Steamの従業員あたりの利益率が“異常なほど高い”との分析が報じられる。マイクロソフトやアップルなどをはるかに超える

Steamの「営業利益率」について、世界の大企業と比べ、非常に高い割合となっていることが報じられている。

PCゲーマーにとってはなじみ深いゲームプラットフォームであるSteam。そのSteamについて、運営元のValveは非常に高い利益率で収益を獲得しており、2021年時点では手数料だけで、スタッフ一人当たり年間約1000万ドル(約14億5000万円・以下すべて現在のレート)を優に超える利益をあげていたという試算が出ている。イギリスの経済紙Financial Timesが、訴訟関連資料をもとに試算し、報じている。

SteamはPC向けゲームプラットフォームだ。大人気FPS『Half-Life』シリーズなどを手がけるValveによって2003年から運営されている。インディーからAAAタイトルまで、パブリッシャー・デベロッパーやユーザーによって幅広く利用されており、PCゲーム市場ではトップクラスのシェアを獲得。またSteamDBの記録によれば、今年3月にはピーク時の同時接続プレイヤー数が4000万人を突破しており、“独占的”ともいえる立場は揺らがないものとなっている。

Financial Timesが報じるところでは、そんなSteamは世界的な大企業を凌ぐほどの高い「利益率」を誇っているそうだ。Financial TimesはWolfire GamesとValve間の訴訟で用いられたデータをもとに利益率の高さを分析している。

Wolfire Gamesは、Steamにおける売上の30%の手数料、いわゆる“ストア税”を巡って独占禁止法および不正競争防止法違反を訴えていた(関連記事)。一度はValve側の主張が通ったかたちだが、Wolfire Games は再度訴えをおこし、同様の訴訟と統一されるかたちで2024年11月に集団訴訟へと発展している(GamesIndustry.biz)。

この裁判資料では、Steam運営部門の人員について、16人での発足から2015年の142人となっていることが確認された。しかし人員は2015年を境に減少傾向。2021年時点では運営部門の人員が79名だったと記載されている(関連記事)。また公開されていた資料のなかには、Steamの手数料収入(commission revenue)と利益率(margin percentage)を表す情報もあったとのこと。とあるRedditユーザーが公開していた資料があり、Financial Timesは分析の上で妥当性があると判断したようだ。

Redditユーザー、Lumpy-Chipmunk3203氏が公開していたグラフ

グラフを確認すると、2021年度のSteamでは、手数料収入が20億ドル(約2900億円)に迫る数値となっていることがうかがえる。また営業利益率(Operating margin percentage)は約60%となっており、概算で約12億ドル(約1730億円)の利益があったことがわかる。もし仮に、Steamが先述の運営部門79人のみで運営されていたとして、利益を分配すると約12億ドル/79人で、ひとりあたりおよそ1500万ドル(約21億7000万円)の利益をあげていることになる。Valveの2021年度の全社員336人で割ったとしても、ひとりあたり約360万ドル(約5億2000万円)と、高い利益をたたき出しているといえる。

ちなみに他企業の従業員ひとりあたりの利益として、参考までにマイクロソフトでは2021年度に約700億ドル(約10兆円)の営業利益を計上していた。2021年当時の従業員数は約18万1000人とのことで、計算すると約39万ドル(約5600万円)だ。また2024年度のデータと、時期は違うものの、アップルについては営業利益が約1230億ドル(約18兆円)で、従業員数は約16万人とのこと。ひとりあたりに換算すれば約77万ドル(約1億1000万円)だ。

当然部門ごとの利益率や、会社の規模によって営業利益や利益率の高さは異なるうえ、この値がそのまま従業員給与となるわけではない。とはいえSteamはほかの世界屈指の大企業と比較しても、10倍ではきかないほどの利益率を誇っており、その異様さがうかがえる。なお、Valveは大手ゲーム会社として他社よりはるかに従業員が少ない、いわば少数精鋭の体制を取っている様子だ(関連記事)。その点も、従業員あたりの営業利益を跳ね上げる一因だろう。

なお統計サイトVG Insightsの予測によれば、Steamは2026年には総収益が100億ドル(約1兆4500億円)を超えると目されている。Steamの成長は留まる様子を見せず、手数料による収入も比例して伸びていくだろう。そんなSteamの好調度合いが、利益率の観点より示されたのは興味深い。近年ではSteam Deckのリリースなどといった新たな取り組みも見られ、今後ValveおよびSteamがどのように発展していくのか注目が寄せられるところだ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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