「Steamは“積みゲー”ビジネスだから勢いが凄い」とのアナリスト分析。可処分時間がなくても関係ない

Chris Zukowski氏はSteamについての分析と見解を記事として公開した。同氏によれば、Steamは“積みゲー”を生み出すビジネスで成長しているとのことだ。

ゲームマーケティングアナリストのChris Zukowski氏は自身のブログで、Steamについての分析と見解を記事として公開した。同氏によれば、Steamは買ってもプレイしないゲーム、いわゆる“積みゲー”を生み出すビジネスとなっているため、プラットフォームとして強力なのだという。GamesRadar+が報じている。

SteamはPC向けゲームプラットフォームだ。大人気FPS『Half-Life』シリーズなどを手がけるValveによって2003年から運営されている。インディーからAAAタイトルまでさまざまなタイトルが展開され、ユーザーだけでなく開発者にも幅広く利用されている。PCゲーム市場ではトップクラスのシェアを獲得しており、SteamDBの記録によれば、今年3月にはピーク時の同時接続プレイヤー数が4000万人を突破した。

そんなSteamについて、Chris Zukowski氏がSteamの強みを分析する記事を公開した。Zukowski氏はゲームマーケティングのアナリストであり、2011年よりインディーゲーム制作に携わっているという開発者の側面も持っている。

Zukowski氏によれば、Steamはプラットフォームとして強大で、他プラットフォームに比べてインディーゲームにも多くの利益を落としているという。その理由として同氏は、熱狂的な趣味人層(super die hard hobbyists)を築き上げたからだと表現。ここで同記事での趣味人とは、特定の趣味について金銭の消費を気にしない人のことを指している。

Zukowski氏は「レゴ」や『Warhammer 40,000』などといった玩具、ミニチュアなどのセットを購入したまま完成させないユーザーたちが用いる、「Pile of Shame」(恥の山)という概念に着目。編み物愛好家が作品を作らず毛糸ばかり集めてしまう“ストック”や、読書愛好家の“積ん読”なども、同様の概念と言える。Zukowski氏は、Steamでも同様の事象が起きていると指摘する。

Zukowski氏は、リリース予定のゲームの体験版が数多くリリースされるイベント「Steam Nextフェス」に参加したゲームについてのアンケートを実施。同氏のまとめた結果によれば、1436人中907人も体験版をウィッシュリストに追加したにも関わらず、実際にその体験版をプレイしたのはそのうち139人に過ぎなかったようだ。この結果について同氏は、無料でプレイ可能な体験版すらプレイしないのは、趣味人が「コレクション」そのものに満足感を覚えるからだと推察。Steamユーザーはたとえプレイしないと内心でわかっていても、隠れた名作を見つけてコレクションに加えること自体に楽しみを覚えるのだろうとの考えを述べている。

つまり、比較的無名なインディーゲームだとしても、ユニークなゲームであるとSteamユーザーに認められれば、“積みゲー”需要によって、売上を伸ばす可能性があるということだ。実際に海外メディアPCGamesNの試算によれば、2024年時点のSteamにおける“積みゲー”の総額は190億ドル(約2兆8000億円)存在するのではないかと伝えられていた(関連記事)。

さらにゲーム開発者向けのマーケティング調査機関GameDiscoverCoが2024年に報じた記事によれば、Steamのライブラリにあるゲームのうち、実に平均で32.7%が未プレイのままだといい、中央値のプレイヤーは半分を超す51.5%が未プレイの状態だという。これらのデータは概算であったり、独自の調査に基づくものだ。そのためすべてが正確なものとは限らない点には留意したい。とはいえ、「買うだけ買って、遊ばない」ゲームの数の多さや、“積みゲー”の金額的規模の大きさがうかがい知れるデータとなっている。

なおSteamでは、季節ごとに大型セールが実施される以外にも、月に数回、テーマに沿ったタイトルのみが割引となるイベントフェスが実施される。加えて特定パブリッシャーのタイトルがお安く購入できるパブリッシャーセール、複数ゲームを割引価格で購入できるバンドルの存在もある。すぐにそのゲームをプレイするつもりはなくても、ウィッシュリストに登録したり、購入したりする機会がふんだんに用意されているわけだ。

昨今ではライブサービスゲームの台頭で、ユーザーが買い切り型ゲームよりもライブサービスゲームのプレイ時間を優先する傾向もみられるという(GamesIndustry.biz)。またそのほかの娯楽もあるなかで、ゲーム業界もいわゆる“可処分時間の奪い合い”を意識せざるを得ない状況といえるだろう。その一方で“積みゲー”としてコレクションする需要があり、またそうした客層を把握してさまざまな施策が打ち出されているとみられる点は、Steamの成長の秘訣かもしれない。

ちなみにSteamDBでは、ユーザープロフィールを入力することで、購入したゲームのうちいくつをプレイしたかが確認できる。また数多の“積みゲー”が実際に遊びきれるかについては、非公式統計サイトHowLongToBeatを用いて疑似的に計算することも可能だ(弊誌YouTubeチャンネル)。このほかSteamでは消費金額をドル単位ながらチェックすることも可能(関連記事)。いったいどれほどの数のタイトルを積んでいるかといった“積み具合”を調べてみるのもいいかもしれない。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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