大手ゲームレビューサイト「Metacritic」の生みの親いわく、メタスコアには「一発勝負ルール」あり。後から評価変わっても反映しない

レビュー集積サイトMetacriticの共同設立者が海外メディアのインタビューにて、同サイトの運営方針などを明かしている。

レビュー集積サイトMetacriticの共同設立者の一人であるMarc Doyle氏は、Metascoreの点数に最初のレビューのみを反映するというポリシーを保持する考えを表明した。海外メディアGamesIndustry.bizのインタビューで発言している。

Metacriticにおいては、Metascore(以下、メタスコア)と呼ばれる指標がある。これは世界中のメディアがゲーム作品に対して100点満点で下した点数を集計し、各メディアに対するサイト独自の基準で重みづけをおこなって算出する値だ。なお、同サイトではUser Scoreという値もあり、こちらはユーザーが投稿するレビューによって10点満点の点数として算出される。メタスコアが“ゲームの出来栄え”を示す値となりうるかは疑問視もされるものの、ゲーム業界では一定の権威を持つ指標となっている。

今回Metacriticの共同創業者の一人であるMarc Doyle氏に対し、海外メディアGamesIndustry.bizがインタビューを実施。Doyle氏は弁護士として働いていた経歴があるといい、同氏の妹とロースクール時代の友人の3人で設立されたという興味深い歴史も話された。Fandomに買収された現在でも運営の規模は依然として比較的小規模で、編集部門に所属しているのはわずか5人だという。

そんなインタビューの中では同サイトの運営方針などが語られており、なかでも同氏によればゲームのメタスコアを算出する際には「各メディアが最初に公開したレビューだけ」を採用するという厳格なルールがあるという。つまり、すでに集計されたメディアレビューの内容が後で変化しても、メタスコアには反映されないということだろう。

Doyle氏によると、これは得点操作がおこなわれるのを避けるという目的があるようだ。というのも、2010年代初頭にはとある広報スタッフからレビューを削除するようにと十数件ものメールでしつこく要求され、しまいにはスコアを変えることまで求められたという。また2005年から2007年にかけての時期は特に、レビューのスコアを上げるように“外部勢力”から圧力をかけられることが多かったとのこと。

こうした圧力はMetacritic側だけではなく、レビューをおこなう批評家らにも及んでいた模様。Doyle氏に対して批評家が実は圧力をかけられていたと密かに明かすような状況も多々あったという。そうしたことから、Doyle氏は批評家たちを守るべく、最初に公開された点数をメタスコアに集計し、それ以降変更しないという立場を貫くことにしたそうだ。

『No Man’s Sky』


ところで、時代とともに世間からの評価を大きく変えたゲーム作品も存在する。たとえば宇宙サバイバルゲーム『No Man’s Sky』は2016年の発売当初、Steamにて不評のレビューが相次いでいたが、地道にアップデートを重ね、2024年11月にはついに「非常に好評」ステータスにまで持ち直した(関連記事)。大型アップデートの節目には、新たなレビュー記事を掲載し本作を称賛するメディアもみられた。一方で、Metacriticでは先述した方針によりメタスコアが変わることはなく、PC版では61点という点数を維持している。

またIGNなど、リリース後の大きな進化を受けて再レビューをおこなう方針を掲げるメディアもある。こうした作品に対する再レビューを点数に含めるかどうかについて、Doyle氏は長年じっくり考え続けてきたとしつつ、当初の評判について記録しておくことが重要だと語る。同氏は6月に刷新されリリースされた『レインボーシックス シージ エックス』の例を挙げ、こうした作品については専用のページを新たに作り、元のページはそのまま残すのだという。たしかにMetacriticでは『レインボーシックス シージ』と『レインボーシックス シージ エックス』はそれぞれ別々の作品として掲載されている。また、あくまでもメタスコアは変更するつもりはないが、メディアがおこなった再レビューのリンクを掲載するようなパターンについては進んで取り入れたいとの考えを持っているそうだ。

『レインボーシックス シージ エックス』


なお一部業界人からは、メタスコアを恐れて野心作が作りにくい状況になっているという意見も出ている。というのも、メディアレビューをもとにしている以上、作品にバグや最適化不足といった目立った課題点があるかどうかもメタスコアに影響しうる。そのため業界では、開発元がメタスコアを重視する場合、「綺麗だけどつまらない」作品が生まれやすくなっているのではないかといった指摘もみられる(関連記事)。アップデート後の評価が反映されないメタスコアの仕組みによって、挑戦的な要素を諦めて発売時点での安定性にリソースが割かれる可能性もあるだろう。賛否はありつつもアップデートによる発売後のブラッシュアップも一般的になった業界で、メタスコアがそうした作品の評価の推移をカバーしきれない状況はあるわけだ。

とはいえ「各メディアが最初に公開したレビューだけ」を対象とするメタスコアの集計方法はMetacriticのポリシーとしてある様子。Doyle氏によればこの方針は今後も変わることはないようで、メタスコアはあくまで作品当初の評価スコアとして参照するのがよさそうだ。そもそも、『No Man’s Sky』のようにアップデートで評価を上げた作品のほか、尖った作風のゲームなど、メタスコアが伸び悩む一方で一部から熱烈な支持を受けるゲームもある(関連記事)。レビューを参考にする際には、Steamユーザーレビューなど複数の媒体から判断してみるのもいいかもしれない。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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