『ニーア オートマタ』の2B、“英語版と日本語版でちょっとキャラが違う”との意見が議論呼ぶ。若干ツンツン英語版2B
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の2Bの、日本語版と英語版のセリフの違いが今になってファンコミュニティで注目を浴びている。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の2Bの、日本語版と英語版のセリフの違いが今になってファンコミュニティで注目を浴びている。言語間でセリフの違いによってキャラクター像に若干の違いが生じているとの意見も見られる一方、複雑なセリフ回しのローカライズへの称賛も寄せられている。
『NieR:Automata』は2017年に発売されたアクションRPGだ。ヨコオタロウ氏がディレクターを務め、プラチナゲームズが開発を手がけた。舞台となるのは、機械生命体と呼ばれる兵器をもって異星人が突如侵略してきた、遠い未来の世界。人類は月へと敗走する一方、地球奪還のため新型アンドロイド兵士のYoRHa(ヨルハ)部隊を投入する。プレイヤーはYoRHa所属の戦闘モデルの機体2Bとして、探索・調査に特化した機体9Sと共に地球に降り立ち、シームレスに広がる荒廃世界にて戦う。

今回英語圏のユーザー間で話題となっているのは、日本語版と英語版の2Bのセリフの比較だ。例に挙げられたのはサブクエスト「迷子の妹」における会話であり、機械生命体から「こどもはどうやってつくルノ?」と素朴な疑問をぶつけられた9Sがうろたえて2Bに助けを求めるシーンとなっている。日本語版では弱々しく2Bの名を呼ぶ9Sに対して、2Bが「そ、そんな声で言われても、私は助けられない」とほんのり狼狽しながら返答。対して英語版では「Uh, 2B? Little help here?(えっと、2B?ちょっと助けてもらえない?)」と呼びかける9Sに対し、2Bが「Huh? You’re the chatty one. Work it out(え?おしゃべり好きはあなたの方でしょ。なんとかして)」と突き放すようにも思える返答をおこなう。
そして一部ユーザーは、こうしたセリフのニュアンスの違いが日本語版と英語版の2Bの印象に微妙な違いをもたらしていると考えているようだ。上述のXポストでは、2Bに「横柄」あるいは「意地悪」といった印象を抱く声が聞かれるのは欧米圏のユーザーのみであると言及。「深みを感じられない」「好きになれない」といった意見まであると主張している。
このほか本作のファンアートをさまざま手がけている台湾のアーティストmitsuki氏は、あくまで個人的な解釈であるとしつつ、英語圏の多くのアーティストが2Bを力強く外向的に描く傾向がある一方で、日本語に見識のあるアーティストは2Bをずっと柔らかい人物として描く傾向があるとの考えを説明。そして同氏としては2Bに対して、優しく内向的なキャラクターとの印象を抱いているという。同氏によれば中国語版でも音声は日本語、かつ翻訳は日本語版にかなり忠実な内容とのことで、日本語版と同様の印象をもたらすセリフ回しになっているとしている。ようするに、英語版の2Bはセリフの違いなどによって日本語版と少し異なるキャラクター像で定着しているという見方があるようだ。
日本語版と英語版における2Bの一部のセリフのニュアンスの違いはかねてより一定の注目を集めており、たとえば序盤の無線における9Sと2Bの会話もそのうちのひとつ。日本語版では、出会ったばかりの2Bに“さん”付けする9Sに、「『さん』は付けなくて、いい」「私の名前に敬称は必要ない」と伝える内容だ。対して英語版では「さん」の代わりに「ma’am」が使われており、「Stop calling me “ma’am”(ma’amと呼ぶのはやめてくれ)」「It’s unnecessary(不必要だ)」というセリフになっている。いずれも当該セリフにおける2Bは比較的冷たい口調ながら、英語版の方がより厳しさを感じる言い回しかもしれない。
なお本作の英語版ローカライズを担当したのは、有限会社ハチノヨン(8-4)。本作以外にも『NieR』シリーズの英語版ローカライズをすべて担当しているほか、日本語から英語、英語から日本語の双方で多岐にわたる作品のローカライズをおこなっている国内企業だ。直近ではToby Fox氏の新作『DELTARUNE』の日本語ローカライズおよび国内コンソール向けの販売も担当している。
ローカライズ品質にも定評があり、『NieR:Automata』においてはハチノヨンのJohn Ricciardi氏とAlan Averill氏が海外メディアPC Gamerのインタビューにてそのこだわりを明かしていた。本作のローカライズでは、アンドロイドたちが人工的な知能をもつ存在であることを示しつつも個性を出すことが重要となり、なかでも2Bのローカライズはことさら困難であったという。
Averill氏は、2Bは冷静沈着な性格でありつつも、まったく感情のないロボットにしてしまえばプレイヤーは感情移入できなくなると説明。特に重要なのは2Bが感情を欠いているわけではなく、抱いている感情を厳重に管理しているというキャラクター像だったそうだ。そうしたキャラクター像をローカライズに反映する際には、無感情に見える状態から「droll(ドライでありつつユーモアのある)」側へ、ほんの少しだけ寄せるような方針があったとのこと。ユーモアや愛といった概念を理解しつつも、それを頻繁に表に出すことはしないキャラクター性を目指したという。

さらに2Bに限らない方針として、声色について日本語と英語で違いをもたせることもあるそうだ。というのもAverill氏は、たとえば日本では高い声でささやくような話し方の女性キャラからは、若さや優しさ・無垢さといった内面的な性質を即座に認識できると説明。一方で英語圏ではそうした声はたいてい、甲高いあるいは弱々しいといった印象を与えてしまうと述べている。同様のケースでは日本語版とまったく同じ声を英語版で再現することはなく、文化にあわせてキャラクターの本質により忠実になるような声にしているとのこと。つまり、2Bのローカライズでも、日本語版のセリフや話し方をそのまま忠実に再現しようとしたわけではなく、英語圏のプレイヤーがキャラクター像を本質どおりに思い描きやすいような作り込みがあるわけだろう。
そんな英語版の2Bには、必要に応じて日本語版からセリフ回しを少し変える柔軟なローカライズもおこなわれたわけだろう。言語間でのセリフの違いを批判視する今回の指摘に対しては、反論するユーザーも散見される。たとえば9Sへの冷たさも、意図的に距離をとろうとする葛藤を描く意図を読み取る見方もあるようだ。また先述した「そ、そんな声で言われても、私は助けられない」といったやり取りはそもそも英語では奇妙であり、自然な会話に変えてローカライズされた点を称賛する声もある。
単なる翻訳ではなく、各言語の文化にも踏み込んでおこなわれるローカライズ。独特な世界観設定やセリフ回しも特徴となる『NieR:Automata』においては特に、言語間で差がまったくないような忠実性よりも、英語圏で最適かつ自然な表現となるように注力されたわけだろう。ローカライズ時の“苦戦”も語られていた2Bについては、セリフの違いにより、日本語版とわずかに印象の異なるキャラとして受け止めているユーザーもいるのかもしれない。いずれにせよまもなく発売から9年を迎えるタイトルながら、2Bの日英でのセリフの違いにまでコミュニティが着目しているのは興味深い。2Bの内面がさまざまな側面から読み解かれていることもうかがえる。
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