大作ゲームの開発費、近年肥大化により“最大480億円”に迫るとの調査結果。マイクロソフトのActivision Blizzard買収に関連して明らかに

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イギリスのCompetition and Markets Authority(競争・市場庁、以下CMA)は4月26日、マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収方針に関する審査結果を公表。同買収を承認しないと結論付けた。この審査結果において、近年の業界における大作(AAA)ゲームの開発費に関する興味深い調査結果が報告されている。

マイクロソフトは昨年1月、Activision Blizzardを総額687億ドル(約9兆4554億円・現在のレート)で買収する方針を発表。その後、反トラスト法(独占禁止法)違反の恐れがないかなどについて各国・地域の規制当局による審査がおこなわれ、日本を含むいくつかの当局はすでに承認済み。一方で、欧米の主要市場においては審査が続いており、先日にはそのひとつであるイギリスでの審査結果が報告され、同国CMAは同買収を承認しないと結論付けた(関連記事)。

約400ページにもおよぶ今回の報告書では、第三者機関の見解およびIT市場調査会社などを傘下に置くInternational Data Group(IDG)による業界の調査報告も伝えられている。そのなかには昨今のゲームの予算について、興味深い調査結果が綴られている。

2021年8月のIDGの調査結果によると、昨今ではゲームの開発予算は前例のない規模に達しているという。調査から5年前には、PC/コンソール向けに発売されるほとんどの大作ゲームの開発予算が5000万~1億5000万ドル(約68億円~200億円・現在のレート)の範囲にあったそうだ。一方で現在開発が進められている2024年~2025年リリース予定のゲームは、2億ドル(約275億円)以上の予算が組まれているという。

さらに、『Call of Duty(以下、CoD)』のような大作シリーズでは開発予算がすでに3億ドル(約410億円)を突破しているとのこと。『グランド・セフト・オート』などの将来の期待作も開発予算は2億5000万ドル(約340億円)以上になる見込みだという。またIDGの報告書では『CoD』を手がけるActivisionスタッフの発言も引用。同スタッフによると、毎年『CoD』に向けた非常に多くのコンテンツを開発する必要があるといい、ひとつのリードスタジオでは開発が間に合わないとのこと。こうした状況がすぐに変わるとは思えない、との見解が述べられている。近年ではAAA規模の作品が要する予算や開発体制が、さらに大規模化する傾向にあるのだろう。

開発期間についても言及されており、IDGの調べによると、大作ゲームでは3年~5年の開発期間が一般的とのこと。開発過程で大幅な変更がなされた場合には、さらに長い期間を要することがあるとのパブリッシャーの証言も伝えられている。


そのほかIDGのレポートでは、パブリッシャーの関係者の証言により、マーケティング費用についてもいくつか紹介されている。あるパブリッシャーは発売前までの開発費に1億5000万ユーロ(約227億円)がかかった一方で、マーケティングに5000万ユーロ(約76億円)を費やしたと証言。また別のパブリッシャーは、開発予算が8000万ドル(約110億円)から3億5000万ドル(約480億円)なのに対して、マーケティング費用は最大で3億1000万ドル(約426億円)にものぼると述べている。莫大な開発予算と長期にわたる開発期間を経たゲームをできるかぎり売るために、マーケティング費用もかさんでいる傾向にありそうだ。

なお報告書では、こうしたIDGの調査結果をもとにした、マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収方針に関する第三者機関の見解が綴られている。IDGの調べでは、『CoD』の各シリーズ作品は、シリーズの枠組みや開発ノウハウを活用して4年~5年の開発サイクルを3年に圧縮しているとのこと。そのため、開発費や開発人員などの要因も踏まえて、『CoD』に代わるようなゲームを他社がすぐに開発できるとは考えられないとの見解が説明されている。

ゲームの開発費が明かされることはほとんどないため、業界に明るい調査機関による今回の報告は興味深い。今回の調査結果によれば、ゲームの開発費は近年になって大きくかさんでいるようだ。そんな中で、『CoD』をはじめとしたシリーズ作品では、開発ノウハウやシリーズのネームバリューを次回作に利用できる。大手開発元がシリーズ作品メインの展開を見せることが多い背景には、そうした事情もあるのかもしれない。

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