「スクエニがグローバル的批判を避けるために『ニーア』のキャラデザを制限した」と誤った報道がなされ、ヨコオタロウ氏が困惑。そんな制限はない
配信における、とある発言が誤って解釈され、海外メディアにより拡散されている。

SHIFT UPは6月10日、PC版『ステラーブレイド(Stellar Blade)』のリリースを記念し、プロデューサークリエイティブ対談動画を配信した。同配信において、『NieR』シリーズプロデューサー齊藤陽介氏の発言が誤って解釈されて海外メディアに拡散されてしまい、同シリーズディレクターのヨコオタロウ氏が後日否定するという一幕があった。
『ステラーブレイド』は、侵略者から地球を取り戻すために戦うアクション・アドベンチャーゲームだ。コロニーから降り立った兵士イヴは、地球に残った生存者アダムや、かつて空挺部隊の隊員であるリリーと協力し、侵略者に立ち向かっていく。本作は2024年4月にPS5向けに先行リリースされ、2024年11月には『NieR:Automata』とのコラボDLCが配信 。そして6月12日のPC版発売にあわせて、『勝利の女神:NIKKE』コラボDLCも配信された。
そんなコラボを記念した対談動画が6月10日に配信された。同配信ではSHIFT UPのCEOであり、『ステラーブレイド』ディレクターのキム・ヒョンテ氏と、『勝利の女神:NIKKE』ディレクターのユ・ヒョンソク氏、司会として元SIE吉田修平氏が出演し、コラボの詳細について語られている。そして配信の途中からはサプライズゲストとして、『NieR』シリーズプロデューサーの齊藤陽介氏と、同ディレクターのヨコオタロウ氏が登場。それぞれの作品についての、さまざまな思いや制作スタンスについて語り合う内容となっている。
この配信における、とある発言が誤って解釈され、海外メディアにより拡散されている。拡散元の記事には「『NieR』シリーズのプロデューサーいわく、開発チームは国際的な非難を避けるためにキャラクター作成に厳格なルールを設けた(‘NieR’ Series Producer Says Dev Team Established Hard Rules For Character Creation To “Try And Avoid” International Outrage)」といったタイトルが付けられている。文脈としては、いわゆるグローバルスタンダードに合わせるに、パブリッシャー側が開発者側に表現規制をした、という風に受け取れるわけだ。しかし番組を見てみると、齊藤氏はそうした意味の発言はしていない。どうやら映像の30分15秒ごろからの発言が誤訳されたようだ。
実際の配信においては“厳格なルールを設けた”といった意味とは逆の発言となっている。まず、吉田修平氏からのキャラクターのビジュアル面で工夫した点を聞きたいという質問に対して、ヨコオタロウ氏は「欧米で海兵隊のSF作品が溢れているならゴスロリみたいな格好にする」といった、市場が被らないような逆張りを目指していると回答。それを補足するかたちで、齊藤陽介氏から先述の発言に該当する回答がおこなわれている。
齊藤氏は日本語で「倫理的・道徳的にまずいものはルールのもとで良し悪しを判断する」と発言しており、これは残虐表現や差別を助長するような表現、年齢的に問題のある表現など各社でも一般的におこなわれる判断を指すのだろう。続いて、「日本ではOKでも海外の一部地域ではNGなキャラもいるものの、それは極力ダメにしないようにしている」と発言。つまり、「日本でOKなら極力通す」という意味であり、この発言が逆の意味で拡散されてしまっているのだ。
というのも、同配信では埋め込みの英語字幕が付けられており、先述の「ダメにしないようにしている」という発言中に表示される字幕には、「These are the kind of situation we usually try to avoid creating」と表示されている。日本語に訳すと「こうした状況を我々は通常作り出さないようにしている」であり、日本ではOKでも海外では問題がある可能性があるのでそういう状況を作り出さない、つまり「日本でOKでも海外に合わせてNGを出す」という意味に取られてしまったようだ。
なおそうした報道を受けて、ユーザーはヨコオタロウ氏に対して先述した厳格なルールがあるという記事を持ち出し、スクウェア・エニックスが自由にデザインさせてくれないのは本当かと質問。ヨコオタロウ氏は「そんな話聞いたことがないですね……」と反応している。先述のとおり齋藤氏も「極力通す」といった旨を伝えており、海外メディアが報じたような“厳格なルール”は設けられていないと思われる。
日本人クリエイターの発言が誤訳記事として発信されるケースはしばしばみられ、最近では「堀井雄二氏が『クロノトリガー』のリメイク情報を発言した」という誤報道もあった(関連記事)。今回のケースでは「ダメにしない」という二重否定がうまく翻訳されなかったことが原因と考えられる。それぞれ、異なる言語間で翻訳や通訳の際にニュアンスが変わってしまう難しさも垣間見えるケースだろう。ただし、センシティブなトピックであるだけに、より適切なニュアンスで広まっていってほしいところだ。
『ステラーブレイド』はPC(Steam/Epic Gamesストア)およびPS5向けに配信中。『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』は、PC(Steam/Microsoft Store)/Nintendo Switch/PS4/Xbox One向けに配信中だ。