『ポケモン』公式、「間違えられがちなレックウザの英語発音」を大公開するも、謎の反発。「レイクウェイザー」を受け入れられない「レイクワァザー」派

『ポケットモンスター』シリーズに登場するポケモン「レックウザ」について、公式が示した英語発音に注目が集まっている。

『ポケットモンスター』シリーズに登場するポケモン「レックウザ」について、公式によって「発音を間違えられるポケモン」として紹介され、英語名の正しい発音が示されることになった。この背景には、長らくコミュニティに“誤った発音”が定着してきたことがあるようだ。

8月15日から8月17日にかけて、アメリカ・カリフォルニアにて「ポケモンワールドチャンピオンシップス 2025」が開催された。同イベントでは、ゲーム、カードゲーム、『ポケモン GO』、『ポケモンユナイト』の4つの部門の世界大会を実施。なお来年からはゲーム部門対象ソフトが『ポケットモンスター スカーレット&ヴァイオレット』に代わって『Pokémon Champions』となることが発表されている。

そんな同イベントでは、とある発表が注目を集めることとなった。大会の試合の合間、会場内のスクリーンにて「MISPRONOUNCED POKÉMON(発音を間違えられるポケモン)」としてレックウザが紹介されたのだ。そしてその発音は、「ray-KWAY-zuh」と表記されており、日本語で表すのであれば「レイクウェイザー」といったところだろう。

そして海外の『ポケモン』公式Xアカウントでは、この発表に対するユーザー反応を引用。こちらでも改めてレックウザの英語発音が「レイクウェイザー」であると強調された。しかし、これに対してユーザーの間では複雑な感情が渦巻いている模様。なかには「レイクワァザー(ray-kwah-zuhあるいはray-cuah-zuh)」と呼んだほうがしっくりくるとして、公式で示された発音に“対抗”するユーザーも現れている。

というのも英語圏のコミュニティにおいては、レックウザの発音の正解がわからないという問題が根付いていた模様だ。たとえばRedditの『ポケモン』ファンコミュニティにおいては、11年前に「レックウザをどう発音してる?」と呼びかけるスレッドが投じられていたことが確認できる。投稿者の友人は「レイクウェイザー」と発音していたそうだが、投稿者自身やほかの知り合いはすべて「レイクワァザー」と呼んでいたとのこと。スレッド内でも“レイクワァザー派”が多くコメントを寄せており、「レイクウェイザー」の発音が主流だったとはどうやら言えないようだ。


なおレックウザの名前が初めて英語圏に登場したのは、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』が北米で発売された2003年3月。当時ゲーム内では「Rayquaza」というテキストのみが与えられ、ユーザーの間では英語の一般的な音韻規則に倣い、「レイクワァザー」と呼ばれることも多かったようだ。ポケモンとしてのレックウザといえば、両作においてクリア後に出会うことになる隠し要素的な存在。公式から存在が明かされ、アニメ作品などに登場するまでの“タイムラグ”で、当時のユーザー間に「レイクワァザー」という呼称が定着した可能性はある。

その後公式媒体にて正しい発音で、すなわち「レイクウェイザー」と呼ばれたケースもあったようだが、そもそも公式によって名前が呼ばれること自体が少なかったとみられ、“レイクワァザー派”も根強かった様子。どちらが正しい発音であるかファンの間では議論が続けられてきたわけだ。

しかし近年では、公式から正しい発音が示される例も徐々に増えている。2012年にリリースされたニンテンドー3DS向けソフト『ポケモン全国図鑑Pro』には、収録されている全ポケモンの名前を6か国語で読み上げる機能が搭載されており、ここでは「レイクウェイザー」と呼ばれているという。また、シリーズ25周年を記念して2021年にYouTubeで配信されたアニメシリーズ「Pokémon Evolutions」の第6話英語版では、レックウザを召喚しようとするヒガナの口から「レイクウェイザー」と発音されている。そのほか、サトシに代わりリコとロイを主人公とした新アニメシリーズ「ポケットモンスター」においてもレックウザが登場。近頃ではレックウザの名前が英語で呼ばれる機会が多くなってきた。


ちなみに、そもそも英語名の「Rayquaza」という名前は「ray(光線)」と「quasar(準星)」という天文学とゆかりのある単語2つを組み合わせた名称であると考えられている。「quasar」の英語での発音は「kwéizɑːr(クウェイザー)」。この点から、公式の発音を知らずとも「レイクウェイザー」の発音のほうが正確ではないかと推察していたユーザーもいるようだ。

いずれにせよ、今回は「ポケモンワールドチャンピオンシップス 2025」という大舞台で、発音が間違えられがちなポケモンとして公式直々にレックウザの正しい発音が示されたかたちだ。ファンの間では慣れ親しんだ発音「レイクワァザー」を捨てがたいからか意固地になるユーザーなど、さまざまな反応が寄せられている。

なお、ポケモンの名前の発音を巡っては、英語圏ではほかにもさまざまな議論が繰り広げられてきた模様。同じく伝説のポケモン「アルセウス」の英語発音は公式には「アーキーウス(ar-KEE-us)」とされつつ、「アーシーウス」や「アーケイウス」などの派閥も生まれている

『ポケットモンスター』のゲーム作品では基本的にポケモンの名前が音声で呼ばれることはないものの、日本語版ではイントネーションはともかく綴り通りの読み方ができるようになっている。一方で英語などの綴りから発音を特定できない言語では、アニメなどほかの媒体を通して公式発音を知るしかない。同じポケモンでも言語の違いで、コミュニティ内で公式の想定とは異なる独自の発音が定着していったという点は興味深い。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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