スクウェア・エニックス、“元フロントミッション”ことメカSRPG『鋼嵐』の配信元を訴える。開発中止時のアセットが流用されているとして

スクウェア・エニックスが、『鋼嵐 – メタルストーム』(以下、鋼嵐)の配信元HK TEN TREE LIMITED(以下、TEN TREE)に対して訴訟を提起していたことが明らかとなった。スクウェア・エニックス側は、開発中止された『フロントミッション』シリーズ作品のアセットなどが『鋼嵐』に流用されているという主張に基づき、TEN TREEの著作権侵害を訴えている。Polygonなどが報じている。
『鋼嵐』は、ST(Steel Thyella・鋼嵐)と呼ばれるメカで戦う戦略RPGだ。小惑星の墜落によって生まれたミハマ島で発見されたシエラム元素によって、従来からあったメカの性能が大幅に向上。そしてミハマ島は、各勢力が貴重な資源を巡って争う激戦地へと化した。本作には、ノース連合に所属する主人公カイ・ニューマンや、ヴァルキリーという異名で畏れられる女戦士ローズ・デイズなど個性豊かなキャラクターが登場し、それぞれの思惑が交錯する物語が展開される。
本作の戦闘は、グリッド状のフィールドにてユニットを配置・移動しながら戦うターン制バトルだ。プレイヤーは指揮官となり、多彩なタイプが存在するSTに、さまざまなジョブをもつ操縦士たちを乗せて小隊を結成。パーツを狙って攻撃する戦略が可能な戦いを通して敵STを撃破し、ステージごとの勝利条件を満たすことを目指すのだ。
本作は昨年10月23日にiOS/Android向けにリリースされ、11月25日にPC(Steam)向けにも展開された。一方でそんな本作の配信元TEN TREEに対し、スクウェア・エニックスが米国で訴訟を提起したことが報じられている。スクウェア・エニックスが裁判所に提出したとみられる文書によると、同社はTEN TREEによる著作権侵害を訴えているようだ。
というのも『鋼嵐』は、元々スクウェア・エニックスのライセンスに基づき『フロントミッション』シリーズの新作『Front Mission: Borderscape』として開発されていたタイトルを前身にしているとみられる。今回の文書でもスクウェア・エニックス側は、Shanghai Zishun Information Technologyと『フロントミッション』のライセンス契約を結び、『Front Mission: Borderscape』が開発されていたことに言及。しかし2022年10月にライセンス契約は破棄され、開発されていた作品も棄却されるはずだったという。
一方で同作の開発プロジェクトは、『钢岚(Mecharashi)』にタイトルを改めて継続された模様。中国向けに2023年にリリースされ、先述したとおりグローバル向けには『鋼嵐』としてリリースを迎えた。スクウェア・エニックス側は今回の訴訟において、『鋼嵐』において『Front Mission: Borderscape』におけるアセットが流用されていると主張し、著作権侵害を訴えている。

なおスクウェア・エニックス側は、『鋼嵐』においてメカのデザインだけでなく、キャラクターやゲームメカニクスなども『Front Mission: Borderscape』から流用されたと見ているようだ。文書では上述の画像のように、『Front Mission: Borderscape』のスクリーンショットと『鋼嵐』における類似点も指摘された。そうしてスクウェア・エニックス側は、裁判所側に対して『Front Mission: Borderscape』の権利侵害についての差止命令を求めているほか、TEN TREEに対して損害賠償を請求する構えを見せている。
このほか文書のなかでは、スクウェア・エニックスが3月4日に東京地方裁判所でも同様の訴えを提起したことが明かされた。またValveに対しても本作を巡ってDMCA(デジタル・ミレニアム著作権法)に基づく通告がおこなわれたそうで、本稿執筆時点では11月25日より配信されていた本作のSteamストアページは閲覧できなくなっている。ただ公式ランチャーおよびApp Store/Google Playでは引き続き配信されているようだ。
『鋼嵐』は、開発中止となった『Front Mission: Borderscape』が前身とみられることからもかねてより一部から注目を集めていた。『Front Mission: Borderscape』においてライセンスのもとで制作された要素が流用されているというスクウェア・エニックスの主張について、各国の裁判所がどのように判断を下すのか、今後の動向も注目される。