外における育成シミュレーションゲームというジャンルの珍しさもあり、多くのユーザーが育成を最後まで終えることができず苦労している様子である(関連記事)。

さらに、人気ウマ娘の一人「ハルウララ」の最後の目標レースとなっている有馬記念のエピソードで、ほとんど強制とも言える敗北と、ハルウララの健気な姿を目の当たりにして心を痛めているユーザーも多く見られる。ストーリーそのものはレースに出走するだけで進んでいくものの、サービス開始から4年あまりが経つ日本国内でさえ入念な準備をしなければ勝利できないほどの難度を誇る「裏目標」的なレースだ。

そうした苦渋を味わったユーザーが多くいたために、育成方針がシンプルでありながら勝利することができる「Bakushin」が、底抜けに明るいサクラバクシンオーの性格も相まって流行しているのかもしれない。ちなみに、英語版ユーザーの間では「Bakushin」以外にも、日本国内で『ウマ娘』がリリースされて間もない時期に流行したさまざまなネタが楽しまれている様子だ。ウマ娘ゴールドシップと競走馬ゴールドシップの比較画像や、耳飾りの意味と両耳に飾りがついているウマ娘について、ウマ娘たちの誕生日が特定の時期に集中している理由など、SNSや掲示板では攻略情報以外にもさまざまな話題が飛び交っている。

英語版『ウマ娘』の開始とともに、かつて日本国内のユーザーが楽しんだ多くの話題が海外でも同じように楽しまれているのは興味深い。今後どのような育成方法や話題が流行するのか、海外コミュニティにも引き続き注目したい。

ウマ娘 プリティーダービー』は、PC(Steam/DMM GAMES)/iOS/Android向けに配信中だ。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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