Ubisoft、『The Crew』のサービス終了&プレイ不能を巡って訴えられるも反論。「オンライン必須なのはパッケージにも明記していた」として

オンラインサービスが終了され、プレイ不可となったUbisoftの『The Crew』を巡っては、米国で訴訟が提起されている。Ubisoftは訴訟の棄却を求め、裁判所に反論を申し立てている。

Ubisoftは2024年3月に、オープンワールドレーシングゲーム『The Crew(ザ クルー)』のサービスを終了。本作がプレイ不可となったことを巡って、同年11月にはユーザーがUbisoftを相手取り訴訟を提起していた。同訴訟においてUbisoft側が、裁判所に訴訟の棄却を申し立てる文書を提出したことが報じられている。

『ザ クルー』は、PC/PS4/Xbox One/Xbox 360向けに2014年12月に発売された作品だ。米国を舞台にしたオープンワールドマップにて、さまざまなレースミッションやオンライン対戦を楽しめる。その後シリーズ化され、第1作目である本作は2024年3月にサービスが終了された。1人でプレイすることも可能ではあったものの、常時オンライン接続を必須とする仕様により、サービス終了に伴うサーバーの停止によって完全にプレイ不可となった(関連記事)。

この件を巡り、米国カリフォルニア州東部地区連邦地方裁判所にて11月4日、同州在住の2人の原告がUbisoftを相手取り提訴した。原告は、それぞれ2018年と2020年に本作のパッケージ版を購入したユーザーだという。訴状にて原告は、本作のサーバーがいずれ停止され、オフラインではプレイできなくなることをあらかじめ知っていれば、同じ条件(価格など)にて購入することはなかったと説明。また原告は、Ubisoftがユーザーに対し、ゲームのライセンスが与えられているだけであるにもかかわらず、ゲームを所有しているものと誤解させ、さらにパッケージ版ディスクのゲームファイルには自由にアクセス可能だと虚偽の説明をしたとの主張をしていた。そうしてUbisoftを、カリフォルニア州の消費者保護法違反で訴えていた。


一方で今回、海外メディアPolygonが、Ubisoft側の代理人弁護士が裁判所に向けて訴訟の棄却を申し立てる文書(Motion to Dismiss)を入手したとしてその内容を報じている。文書のなかでは原告の主張に対するさまざまな反論も記載。原告の訴えは消滅時効になっており、認識可能な損害(cognizable injury)もないといった主張がおこなわれている。そしてそもそも『ザ クルー』のPlayStation/Xbox版それぞれのパッケージには、オンラインプレイが必須であることなどが明記されていたとも説明。Polygonの報道によると、文書には資料としてパッケージの写真も複数枚添付されていたという。

ちなみにゲームの関連情報集積サイトMobyGamesでは、オーストラリアで販売された本作Xbox 360版などのパッケージ画像を確認可能。パッケージ表面の左下には「Online Only」との記載が確認できる。またパッケージ裏面左下の注意書きを見ると、「Ubisoft may cancel access to one or more specific online features upon a 30-day prior notice published at www.thecrewgame.com.(Ubisoftは『ザ クルー』の公式サイトにて30日前に通知したうえで、ひとつあるいはそれ以上のオンライン要素へのアクセスを打ち切る可能性があります)」との記載も存在。こうした記載はほかのプラットフォームのパッケージ版にもあったようだ。

Image Credit: MobyGames


そしてパッケージ版にそうした記載があったことから、本作はオンラインプレイ必須であり、オンラインサービスの打ち切りの可能性も示されていたと主張されているわけだろう。『ザ クルー』がオンラインサービス終了に伴ってプレイ不可となることは明示されており、原告が訴えるようなユーザー側に「ゲームを所有しているものと誤解させる」ような売り方ではないという反論のようだ。なお、一連の反論についてはあくまで今回の訴訟の棄却申立てにあたって、Ubisoft側の代理人弁護士が裁判所に提出した文書内の説明という点には留意したい。

なお『ザ クルー』のサービス終了に際しては、当時“サポート終了されるとプレイできなくなるゲーム”の存在自体が問題視されはじめ、「Stop Killing Games」という運動に発展することとなった。同運動ではEUでの法案化を目指して「European Citizens Initiative(ECI)」に基づく署名運動が2025年7月31日まで実施中。ECIとは加盟国のうち7か国から100万人以上の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案できる制度であり、本運動は本稿執筆時点で約43万件の署名が集まっている。

そうしたユーザー側の猛反発についてはUbisoftも認識しているようで、シリーズ続編『ザ クルー2』および『ザ クルー:モーターフェス』については、「長期的なアクセス」を確保するためにオフラインモードなどの実装が検討されていることが明かされている(関連記事)。Ubisoft側としては、今後は『ザ クルー』のようにオンラインサービス終了によって作品をプレイ不可にするのではなく、ユーザー側に歩み寄るような解決策も模索しているのだろう。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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