大ヒット麻薬密売シム『Schedule I』に対し権利侵害の可能性を示していたゲーム会社、「訴える気はない」と表明

麻薬密売シミュレーションゲーム『Drug Dealer Simulator』シリーズのパブリッシングを手がけるMovie Gamesは4月8日、『Schedule I』を開発するTVGSについて、法的措置を取らない方針を明らかにした。

麻薬密売シミュレーションゲーム『Drug Dealer Simulator』シリーズのパブリッシングを手がけるMovie Games S.A.は4月8日、類似ジャンル作品『Schedule I』による知的財産権侵害の可能性を巡った一連の騒動について言及。その中で、『Schedule I』を開発するTVGSを訴えない方針が明らかになった。

『Drug Dealer Simulator』シリーズは、シミュレーションゲームを多数手がけるMovie Gamesが展開する麻薬密売シミュレーション。薬物を製造するアジトを築き、ギャングとして成り上がる作品だ。1作目の『Drug Dealer Simulator』および、オープンワールドで協力プレイが可能な続編『Drug Dealer Simulator 2』がリリースされている。

そして、『Schedule I』は、薬物の密売をテーマにした一人称視点のシミュレーションゲーム。ドラッグの製造・販売を通して薬物帝国を築き上げ、お金もモノも人脈もない状態から暗黒街の頂点を目指していく。インディー作品ながら多くの注目を集め、発売日からランキングにその名を轟かせている大ヒット作だ。非公式データベースSteamDBによると、本稿執筆時点での最大同時接続プレイヤー数は約45万人にものぼる。

先日4月3日、Movie Gamesがポーランドの報道機関PAP Biznesにプレスリリース(ポーランド語)を投じた。それによると、同社は知的財産および不正競争を専門とする法律顧問からの報告を受け、『Schedule I』が同社の知的財産権を侵害している可能性などがあることを確認したという。同じ「麻薬密造」をテーマにしたシミュレーションゲームとして、著作権侵害にあたるとみられる類似点が複数見つかったとのこと。同記事ではTVGSが拠点とするオーストラリアの法律の専門家と連携していくことなども伝えられており、訴訟の可能性が示されていたかたちだ(関連記事)。

こうした報道の後には、『Schedule I』開発元のTVGSを相手取ったMovie Games側の方針に反対するユーザーによって、『Drug Dealer Simulator』シリーズのSteamユーザーレビューに低評価レビューが殺到。いわゆる“レビュー爆撃”に発展していた。

『Drug Dealer Simulator』のSteamユーザーレビュー

この状況を受けてか、Movie Gamesは『Drug Dealer Simulator 2』のSteamストアページに「『Schedule I』に関して:訴訟なし」と題してニュースを掲載。TVGSへの訴訟は起こすつもりはなく、販売・開発を阻害するつもりはないとの姿勢を示した。またTGVSへの敵意は持っておらず、むしろ同スタジオには『Schedule I』のリリース直前にお祝いのメールを送っていたという。

そんなMovie Gamesが『Schedule I』の知的財産権侵害の可能性を巡って調査を表明した背景には、ポーランドの株式市場通信システムである「ESPI(Electronic Information Transfer System)」の存在があるようだ。同システムでは、透明化を図るために情報の開示が義務づけられているとのこと。そのため『Schedule I』と『Drug Dealer Simulator』シリーズとの類似点が指摘される中で調査をおこなわなかった場合、Movie Gamesに過失があるとして不利な状況になる可能性があったという。加えてこの調査を開始するにあたっても、情報を公開する義務があったとしている。つまりMovie Gamesに訴訟を目的とした意図はないものの、知的財産権の侵害の可能性があったために、調査の必要に迫られたということだろう。

『Schedule I』

ちなみにMovie Gamesは当初の発表において、『Schedule I』にはゲームのプロット・メカニクス・UIなどを含む、多数の要素で知的財産権侵害の疑いがあったことを伝えていた。また同社の権利を保護し、権利侵害について追求することを目的とした取締役会の決議を採択したことを表明していた。

こうした当初の発表についてはメディアに報じられることになったものの、あくまでMovie Games側には訴訟に発展させる意図はなかったようだ。なお同社は今後もESPIの義務に則って、ゲームの類似に関する調査をおこない、仮に法律違反などが確認された場合、必要な行動をとっていくとの姿勢を示している。

今回の騒動に関しては、Movie Gamesはあくまでも会社としての責務に沿った行動をとったに過ぎないとの立場を表明したかたち。すでに訴訟は起こさないとの方針を見せていることから、もしも知的財産権の侵害が確認された場合でも、穏便に事態の収拾をはかる方針があるのだろう。今後のMovie Games側の調査を含め、動向は注目される。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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