あるゲーム開発者が「2年半前に発売したゲームが今爆売れしている」と大喜び。“Steamがくれるチャンス”と、その最大化方法とは

個人ゲーム開発者のJordan O'Leary氏は7月28日、自身の開発したゲーム『Spellmasons』がリリースから2年半後にヒットしたとして、一連の準備や得られた結果などについて細やかに報告している。

個人ゲームデベロッパーJordan O’Leary氏は7月28日、自身の開発したゲームSpellmasonsがリリースから2年半後にヒットしたとして、一連の準備や得られた結果などについて海外掲示板サイトRedditに投稿した。それまでSteam同時接続プレイヤー数が数十人程度で推移していた作品に、過去の何十倍ものプレイヤーが詰めかけた珍しい事例として注目が集まっている。

『Spellmasons』は呪文を組み合わせて戦うターン制戦略ローグライクゲームだ。対応プラットフォームはPC(Steam)で、ゲーム内は日本語表示に対応、最大8人のオンラインマルチプレイも可能となっている。プレイヤーは1ターンにつき最大3つの呪文を組み合わせて発動することが可能で、組み合わせにより多彩な戦術を生み出すことができる。たとえば自分を取り囲むように敵がいる状況で、「遠くにいる敵と位置を入れ替える」「魔法範囲を拡大」「ターゲットを中心に攻撃」という3つの呪文を組み合わせて、自分は位置入れ替えで攻撃範囲から離脱しつつ、敵だけを巻き込む広範囲攻撃を繰り出すといった具合だ。

そんな『Spellmasons』は、本稿執筆時点でSteamユーザーレビューは約680件、そのうち92%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得している。しかし多くの好評レビューを集めながらも、プレイヤー数は伸び悩んだ。2023年1月31日のリリース以来、Steam同時接続プレイヤー数は多いときでも100人台、平均的には20〜30人という時期が長く続いてきた(SteamDB)。数十人とはいえプレイヤー数をキープし続けてきたのは、Jordan氏が2年以上に渡って継続的にアップデートをおこなってきたことに起因するだろう。

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そんなある日、同氏にSteamから「日替わりスペシャル」への掲載を打診するメールが届いたという。理由についてはよくわからないようで、同氏は2024年12月ごろにTikTokに投稿した動画が拡散されて売り上げが上がったためではないかと予想している。

「日替わりスペシャル」は、Steam側で特別に選ばれたゲームのセール情報が、日替わりでトップページに掲載されるという仕組みである。2025年2月にスペシャル枠が6つに拡大されたが、それでも選ばれるのが難しい特別なセール枠であることに変わりはない(関連記事)。ひとたび掲載されれば1000万回以上ものインプレッションが期待できるとされ、その宣伝効果はとてつもなく大きい。

しかし、ゲームがそのまま日替わりスペシャルに掲載されても、思わしい結果は得られないだろうとJordan氏は予想した。『Spellmasons』には、プレイヤーが分身したり、敵が分裂して増殖したりといった、サーバーに高い負荷をかける仕様が存在している。もしも何も対策しないままプレイヤーが急増すれば、マルチプレイで思ったように遊ぶことができず、低評価レビューが増えてしまう可能性があったようだ。

また、日替わりスペシャルのドキュメントには、アップデートに合わせて実施すると効果的であると記載されている。そこでJordan氏は日替わりスペシャルの実施を可能な限り遅く設定。許された約6か月の間に、しっかり準備することにしたのだ。まず、大量のプレイヤーを受け入れられるようにマルチプレイを支えている部分を作り直し。これだけで数か月かかったという。同時に、注目を集められるような大型アップデートとするため、まったく新しい体験ができるプレイアブルキャラクター2名を追加する計画を立てた。

大型アップデートが配信されたのは日本時間7月15日、日替わりスペシャル開催のおよそ2週間ほど前のことである。あえて少し早めにアップデートをおこなったのは、日替わりスペシャルに備えてアップデート後に懸念されるバグ修正をすませておくためだったそうだ。事実、セール開始までに複数回のアップデートが配信されている。

また、大型アップデートをアピールするためにアートワークオーバーライド(ストアページのサムネイルの一時的な変更)をおこなったほか、英語以外の言語でストアページを見たときの翻訳も見直したという。準備万端というわけだ。

そしていよいよ日替わりスペシャルのセールが開始。その効果は絶大で、約1900万回のインプレッションを獲得、そのうち約1.3%にあたる約24万6000人がストアページを訪れることとなった。約1万4000件のウィッシュリスト登録、そして約1万2000本の販売を記録し、1日で約3万8000ドル(約570万円)の収益をあげた。大成功と言えるだろう。

今やSteam上では毎日のように新しいゲームがリリースされており、その中で注目を集めることは非常に難しい。リリースから時間が経ったゲームであれば、なおさらである。2年半越しのプレイヤー数急増を報告するJordan氏の投稿には注目が集まり、多くの賛辞が寄せられている。

ちなみにJordan氏が日替わりスペシャルに備えて実行してきたことや、その後のアナリティクスの数字などは、詳細を報告する同氏の投稿に基づいている。同じように悩みを抱えているインディーデベロッパーの助けとなることを願って、細やかに報告をおこなったとのこと。興味のある人は投稿内のデータもチェックしておくといいだろう。


『Spellmasons』はPC(Steam)向けに配信中。先述のセールは現在も実施中で、8月2日までの期間限定で定価の75%オフとなる税込500円で購入可能だ。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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