Naughty Dog共同創設者いわく、ソニーに身売りしたのは「ゲームの開発コスト増大がきつすぎたから」。『クラッシュ・バンディクー』ですでに2億円

Naughty Dogの共同創設者であるAndrew Gavin氏は12月24日、LinkedInにてスタジオのSCEへの売却を受け入れた理由や、当時のスタジオの背景を明かした。主にゲーム制作費の高騰が理由となっていたようだ。

Naughty Dogは2001年、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE、現SIE)に買収された。Naughty Dogの共同創設者であるAndrew Gavin氏は12月24日、LinkedInにてスタジオ売却を受け入れた理由や当時のスタジオの背景を明かしている。

Naughty Dogはアメリカ・カリフォルニア州に拠点を置くゲーム開発会社だ。『クラッシュ・バンディクー』シリーズの一部作品をはじめ、『アンチャーテッド』シリーズ、『The Last of Us』シリーズなど、高評価作品を多数手がけたことで知られている。同スタジオはAndrew Gavin氏とJason Rubin 氏によって1984年に設立され、2001年には、SIEの前身であるSCEに非公開の条件にて買収された。その後Andrew氏とJason氏はEvan Wells氏らに社長の任を譲り、Naughty Dogを去っている。

『アンチャーテッド トレジャーハンターコレクション』

今回LinkedInにて、Naughty Dog共同創設者のAndrew Gavin氏より、Naughty Dogが当時のSCEに買収された理由を語った。Andrew氏によればゲーム開発にかける予算が高騰していたからだという。同氏いわく、設立当初の1980年代では、開発費は管理可能なレベルにあったとのこと。Andrew氏は具体的に、当時はゲーム1作あたり5万ドル(約790万円・現在のレート)以下で制作できていたと述べている。ゲームをリリースし、そこから得た利益を次の作品の開発費として投じることができていたようだ。

1990年代に入ると開発費用は上昇傾向になり、1991年にメガドライブ向けへリリースされた『Rings of Power』では10万ドル(約1600万円)程度。その後も開発費用の上昇は止まらず、1996年に発売された『クラッシュ・バンディクー』第1作では160万ドル(約2億5000万円)まで跳ね上がり、2001年リリースの『ジャック×ダクスター』は開発費用1000万ドルの大台を超え、1500万ドル(約24億円)にまで膨れ上がってしまったそうだ。

Andrew氏は、膨れ上がる予算を独自に調達するストレスは非常に大きかったといい、将来を見据え、Naughty Dogの財政的な安定性を確保するために、ソニー(SCE)へのスタジオ売却に踏み切ったのだという。しかし理由はそれだけでなく、ゲーム制作にあたって「予算を確保せねばならない」というプレッシャーや、非常に高い開発費用がかかっているという恐怖に苛まれず、スタジオが最高のゲームを作り続けられるような環境を用意する意味合いもあったそうだ。そしてこのスタジオ売却は結果として正しい判断であったと、Andrew氏は当時を振り返った。

『The Last of Us Part II』

特に近年ではゲーム開発にかかる費用の肥大化が指摘されている。AAA級タイトルであれば多いもので約500億円まで上るとされており、それにあわせてマーケティングにかかる費用もかさみがちである、との調査結果が報告されていた(関連記事)。またインディーゲームなどの小規模なゲームでさえも、多くの競合についていくためには、ゲーム規模の拡大やスタッフへの福利厚生も含め、コストが肥大しがちであるという見解も伝えられている(関連記事)。

今回のAndrew氏の発言を見るに、ゲームの開発費肥大にまつわる問題は、20年以上前よりすでに存在していた模様だ。当時高評価および人気タイトルをいくつもリリースしていたNaughty Dogでも、経営者が開発予算の確保にプレッシャーを感じていたという報告は興味深い。スタジオ存続や、開発するゲームのクオリティを落とさないためにも、Andrew氏たちはスタジオの売却を決断したとみられる。なおAndrew氏は、SCEへの“身売り”がなくとも、もしかしたら存続できていたかもしれないとしつつも、スタジオ売却により何よりも安定を手に入れ、ゲーム制作に専念できたと語った。Naughty Dogが今なお新作を作り続けられるのは、そうした決断によるものといえるかもしれない。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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