Twitchは「約10年間ほぼ利益なし」との報道。でも親会社Amazonは“ポテンシャル”に期待


Amazon傘下の配信プラットフォームTwitchについて、採算が取れていない状況が続いているという。The Wall Street Journalが報じている。

Twitchはライブコンテンツを提供する配信プラットフォームサービスだ。ゲームの実況配信などを中心に発展し、国内外の本業ストリーマーや一般ユーザーにも広く利用されている。またメーカーにも活用されており、eスポーツ大会などイベントの配信プラットフォームとしても利用されている。また音楽やアート、雑談など、ゲーム以外の分野でも使われている。


Twitchは、Twitch Interactiveが2011年より運営していたものの、2014年にAmazonが約9億7000万ドル(約1000億円、当時のレート)で買収。Amazon傘下に入ることとなった。その後TwitchとAmazonは連携を強化し、Amazonプライム特典として、Prime Gamingを提供。Prime Gamingでは、期間限定でのゲームの無料配信や、チャンネルのサブスクリプションが月額無料となるサービスが利用可能となっている。ちなみに2023年11月に日経クロストレンドで掲載されたTwitchのCCOを務めるLaura Lee氏へのインタビュー記事によると、毎月約700万人のストリーマーが配信しており、1日平均3500万人超のユーザーがTwitchを訪問しているという。

大手配信プラットフォームとして勢いを維持しているとみえるTwitch。一方で2024年1月には社内で500人以上の人員削減をおこなうと発表。組織の規模が必要以上に拡大しているとの判断のもと、全従業員の約35%におよぶ削減に踏み切っていた(関連記事)。人員削減の理由としては、ビジネス自体は好調ながら、現在の事業規模に比して組織が必要以上に拡大していたためと伝えられている。

この発表の際には、Twitch InteractiveのCEOを務めるDan Clancy氏が同社の状況を説明。「今のところ利益を得られていない(We aren’t profitable at this point)」ため、持続可能な運営を見据えて赤字の改善が必要であった旨も伝えられていた

そして今回、The Wall Street Journalは改めて、Amazonによる買収後Twitchがほとんど利益を上げられていないことを報じている。1月にClancy氏が述べたとおり、利益面で引き続き苦戦が続いている様子だ。またIGNは、Twitchでは近年、アメリカでのWebサイトの訪問者数ランキングの中でTwitchが下落し、広告収益やユーザー数が伸び悩んでいることが報じられているとも指摘している。

さらに同誌が関係者証言として伝えるところによると、収益源のひとつである大口の利用者についても、サブスクリプションやビッツ(仮想グッズ)などへの支出が減少しているとのこと。これらの事情により2025年末までに、Twitchの収益が2億5000万ドル(約387億円)近く減少する可能性もあるという。このことで、関係者からはTwitchがAmazonの「ゾンビブランド」、つまり経営破綻しているにもかかわらず親会社の支援を受けて存続し続ける企業となるのではないか、といった懸念もあるようだ。


一方でAmazonの広報担当者はThe Wall Street Journalに対して、同社ではまだTwitchの可能性に自信をもっているとのコメントを寄せたという。また先述のClancy氏の発言においても、同氏は「AmazonはTwitchを力強く支援してくれている(Amazon has been extremely supportive of twitch)」と伝えていた。買収後収益をほとんどあげていないとされるものの、Amazonには長期的な目線でTwitchの運営をサポートする方針もあるようだ。

ただ2024年2月にTwitchは、「運営コストが極めて高額」として、韓国でのサービス提供を撤退するという決定もおこなっていた(関連記事)。海外展開においても苦戦している様子がみられる状況だ。今後「黒字化」に向けてどのように舵を切っていくのかが注目されるところだろう。