『モンスターハンター』シリーズの直近の作品におけるモンスターの弱点属性や生態系を、学術的な手法で分析するユーザーが現れた。「ネットワーク科学」を用いた分析で、弱点属性や縄張り争いといった観点でモンスターの関係性が示されている。
『モンスターハンター』シリーズは、カプコンが手がけるハンティングアクションゲームだ。さまざまなモンスターが息づく世界にて、プレイヤーはハンターとして狩猟生活を送っていく。シリーズ最新作となる『モンスターハンターワイルズ』が、来年2月28日に発売予定。またモバイル向けの基本プレイ無料作品『モンスターハンターアウトランダーズ』が先日11月13日に発表された(関連記事)。
そんな『モンスターハンター』シリーズの直近の作品における、属性値やモンスター間の関係性について「ネットワーク科学(network science)」を用いて強さを分析したというユーザーが、海外掲示板Redditに現れた。分析を投稿したのは、Complete_Necessary48氏だ。同氏は物理学を専攻しており、複雑系に関心を寄せる学生だという。
複雑系とは、多数の構成要素でなりたち、それぞれの要素が相互かつ複雑に絡み合うシステムのこと。生物の生態系や、人間社会なども複雑系の一例だ。そしてネットワーク科学では、そうした相互関係をデータとして集積・蓄積してネットワークとしてモデル化。個々の要素の特性ではなくネットワーク上のつながりから、個々の要素の特性を理解することを目指す学問分野だ。
Complete_Necessary48氏の教授は温和な人だそうで、『モンスターハンター』のデータを使ってネットワーク科学として(大学の環境で)分析することを許可してくれたという。分析にはPythonのライブラリであるNetworkXのほか、NumPy、Matplotlib、SciPyといったライブラリも併用されたそうだ。同氏はそうして得られた分析結果を示す画像を紹介している。
まず1枚目の画像では、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』および『モンスターハンターライズ:サンブレイク』のモンスター間の関係を、弱点属性に着目して表しているという。「Ragiang(ラージャン)」や「Nergigante(ネルギガンテ)」「Bazelgeuse(バゼルギウス)」といったモンスター名が確認でき、弱点属性という共通点で関係性がモデル化され複雑なネットワークを描いているようだ。
Complete_Necessary48氏によればこのネットワークモデルからは、プレイヤーがモンスターの弱点を突きたい場合、龍属性がもっとも汎用性が高いことを確認できるという。画像には同氏が、ネットワークモデルから読み取れる傾向が分かりやすいように属性ごとの色付けもなされており、龍属性を弱点とするモンスターが多い傾向がうかがえる。とはいえ同氏によれば色付けはあくまで目安とのことで、ネットワークモデルから読み取れる正確な情報を表しているわけではないそうだ。
また2枚目の画像はモンスター間の相関性の強さをあらわすグラフとのこと。そして3枚目から6枚目の画像ではゲーム中での縄張り争いに基づくネットワークが示されているそうだ。縄張り争いとは、『モンスターハンター:ワールド』にて実装されたシステム。フィールド上で2種類のモンスターが同じエリアに鉢合わせると専用のアニメーションで争い合い、互いに大ダメージも受けながら戦うシステムだ。そうして縄張り争いに勝ったモンスターは、そのエリアに居座ることとなる。
Complete_Necessary48氏が示した縄張り争いのネットワークモデルにおいて、3枚目と4枚目の画像における赤い矢印は勝敗関係を示しているそうだ。ラージャンが多岐にわたるモンスターに縄張り争いで打ち勝つことが確認可能なほか、リオレウス(Rathalos)が縄張り争いに負けがちといった関係性も確認できる。一方5枚目と6枚目の灰色の両矢印は引き分けを示しているという。
そして7枚目の画像は、『モンスターハンターワールド:アイスボーン』の縄張り争いにおける、次数中心性を示すグラフとのこと。次数中心性とはネットワークモデルにおいて、ある存在(ノード)がもつリンクの数(次数)から、それがどれくらい中心的な存在かを示す指標だ。Complete_Necessary48氏のグラフでは、あるモンスターが、どれくらいほかのモンスターとリンクしているかの割合が示されている。
画像においては、赤の表示は縄張り争いで勝てるモンスターの割合、緑の表示は縄張り争いで負けるモンスターの割合とのこと。また勝つにせよ負けるにせよ次数中心性が高いモンスターは、それだけ多彩なモンスターとの縄張り争いが発生する点も特徴といえるだろう。このうちラージャンのグラフでは圧倒的に勝てるモンスターが多いことが改めてわかり、逆にパオウルムーは通常種・亜種ともに縄張り争いに負けがちなようだ。
ネットワーク科学を用いて、『モンスターハンター』シリーズ作品の属性や縄張り争いについて本格的に分析しているComplete_Necessary48氏の報告。大きな反響が寄せられており、突然の本格研究報告にやや困惑する声もありつつ、興味深い研究として称賛も集まっている。
なおユーザー反応の中にはリオレウス・リオレイアは亜種や希少種を含めると6種類を占め、それぞれ弱点属性がある程度共通するためネットワークモデルを歪めているのではないかとの指摘も存在。この点についてComplete_Necessary48氏は良い意見だとして認めており、将来同様の手法でモンスターの種別の分析もしてみたいとコメントしている。
『モンスターハンター:ワールド』以降のシリーズ作品では、オープンなフィールドにてモンスター同士が織りなす生態系の描写もゲームプレイにて本格的に描かれてきた。そんな最近のシリーズ作品の縄張り争いなどが、現実の生態系の研究にも用いられるネットワーク科学を利用し分析されているのは興味深い。ちなみに新作『モンスターハンターワイルズ』においてはさらに活き活きとした生態系が描かれるそうで、ふたたびComplete_Necessary48氏のように学術的な手法で分析するユーザーが現れるかどうかも注目されるところかもしれない。