ゲーム開発者が「良いゲームを作っているのにアルゴリズムに無視されている」とぼやく運動始まる。こっちは一転バイラル化

現在X(旧Twitter)では、一部のインディーゲーム開発者によって、「いいゲームを作っているのにアルゴリズムに無視されている」とぼやきつつ自作ゲームを紹介する流れが見られる。

現在X(旧Twitter)では、一部のインディーゲーム開発者が「いいゲームを作ったのにアルゴリズムに無視されている」という文面を添え、自作のゲームを紹介・宣伝するという運動が流行している。

Xでは、ゲーム開発者が自身の手がけたゲームを宣伝する流れが広まることがたびたびある。今回はCam氏が7月30日に投稿したポストが発端となっているようだ。同氏は個人でローグライトアクションRPG『HP: Zero』を開発中。7月中旬にゲーム開発の様子を投稿しつつ、同作の宣伝をおこなっていた。しかし個人規模での制作ということもあり、ストアページや公式ページなどが現時点で見られないことや、Xのフォロワー数が当時10人程度だったこともあり、大きなインプレッションは獲得できずにいたようだ。

ところが7月30日、Cam氏が『HP: Zero』の開発中映像とともに「My game is good, the algorithm just ignores me(自分のゲームはいいものなのに、アルゴリズムに無視されている)」と連発する文面を投稿。アルゴリズムが悪いのだと、ある種“責任転嫁”したこの投稿は、本稿執筆時点で219リポスト、2035いいねと広く話題になった。Cam氏のXアカウントのフォロワー数は瞬く間に増え現在では500人を突破。投稿前と比較して実に40倍以上となった。そして「My game is good, the algorithm just ignores me」はネットミーム化の様相を見せ、インディーゲーム開発者を中心として自作ゲームの宣伝に用いられるフレーズになった格好だ。

たとえばデスクトップ画面の下部で生き物を集めるゲーム『Whimside』の開発者、Toadzillart氏の投稿では85リポスト、872いいねを獲得。『Whimside』のその他の宣伝ポストでは、40前後のリポスト、200ほどのいいねとなっており、宣伝の効果が出ている様子がうかがえる。またこの流れに乗ったこともあってか、Toadzillart氏によれば8月7日のリリースまでに7000件のウィッシュリスト登録数を目指していたところ、なんと5万5000件もの登録件数を記録。今回の投稿だけではなく、継続した宣伝活動の賜物であることは言うまでもないが、「My game is good, the algorithm just ignores me」が大台達成にあたっての最後の一押しとなった可能性はありそうだ。

また盾を活用して攻撃から移動までさまざまなアクションをおこなうオープンワールドアクションアドベンチャー『The Knightling』の開発元もこの流れに便乗。213リポスト、1660いいねを集める盛況を見せている。同作の発売日が8月28日に決定したことを発表する投稿が66リポスト、327いいねとなっていることを鑑みると、やはり“便乗ポスト”の方がより大きな注目を浴びていることがうかがえる。

『Whimside』
『The Knightling』

なおゲームの宣伝については多くのゲーム開発者が苦心している様子もうかがえ、限られた宣伝予算では、ユーザーに周知されるかどうかがアルゴリズム次第となる状況もあるのだろう。なおX社はおすすめ表示に関するアルゴリズムを一部公表しており、機械学習モデルによりポストのランク付けなどがおこなわれているという。おすすめされて周知されるかどうかは結局のところアルゴリズム側の重みづけ次第とみられ、「My game is good, the algorithm just ignores me」が示すような自慢のゲームでも思うようにおすすめに載らないもどかしさは共感を呼んでいるのかもしれない。

またSteam上においても、一例では「おすすめ表示」について、アルゴリズムを用いて表示するゲームを選定していることが明かされている(関連記事)。Steamユーザーの興味関心や地域(リージョン)ごとで選定がされているとされる。この基準から惜しくも漏れてしまった、「アルゴリズムに無視されたタイトル」はSteamにも存在するだろう。

一方で、そんなSteamのおすすめシステムを上手く攻略したという報告も存在。ストラテジーゲーム『Demigoddess!』では、同ジャンルの作品との発売日被りを避け、好評レビューが寄せられたことで「話題の新作」への掲出を果たし「1年分の売上目標をたった6日で達成した」という(関連記事)。ほかにもターン制戦略ローグライクゲーム『Spellmasons』ではTikTok動画が話題を呼んだことからかSteamにおける日替わりセール「日替わりスペシャル」の対象に選ばれ、入念な準備をおこなったことで発売から2年半越しに大きくヒットし、1日で約570万円の収益を上げた(関連記事)。

そうした例も見るに、特に宣伝費用が限られている個人ゲーム開発者、インディーゲームデベロッパーにとっては、各プラットフォームでの「アルゴリズム対策」は克服すべき課題のひとつとなっているようだ。今回話題となった「いいゲームを作ったのに、アルゴリズムに無視されている」という投稿は、多くの開発者の実感を伴った文面とみられ、なかば共感されつつXの“アルゴリズム”も手伝ってかバイラル化しているかたちだ。

Kosuke Takenaka
Kosuke Takenaka

ジャンルを問わず遊びますが、ホラーは苦手で、毎度飛び上がっています。プレイだけでなく観戦も大好きで、モニターにかじりつく日々です。

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