動物愛護団体PETAが急に“『ウマ娘』サイレンススズカの骨折イラスト”を投じ、猛批判を受ける。「現実を見て」と言いながら、事実と違うグロめイラスト
動物愛護団体PETAの公式Xアカウントは12月11日、『ウマ娘 プリティーダービー』についての投稿をおこない、その内容が物議を醸している。

動物愛護団体PETAの公式Xアカウントは12月11日、『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、ウマ娘)についての投稿をおこない、その内容が物議を醸している。競馬について批判視する主張が綴られており、添付されたイラストが『ウマ娘』の二次創作ガイドラインに違反しうる点でも反感を買っているようだ。
PETAは、1980年に米国ノーフォークにて設立された、動物の権利運動および動物保護などをおこなう団体だ。正式名称はPeople for the Ethical Treatment of Animals(動物の倫理的扱いを求める人々の会)。アジア太平洋地域を含む複数の国・地域に支部をもち、動物保護団体としては世界最大規模とされる。
今回PETAの公式Xアカウントが投じたのは、『ウマ娘』に関するポストだ。同団体はもしも本作が“現実どおり”だったならとして、「あなたのお気に入りのウマ娘には復活の物語はありません。競走馬のサイレンススズカに起こった出来事と同じように、イベントにひとつ失敗しただけでレースは永遠に終わりです。」と主張。あわせてウマ娘のサイレンススズカが脚を骨折したショッキングなイラストを投じている。

競争馬のサイレンススズカといえば1998年の天皇賞(秋)において、第4コーナーの手前で左前脚を骨折しレースを中止。治療法のない手根骨粉砕骨折とわかり、競馬場内で安楽死処置がとられた(朝日新聞)。
ウマ娘のサイレンススズカにおいても、骨折はアニメ「ウマ娘 プリティーダービー」の第1期で描かれている。ただアニメでは一命をとりとめるifストーリーになっており、長期離脱の末に復活を果たす。なおゲーム『ウマ娘』でも史実を意識したとみられる隠しイベントが用意されており、こちらでは骨折は描かれないものの重賞6連勝以上の状態でシニア10月後半の天皇賞(秋)に勝利することでステータス強化およびスキル「大逃げ」を獲得可能。“第4コーナー”に言及する特殊な実況も用意されている。
今回PETAはそうしたアニメおよびゲームにおけるifストーリーも踏まえて、ケガが命にかかわりうる競走馬の現実を覆い隠していると批判しているようだ。ゲーム『ウマ娘』では無理なトレーニングでケガが発生することもあるほか、連続出走時のデメリットも存在するものの、引退や安楽死となることはない。実際の競走馬にはそうした悲劇も起こりうることを示そうとしたのだろう。
とはいえ先述したPETAの投じたイラストは骨が脚を突き破っているショッキングな表現になっており、実際の競走馬のサイレンススズカの骨折時の状況とは大きく異なっている。脚色されているだけでなく、「ウマ娘」の二次創作ガイドラインにおいて禁止されている「暴力的・グロテスクなもの」や「特定の政治・宗教・信条を支援する、または貶めるもの」に該当しうる表現であり、PETAには批判も寄せられている。Cygamesはガイドラインにおいて違反する創作物についてやむを得ず法的措置を検討する場合もあると記載しており、今回のイラストについて公式フォームに通報したというユーザーも散見される。

PETAはこれまでにも、人気ゲームの表現に抗議表明するかたちで注目を集めてきた。たとえば今年には、『マリオカート ワールド』のウシの「鼻輪」について問題視し、デザインを変えるように公開書簡にて要請していた。このほか過去には『パルワールド』に向けては、「パルの肉を食べずに遊ぶガイド」を用意してほしいという要望を伝えていたこともある(関連記事1、関連記事2)。とはいえそれらは真面目な抗議というよりは一定のユーモアも交えた内容になっており、あくまで人気作に便乗して動物愛護の理念を広めるといった活動の一環とみられる。
ただ今回の『ウマ娘』に関するPETAのポストにはそうしたユーモアもなく、非業の死を遂げた競走馬を引き合いに出したことも、反感を買っている一因かもしれない。またイラストについても二次創作ガイドラインに違反しうる内容であり、大きな批判を招いている状況だ。
なお、JRA(日本中央競馬会)が2019年に公開した資料では、2003年~2017年におこなわれたJRAの平地競走における平地競走出走馬のうち、競走中の筋骨格系疾患が原因で安楽死となった頭数が示されている。データによると延べ出走頭数71万5210頭中0.139%にあたる、997頭が致死性筋骨格系疾患(CMI)を発症していたとのこと。ただ2003年~2007年の間では0.153%、2008年~2012年の間では0.151%、2013年~2017年の間では0.114%と年々減少傾向があったことも伝えられている。過去のデータではあるものの、競走中の致命的なケガの発生率のほか、ケガを減らす試みが続けられてきたこともうかがえるだろう。
【UPDATE 2025/12/11 16:57】
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