高評価ゲーム『オリとくらやみの森』など手がけたMoon Studios、“完全独立”を報告。パブリッシャーのごたごたに「チャンス」を見出す

デベロッパーのMoon Studiosは3月12日、同スタジオが手がける最新作『No Rest for the Wicked(ノー レスト フォー ザ ウィケッド)』の権利を取得し、同スタジオが完全に独立したと報告した。Take-Two InteractiveによるレーベルPrivate Divisionの売却を巡り、先行きが見えなかった本作の行方に終止符がついた。
Moon Studiosは『オリとくらやみの森(Ori and the Blind Forest)』などのタイトルで知られるオーストリアのスタジオ。現在はソウルライクアクションRPG『No Rest for the Wicked』を早期アクセス配信中だ。絵画の中に入り込んだかのような世界を舞台に、激しい戦闘が繰り広げられる作品だ。オンラインマルチプレイに対応しており、最大3人のフレンドと一緒にキャンペーンを進められることも特徴。現在PC(Steam)向けに早期アクセスを実施しており、PS5/Xbox Series X|S向けにも後日配信予定である。本作はこれまで、大手ゲーム会社Take-Two Interactiveによってパブリッシングが進められてきた。

以前Take-Two Interactiveは2024年11月におこなわれた決算発表において、同社のレーベルPrivate Divisionが売却されたことを明らかにした(関連記事)。Private Divisionは主にインディースタジオ作品のパブリッシングを担当してきたレーベルで、過去にはObsidian Entertainmentが手がけた『The Outer Worlds』などを輩出していた。そんな、Take-Two Interactiveの一翼を担うPrivate Divisionの売却は業界に大きな衝撃を与えた。将来リリースされる作品も含め、同レーベルのすべてのタイトルが売却の対象となったが、唯一の例外は早期リリース開始を迎えたばかりの『No Rest for the Wicked』だ。本作については、Take-Two Interactiveが引き続きパブリッシングのサポートを継続することを宣言していた。
そのような状況を経て今後の動向に注目が集まる中、Moon Studiosは3月12日に本作の大型コンテンツアップデート「The Breach」についてのショーケース映像を放送。この映像の冒頭で、プロジェクトの完全独立が報告されたかたちだ。
本作のパブリッシング権を巡った交渉について、動画内では同スタジオのThomas Mahler氏とGennadiy Korol氏が説明している。同氏らによると、Take-Two InteractiveがPrivate Divisionを売却するという話には「予想外だった」としながらも、そこにチャンスを見出し数か月間に及ぶ交渉をおこなった末、本作のパブリッシング権を買い戻すことで合意したという。法的手続きに時間がかかり、その間手続きにかかわる内容も話せなかったという。そのため、独立に向けた動き自体はかなり前から水面下で進んでいたのだろうと予想される。同氏らは今回の発表により、Moon Studiosが描くビジョンにより自信が持てるようになり、二度と“沈黙”をする必要もないと語った。自由に本作の開発を進められることを喜ぶ様子がうかがえる。

しかし、『No Rest for the Wicked』が乗り越えるべき障壁はまだ存在する。本作はゲームバランス面での課題が指摘され、早期アクセス配信ながらボリュームに難があるといった声もあり、Steamユーザーレビューで「賛否両論」スタートとなるなど、評価面ではリリース初期に苦戦を強いられた。プレイヤー数も、リリース時に獲得していた3万人以上のピークから、今や平均300人にまで減少していることが非公式データベースサイトSteamDBによって確認できる。現在はアップデートにより「やや好評」まで持ち直しているものの、Take-Two Interactiveの支援を受けることができなくなった今、プロジェクトの迅速な立て直しを迫られている状況だ。4月30日に配信が予定されている大型アップデート「The Breach」で人気を取り戻せるかにも注目したい。
Moon Studiosが手がける『No Rest for the Wicked(ノー レスト フォー ザ ウィケッド)』は、PC(Steam)向けに早期アクセス配信中。リリース日は未定だが、PS5/Xbox Series X|S向けにも後日配信予定だ。