サウジアラビアの任天堂大株主、株を買い増すと思いきや、一部売却していた。“買い増し検討報道”から一転して


サウジアラビアの政府系ファンドPublic Investment Fund(PIF)が、任天堂などの日本のゲーム会社株式の買い増しを検討していることが10月5日に共同通信によって報じられていた。一方で10月8日には、買い増しを検討するという報道から一転し、PIFが任天堂の株式を一部売却していたことが明らかとなった。

PIFは、1971年に設立されたサウジアラビアの政府系ファンド。現在はサウジアラビアの皇太子であるムハンマド・ビン・サルマン氏が会長を務めている。同氏は日本のアニメやゲーム好きと知られ、PIFはテンセントやActivision Blizzardのほか、カプコンやネクソン、コーエーテクモホールディングスなどゲーム業界に幅広く投資をおこなってきた。


共同通信は10月5日、PIF傘下のSavvy Games Groupの副会長であるファイサル・ビン・バンダル王子とのインタビューに基づき、PIFグループが任天堂など日本のゲーム会社株式の買い増しを検討していることを報じた。ファイサル王子は「最高のノウハウを持つ企業とともに成長していきたい」としつつ、投資は急いでおらず、友好的な買い増しを目指すと述べていたという。

一方でその後10月8日、そうした報道とは裏腹に、PIFが任天堂株の一部を売却していたことが明らかになった。10月8日に開示された変更報告書によると、報告義務発生日は10月1日で、PIFの任天堂株の保有率は8.58%から7.54%に減少したとのこと。Bloombergの報道では売却されていた期間は8月21日から10月1日までで、同誌の見立てによると売却株式数は約1730万株にのぼるという。

PIFは昨年2月に任天堂株を買い増しし、8%以上を保有するかたちとなっていた(日経)。そこから1%以上の株式売却に至った理由は不明。Bloombergが証券アナリストの見解として伝えるところでも、今回の売却の理由について詳細はよくわからないという。とはいえ今回の売却後も、株式保有率で見るとPIFは依然として任天堂の主要株主のひとつ。また、サウジアラビアがエンターテインメント業界を育成していく方針自体はおそらく変わっていないとみられている。いずれにせよ、今後のPIFの動きは引き続き注目されるところだろう。